
こうした疑問にお答えします。
意匠登録は、商品のデザインを模倣から守るための制度です。ただ、特許や商標に比べると手続のイメージがつきにくく、「図面はどう用意するのか」「写真でもいいのか」「どのくらいで登録されるのか」といったご質問をよくいただきます。
この記事では、特許事務所BrandAgentの弁理士・叶野徹が、意匠登録出願の準備から登録までの流れと、特に重要な図面のポイント、拒絶理由通知への対応方法を解説します。
この記事でわかること
- 意匠登録出願の準備から登録までの流れ
- 図面の作り方(六面図・写真・3D CAD)と一致性の注意点
- 意匠に係る物品・意匠の説明の書き方
- 審査の流れと拒絶理由通知への対応
- 登録までにかかる期間の目安
意匠登録出願の流れ
まず全体の流れを確認しておきましょう。
| ステップ | 内容 | 時期の目安 |
|---|---|---|
| 1. 準備 | 新規性の確認、先行意匠の調査、守る範囲の検討、画像・CADデータの用意 | 商品の公開前 |
| 2. 図面・願書の作成 | 図面、意匠に係る物品、意匠の説明などを作成 | 素材の状況による |
| 3. 出願 | 特許庁へ提出(出願料1意匠16,000円) | 出願日が確定 |
| 4. 審査 | 方式審査の後、自動的に実体審査(審査請求は不要) | 最初の結果まで6〜12か月程度が多い |
| 5. 拒絶理由への対応(ある場合) | 意見書・手続補正書の提出 | 通知から40日以内 |
| 6. 登録 | 第1年分の登録料(8,500円)を納付して設定登録 | 登録査定から30日以内 |
以下、各ステップのポイントを順番に見ていきます。
ステップ1:出願前の準備(新規性と守る範囲)
意匠登録を受けるには、デザインが新しいこと(新規性)と、既存のデザインから簡単に思いつけるものではないこと(創作非容易性)が必要です。
実務で一番多いトラブルは、出願前に自分で商品を公開してしまうケースです。自社サイトやSNS、ネットショップ、展示会、クラウドファンディングのページなどで公開すると、そのデザインは原則として新規性を失います。
すでに公開してしまった場合でも、公開から1年以内に出願し、出願時に新規性喪失の例外の適用を主張し、出願から30日以内に公開の事実を証明する書面を提出すれば、救済を受けられる可能性があります。ただし、その間に他人が似たデザインを出願・公開するリスクは残りますので、基本は「公開前に出願」です。
また、この段階で何を守るかを決めておくことも大切です。商品全体を守るのか、特徴的な一部分だけを守るのか(部分意匠)、バリエーションも押さえるのか(関連意匠)によって、図面の作り方が変わります。特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)で似たデザインがないか事前に調べておくと、方針を立てやすくなります。
ステップ2:図面の作成(意匠登録で最も重要なポイント)
意匠権の範囲は、願書の記載と図面によって決まります。拒絶理由や権利範囲のトラブルの多くは図面に原因があるため、ここが意匠登録出願で最も手間をかけるべきところです。
必要な図(六面図が基本)
従来から基本とされているのは、正面図・背面図・左側面図・右側面図・平面図・底面図の六面図で、これに斜視図を加えることが一般的です。
2019年5月の施行規則の改正により、図の数にかかわらず、意匠の内容を特定できれば足りるという扱いになりました。とはいえ、実務上は多くの商品で六面図をそろえるのが最も安全です。左右対称で側面図が同じになる場合など、省略しても内容が明らかなときに限って図を省くのがよいでしょう。
写真や3D CADの図面も使える
図面の代わりに写真で出願することもできます。また、3D CADソフトで作成した図(線画や陰影付きのCG図)もよく使われています。それぞれの特徴は次のとおりです。
- 線図:形状がはっきり表せ、部分意匠で「守る部分」と「その他の部分」を描き分けやすい。
- 陰影付きのCG図:曲面や立体感が伝わりやすく、CADデータがあれば作成も早い。
- 写真:準備は簡単ですが、背景や映り込み、影、台座などがデザインの一部と見られるおそれがある。無地の背景で、すべての図を同じ照明・同じ縮尺で撮影する。
図面どうしの食い違いに注意
すべての図は同じ一つのデザインを表していなければなりません。正面図にあるボタンが斜視図にない、図によって縦横の比率が違う、といった食い違いがあると、意匠が特定できないとして拒絶されることがあります。カタログ用の画像を流用したり、別々のサンプルを撮った写真を混ぜたりすると起こりやすいミスです。
そのほか、守りたいデザインに含まれないロゴやラベル、パッケージは図に入れないこと、台座や手など物品以外のものが写る場合は意匠の説明で断るか区別がつくように描くこと、部分意匠では守る部分を実線、その他の部分を破線で描くこと(または他の明確な方法で区別すること)などがポイントです。
ステップ3:願書の作成(意匠に係る物品と意匠の説明)
願書には、出願人・創作者の情報のほか、次のような欄があります。
