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部分意匠と関連意匠の使い方|模倣品に強い意匠戦略を弁理士が解説

悩んでいる方
製品の一部だけ真似されたり、少し形を変えたバリエーションを出されたりしたら、意匠登録で守れないのでしょうか?

こうした疑問にお答えします。

意匠登録をしたのに、競合が「ほんの少し形を変えた製品」を出してきて手が出せない――。意匠のご相談で、実はとても多いお悩みです。製品全体の形だけで出願していると、全体の印象を少し変えられただけで「似ていない」と判断されることがあります。

そこで役に立つのが、日本の意匠法にある部分意匠と関連意匠という2つの制度です。本記事では、累計4,000件超の出願を扱ってきた特許事務所BrandAgentの弁理士・叶野徹が、2つの制度の違い、使いどころ、組み合わせ方、費用の考え方を解説します。

※特許庁の料金・制度は2026年11月時点の情報です。

この記事で分かること

  • 部分意匠とは何か、どんな製品に向いているか
  • 関連意匠とは何か、2020年の改正で何が変わったか
  • 本意匠の出願日から10年以内という出願可能期間の使い方
  • 全体意匠・部分意匠・関連意匠を組み合わせる出願戦略
  • 出願時に注意すべき点と特許庁費用

「全体の意匠」だけでは守りきれない理由

通常の意匠登録(いわゆる全体意匠)は、製品全体の形状・模様・色彩の組合せを保護します。権利が及ぶのは、登録した意匠と同一または類似の意匠です。

ところが、模倣する側は「特徴的な部分はそのまま使い、それ以外の部分を変える」ことがよくあります。例えば、特徴的な持ち手のデザインはそのままに、本体の形やサイズを変えるといったケースです。全体として見たときの印象が変われば、全体意匠では「類似しない」と判断される可能性が出てきます。

また、自社製品にもカラー違い・サイズ違い・細部違いのバリエーションがあるのが普通です。1つの意匠だけ登録しても、類似範囲の外側にあるバリエーションは守れません。

この2つの弱点を補うのが、部分意匠(特徴的な「部分」を守る)と関連意匠(「バリエーション」を守る)です。

部分意匠とは:製品の特徴的な「部分」を守る制度

部分意匠は、物品の一部分の形状等について意匠登録を受ける制度です。図面では、一般に、登録を受けたい部分を実線で、それ以外の部分を破線で描き分け、どの部分を保護したいのかを特定します。

部分意匠が向いている製品の例

  • 持ち手・グリップ:マグカップの取っ手、工具や調理器具のグリップなど
  • 操作部・表示部:家電の操作パネル、スイッチ周りのデザインなど
  • 先端・接続部:ペン先、ノズル、容器の口部分など
  • シリーズ共通の意匠要素:製品ごとに形は違うが、共通して使っている特徴的な部分

「この部分こそが製品の顔だ」「ここを真似されると困る」という箇所があるなら、部分意匠を検討する価値があります。

部分意匠で注意したいこと

部分意匠の類否は、その部分の形状だけでなく、物品全体の中での位置・大きさ・範囲なども考慮して判断されます。「部分だけ切り取れば何にでも権利が及ぶ」というものではありません。

また、どこまでを実線にするかで権利範囲と登録可能性が変わります。実線部分を小さくしすぎると、ありふれた形状として新規性や創作非容易性を否定されることがあり、逆に広くしすぎると、模倣品が実線部分の一部を変えただけで外れてしまうことがあります。この線引きが、部分意匠でいちばん弁理士の腕が問われるところです。

なお、2020年4月施行の改正により、組物(セットで使う物品)についても部分意匠が認められるようになりました。

関連意匠とは:デザインの「バリエーション」を守る制度

関連意匠は、自分の出願した意匠(本意匠)に類似する意匠を、別の意匠として登録できる制度です。本来、互いに類似する意匠は後から出したほうが登録できないのが原則ですが、同じ出願人であれば、関連意匠として登録を受けられます。

関連意匠は、それぞれが独立した意匠権として権利行使できます。関連意匠に類似する範囲にも権利が及ぶため、本意匠だけの場合に比べて、守れる範囲を周辺に広げることができます。

2020年の改正で「10年以内」まで出願可能に

2020年4月施行の改正で、関連意匠制度は大きく使いやすくなりました。

2020年4月以降の関連意匠のポイント

  • 出願可能期間:本意匠の出願日から10年以内なら関連意匠を出願できます(改正前は本意匠の公報発行前まで)。
  • 関連意匠の関連意匠:関連意匠にのみ類似する意匠も、関連意匠として登録できるようになりました。
  • 自己の公知意匠の扱い:本意匠に類似する自分の公開済み意匠は、関連意匠の新規性等の判断では原則として引用されません。
  • 存続期間:関連意匠の意匠権は、基礎となる意匠の出願日から25年で満了します。

つまり、本意匠の製品を発売した後、市場の反応を見て派生モデルを開発した場合でも、10年の範囲内であれば関連意匠として追加で権利化を狙えるということです。中小企業にとっては、最初から全バリエーションを出願しなくても、売れ筋に合わせて段階的に権利を厚くできるのが大きなメリットです。

関連意匠の注意点

ここに注意

  • 本意匠の権利が生きていること:関連意匠の登録時に本意匠の意匠権が消滅・放棄等していると、原則として登録できません。年金の納付を止める前に、関連意匠の予定がないか確認が必要です。
  • 他人の公知意匠には負ける:自分の公開意匠は原則として引用されませんが、その間に第三者が類似デザインを公開・出願していれば、それによって登録できなくなることがあります。
  • 分離して譲渡できない:本意匠と関連意匠の意匠権は、分離して移転することができません。専用実施権も、全てについて同一人に同時に設定する必要があります。

