
こうした疑問にお答えします。
実用新案は、特許に比べて「安く・早く」権利が取れる制度として知られています。とはいえ、実際にいくら必要なのか、出願後に何をすればよいのかは、なかなかイメージしにくいものです。
特に実用新案は、特許と違って出願と同時に3年分の登録料を納めるという独特の仕組みがあります。ここを知らずに準備を進めると、「思っていたより出願時の支払いが多い」と感じることもあります。
この記事では、特許事務所BrandAgentの弁理士が、実用新案の特許庁費用を請求項数別の表で整理し、出願から登録、その後の維持までの流れをわかりやすく解説します。
※特許庁費用は記事作成時点(2026年11月)の特許庁の料金に基づいています。最新の料金は特許庁の料金一覧でご確認ください。
この記事でわかること
- 実用新案の特許庁費用の内訳と計算方法
- 請求項数別の出願時費用と10年間の総額
- 出願から登録までの手続の流れと期間の目安
- 登録後の維持費と技術評価書の費用
- 費用を抑えるためのポイント
実用新案にかかる費用の全体像
実用新案の取得・維持にかかる費用は、大きく次の2つに分かれます。
- 特許庁に支払う費用:出願料、登録料(年金)、必要に応じて技術評価請求料など。全国一律の金額です。
- 弁理士に支払う手数料:明細書・図面の作成、出願手続、期限管理などの費用。明細書の分量や技術内容によって案件ごとに異なります。
この記事では、誰が出願しても同じ金額になる特許庁費用を中心に解説します。弁理士の手数料については、内容をうかがったうえで無料でお見積りしています。
実用新案の特許庁費用の内訳
特許庁費用の計算方法
- 出願料:14,000円
- 登録料 第1~3年:毎年 2,100円+請求項数×100円(出願時に3年分をまとめて納付)
- 登録料 第4~6年:毎年 6,100円+請求項数×300円
- 登録料 第7~10年:毎年 18,100円+請求項数×900円
- 技術評価請求料(必要な場合):42,000円+請求項数×1,000円
特許の場合、登録料(特許料)は審査を経て特許査定が出た後に納めますが、実用新案は審査がないため、出願と同時に第1~3年分の登録料を納付します。出願時の支払いは「出願料+3年分の登録料」になると覚えておいてください。
請求項数別:出願時に必要な特許庁費用
請求項の数ごとに、出願時に必要な特許庁費用を計算すると次のとおりです。
| 請求項数 | 出願料 | 第1~3年分登録料 | 出願時合計(円) |
|---|---|---|---|
| 1 | 14,000 | 6,600 | 20,600 |
| 2 | 14,000 | 6,900 | 20,900 |
| 3 | 14,000 | 7,200 | 21,200 |
| 5 | 14,000 | 7,800 | 21,800 |
| 10 | 14,000 | 9,300 | 23,300 |
※第1~3年分登録料は3年分の合計。弁理士の手数料は含みません。
請求項が1つ増えても、第1~3年分の登録料は3年で300円しか増えません。出願時の特許庁費用だけを見れば、請求項数による差は小さいといえます。
10年間の特許庁費用の総額
実用新案権の存続期間は出願日から10年です。第4年以降は毎年登録料を納めることで権利を維持します。10年間すべて維持した場合の特許庁費用は次のとおりです。
| 請求項数 | 出願時 | 第4~6年(毎年) | 第7~10年(毎年) | 10年間合計(円) |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 20,600 | 6,400 | 19,000 | 115,800 |
| 3 | 21,200 | 7,000 | 20,800 | 125,400 |
| 5 | 21,800 | 7,600 | 22,600 | 135,000 |
| 10 | 23,300 | 9,100 | 27,100 | 159,000 |
※10年間合計=出願時+第4~6年分(3年)+第7~10年分(4年)。技術評価書の費用・弁理士の手数料は含みません。
第7年以降は登録料が大きく上がります。製品の販売状況を見ながら、維持を続けるかどうかを判断するのが現実的です。登録料を納めなければ権利は消滅しますので、不要になった権利は無理に維持する必要はありません。
出願から登録までの手続の流れ
実用新案の手続は、特許に比べてシンプルです。一般的な流れは次のとおりです。
1. ご相談・内容の確認
製品の図面や試作品の写真、従来品との違いなどをうかがい、そもそも実用新案の対象(物品の形状・構造・組合せ)に当たるか、特許のほうが適していないかを確認します。方法や材料の配合に工夫がある場合は、実用新案では保護できません。
2. 先行技術の確認(任意)
実用新案は審査なしで登録されますが、同じようなものが既に存在すれば、後で無効になったり、技術評価書で否定的な評価を受けたりします。出願前に簡単な先行技術調査をしておくと、権利の価値を見極めやすくなります。
3. 明細書・図面・請求の範囲の作成
実用新案の出願には、願書、明細書、実用新案登録請求の範囲、図面、要約書が必要です。特許と違い、実用新案では図面の提出が必須です。権利範囲を決める「請求の範囲」は、広すぎても狭すぎてもいけないため、弁理士が最も時間をかける部分です。