- 意匠に係る物品:その物品が何で、どのように使うものかがわかる一般的な名称を書きます。たとえば「ワイヤレスイヤホン」「食品容器」などで、商品名やブランド名、「装置」のようなあいまいな名称は避けます。物品の名称は、どの先行意匠と比べられるか、権利がどこまで及ぶかに関わります。
- 意匠に係る物品の説明:名称だけでは用途・機能・材質がわかりにくい場合に説明します。
- 意匠の説明:透明な部分、省略した図、色彩、部分意匠で守らない部分など、図面だけでは伝わらない事項を説明します。
1つの出願には原則として1つの意匠を記載しますが、2021年4月からは複数意匠一括出願により、1つの願書で最大100意匠までまとめて出願できるようになりました(出願料・審査・登録は意匠ごと)。
ステップ4:出願と審査
願書と図面ができたら特許庁に出願します。出願料は1意匠につき16,000円です。日本国内に住所がある方はご自身で出願することもできますが、海外の出願人は日本の弁理士などの代理人を通す必要があります。
意匠は特許と違い、審査請求の手続は不要です。方式審査の後、自動的に実体審査が始まり、新規性、創作非容易性、意匠が明確に表されているか、先に出願された類似の意匠がないかなどが審査されます。最初の審査結果が届くまで、出願からおおむね6〜12か月程度かかることが多いです。問題がなければ、最初の通知がそのまま登録査定になることもあります。
ステップ5:拒絶理由通知への対応
審査で問題が見つかると、拒絶理由通知が届きます。これに対しては、意見書(反論)や手続補正書(図面や願書の修正)を提出して対応します。よくある拒絶理由は次のとおりです。
- 新規性がない・先行意匠に類似:全体の印象の違いを主張します。補正でできることは限られるため、全体意匠か部分意匠かといった方針は出願前に決めておくことが大切です。
- 創作非容易性がない:ありふれた形状を少し変えただけと判断された場合です。
- 意匠が特定できない:図面の食い違いや不足、不明確な部分がある場合です。
補正で要旨を変えることはできません
図面の修正は、出願時のデザインの範囲内でしか認められません。新しい特徴を加えたり形を変えたりすると「要旨の変更」とされ、補正は認められません。だからこそ、出願前に図面をしっかり作り込むことが重要です。
国内の出願人の場合、応答期間は通知の発送から原則40日で、請求により2か月延長することができます。意見書や補正書の提出に特許庁費用はかかりません。それでも拒絶査定となった場合は、所定の期間内に拒絶査定不服審判を請求することができます。
ステップ6:登録査定と設定登録
登録査定が届いたら、30日以内に登録料を納めます。納付が必要なのは第1年分(8,500円)だけで、2年目以降は毎年納めます(第1〜3年は毎年8,500円、第4〜25年は毎年16,900円)。登録料を納めると設定登録され、意匠権が発生します。存続期間は出願日から最長25年です。
発売前にデザインを公開されたくない場合は、秘密意匠の請求(5,100円)をすれば、登録日から最長3年間、意匠公報への掲載内容を秘密にできます。
出願前にそろえておきたいもの
- 商品を各方向から見た画像(CADデータ、CG図、写真など)
- 商品の名称・用途・材質、特に守りたい部分
- 出願人の名称・住所、創作者の氏名
- すでに公開している場合は、その日付と公開方法がわかる資料
BrandAgentでは、累計4,000件超の出願実績があり、図面のチェックから出願、拒絶理由への対応、登録まで、すべて弁理士本人が担当しています。費用は案件によって異なりますので、まずは無料のお見積りをご利用ください。
よくある質問
- Q. 六面図は必ず必要ですか?
A. 2019年の改正以降、図の数は決まっておらず、意匠の内容を特定できれば足ります。ただし実務上は六面図をそろえるのが最も安全です。 - Q. 写真で出願できますか?
A. できます。無地の背景で、すべての図を同じサンプル・同じ照明で撮影するのがポイントです。 - Q. 登録までどれくらいかかりますか?
A. 最初の審査結果が届くまで、出願から6〜12か月程度かかることが多いです。拒絶理由がなければ、登録料の納付後まもなく登録されます。 - Q. 出願後に図面を直すことはできますか?
A. 明らかな誤りの修正など、要旨を変えない範囲に限られます。形を変えるような修正はできないため、出願前の確認が重要です。 - Q. すでにネットで公開してしまいました。もう登録できませんか?
A. 公開から1年以内であれば、新規性喪失の例外の手続で救済される可能性があります。できるだけ早くご相談ください。
まとめ
- 意匠登録出願は、準備→図面・願書作成→出願→審査→(拒絶理由対応)→登録の流れで進みます。
- 基本は商品の公開前に出願。公開済みでも1年以内なら例外の手続で救済の可能性があります。
- 図面が権利範囲を決めます。六面図が基本で、写真や3D CADの図も使えますが、図どうしの一致が必須です。
- 意匠は審査請求不要。最初の審査結果は出願から6〜12か月程度が多いです。
- 拒絶理由には意見書・補正書で対応しますが、補正で要旨は変えられません。
意匠登録出願の準備や図面の作り方でお困りの方は、特許事務所BrandAgentまでお気軽にご相談ください。
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