4. 出願(出願料+3年分の登録料を納付)
書類が整ったら特許庁に出願し、同時に出願料と第1~3年分の登録料を納めます。
5. 方式審査・基礎的要件の審査
特許庁は、書類の形式や、保護対象に当たるかなどの基礎的な要件をチェックします。不備があると補正指令が出されるので、指定期間内に手続補正書で対応します。新規性や進歩性の審査はありません。
6. 設定登録・登録証の発行
問題がなければ設定登録され、実用新案登録証が発行されて、実用新案公報に掲載されます。出願から登録までは、通常数か月程度です。
登録後の期限管理を忘れずに
第4年分以降の登録料は、毎年期限までに納付する必要があります。また、実用新案登録に基づく特許出願ができるのは出願日から3年以内です。登録して終わりではなく、その後の期限も意識しておきましょう。
技術評価書の費用も念頭に
実用新案権を使って模倣品を止めたい場合(警告や訴訟)、まず特許庁に実用新案技術評価書を請求し、その評価書を相手に提示して警告する必要があります。技術評価請求料は42,000円+請求項数×1,000円です。
| 請求項数 | 技術評価請求料(円) |
|---|---|
| 1 | 43,000 |
| 3 | 45,000 |
| 5 | 47,000 |
| 10 | 52,000 |
技術評価書は、権利を行使する予定がなければ取得する必要はありません。ただし、権利者自身が請求すると、その後は実用新案登録に基づく特許出願ができなくなる点に注意が必要です。
特許と比べた費用感
参考までに、特許の場合は出願料14,000円、出願審査請求料138,000円+請求項数×4,000円、第1~3年分の特許料(毎年4,300円+請求項数×300円)が必要で、請求項1つでも登録までの特許庁費用は169,800円になります。
実用新案の出願時費用は請求項1つで20,600円ですから、特許庁費用だけで見ると大きな差があります。さらに、特許では拒絶理由通知への対応費用がかかることが多いのに対し、実用新案ではこうした中間対応が基本的に発生しません。
ただし、実用新案は保護対象が限られ、権利行使にも制約があります。費用だけで判断せず、製品の重要度や将来の使い方を考えて選ぶことが大切です。
出願前の公開には注意(新規性喪失の例外)
費用とは直接関係しませんが、手続の流れの中で特に注意していただきたいのが、出願前に製品を公開してしまうケースです。展示会への出展、クラウドファンディングのページ、ネットショップでの販売開始、SNSへの写真投稿などで内容が公開されると、実用新案登録を受けられなくなるのが原則です。
ただし、公開から1年以内に出願し、出願時に例外の適用を主張して、出願から30日以内に公開の事実を証明する書面を提出すれば、自らの公開によって新規性を失わなかったものとして扱われる制度があります(新規性喪失の例外)。
とはいえ、例外が認められても、その間に他人が同じようなものを先に出願したり公開したりするリスクは残ります。また、海外で権利を取る場合には、国によって同じような例外がないこともあります。できる限り、公開する前に出願を済ませておくのが安全です。発売日や展示会の日程が決まっている場合は、余裕をもってご相談ください。
実用新案の費用を抑えるポイント
費用を抑えるためのポイント
- 図面や資料をそろえておく:製品の図面、写真、従来品との違いのメモがあると、明細書作成がスムーズになります。
- 請求項は必要十分に:特許庁費用への影響は小さいものの、整理された請求項は権利の使いやすさにもつながります。
- 補正指令を避ける:書類の不備をなくせば、余計な手続と時間がかかりません。
- 維持の要否を定期的に見直す:第7年以降は登録料が上がるため、販売状況に応じて判断しましょう。
- 技術評価書は必要なときだけ:権利行使の予定がなければ請求は不要です。
よくある質問
- Q. 実用新案の出願時に特許庁へ払う費用は最低いくらですか?
A. 請求項1つの場合、出願料14,000円と第1~3年分の登録料6,600円の合計20,600円です(弁理士の手数料は別途)。 - Q. 出願から登録まではどのくらいかかりますか?
A. 実体審査がないため、通常数か月程度です。補正指令が出た場合は、その対応の分だけ時間がかかります。 - Q. 登録後、毎年いくら必要ですか?
A. 第4~6年は毎年6,100円+請求項数×300円、第7~10年は毎年18,100円+請求項数×900円です。 - Q. 技術評価書は必ず取らなければいけませんか?
A. いいえ。権利行使(警告や訴訟)をする場合に必要になるもので、登録や維持のためには不要です。
まとめ
- 実用新案は出願時に「出願料14,000円+第1~3年分の登録料」を納める
- 請求項1つなら出願時の特許庁費用は20,600円、10年間維持しても115,800円
- 実体審査がなく、通常数か月程度で登録される
- 図面は必須。請求の範囲の作り込みが権利の価値を左右する
- 権利行使には技術評価書(42,000円+請求項数×1,000円)が必要
実用新案の出願や費用についてご不明な点があれば、累計4,000件超の出願実績を持ち、すべての案件を弁理士本人が担当する特許事務所BrandAgentまでお気軽にご相談ください。
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