特に2つ目の点から、「10年あるから後でいい」と考えるのは危険です。派生モデルの構想があるなら、発表前に出願しておくのがいちばん安全です。

部分意匠と関連意匠の違い(比較表)

項目 部分意匠 関連意匠
守るもの 物品の特徴的な一部分 本意匠に類似するバリエーション
効果的な場面 特徴部分だけ真似される場合 少しずつ形を変えた模倣、自社の派生モデル
出願のタイミング 通常の意匠と同じ(公開前が原則) 本意匠の出願日から10年以内
存続期間 出願日から25年 基礎意匠の出願日から25年
特許庁の出願料 1意匠16,000円 1意匠16,000円

部分意匠と関連意匠は「どちらか一方」ではなく、組み合わせて使えます。例えば、部分意匠を本意匠とし、その部分のバリエーションを関連意匠として出願することも可能です。

実務で使える組み合わせ戦略

製品やビジネスの状況によって最適解は変わりますが、よく検討するパターンは次のとおりです。

パターン1:全体意匠+部分意匠

製品全体の形を全体意匠で押さえつつ、特徴的な部分を部分意匠でも押さえる方法です。全体をそっくり真似されたときは全体意匠で、部分だけ使われたときは部分意匠で対応できます。模倣品が出やすいEC向けの商品で特に有効です。

パターン2:本意匠+関連意匠(バリエーション展開)

基本モデルを本意匠とし、形状違いのモデルを関連意匠として出願する方法です。発売時点で決まっているバリエーションは同時に、後から開発するモデルは10年の期間内に追加します。

パターン3:複数意匠一括出願でまとめて出す

2021年4月から、1つの願書で最大100意匠まで出願できる複数意匠一括出願が使えます。全体意匠・部分意匠・関連意匠をまとめて1つの願書で出せるため、書類管理がしやすくなります。ただし、特許庁の出願料は1意匠ごとに16,000円かかり、登録後もそれぞれが独立した意匠権になる点は変わりません。

費用の目安(特許庁費用)

部分意匠も関連意匠も、特許庁費用は通常の意匠と同じです。

意匠の特許庁費用(2026年11月時点)

  • 出願料:1意匠につき16,000円
  • 登録料(年金):第1〜3年は毎年8,500円、第4〜25年は毎年16,900円(登録時は第1年分のみの納付で可)
  • 秘密意匠の請求:5,100円(登録から最長3年間、意匠を秘密にできます)

例えば、全体意匠1件+部分意匠1件+関連意匠2件の計4意匠を出願すると、出願料だけで16,000円×4=64,000円です。登録後はそれぞれに年金がかかるため、意匠の数を増やすほど維持費も増えます。

「守りたい範囲」と「維持費」のバランスを取ることが大切です。全部を登録するのではなく、模倣されたら困る部分・売上の柱になるモデルに絞り込むのが現実的です。弁理士の手数料は意匠の数や図面の作成方法によって変わりますので、個別にお見積りします。

出願前に準備しておきたいこと

  • 公開前に相談する:展示会・EC掲載・SNS投稿の前が理想です。公開後でも1年以内なら新規性喪失の例外を使える場合がありますが、出願時の主張と、出願から30日以内の証明書提出が必要です。
  • どこが特徴かを整理する:「この部分は他社にない」「ここを真似されると困る」というポイントを書き出しておくと、部分意匠の線引きがスムーズです。
  • 今後のバリエーション計画を共有する:関連意匠の設計に直結します。
  • 3D-CADデータや試作品の写真:図面作成の材料になります。

よくある質問

  • Q. 部分意匠だけを出願してもよいですか?
    A. 可能です。ただし、製品全体をそっくり真似されるケースに備えて、全体意匠と組み合わせることを検討するのがおすすめです。
  • Q. すでに登録済みの意匠に、後から関連意匠を追加できますか?
    A. 本意匠の出願日から10年以内で、本意匠の意匠権が存続していれば可能です。ただし、その間に第三者が類似デザインを公開していると登録できないことがあります。
  • Q. 関連意匠だけを他社に売却できますか?
    A. できません。本意匠と関連意匠の意匠権は分離して移転できないため、まとめて移転する必要があります。
  • Q. 部分意匠や関連意匠は審査が厳しいですか?
    A. 審査の基本(新規性・創作非容易性など)は通常の意匠と同じです。部分意匠は実線部分の範囲設定、関連意匠は本意匠との類似性の判断がポイントになります。

まとめ

  • 全体意匠だけでは、部分的な模倣や少し形を変えた模倣に対応しきれないことがあります。
  • 部分意匠は製品の特徴的な「部分」を、関連意匠は「バリエーション」を守る制度です。
  • 関連意匠は本意匠の出願日から10年以内に出願でき、関連意匠の関連意匠も登録できます。
  • 第三者の公開に負けないよう、派生モデルも発表前の出願が安全です。
  • 特許庁の出願料は1意匠16,000円。守る範囲と維持費のバランスで意匠の数を決めましょう。

部分意匠・関連意匠をどう組み合わせるべきか迷ったら、製品の写真やCADデータをお送りください。特許事務所BrandAgentでは、弁理士本人が全ての案件を担当し、最適な出願プランをご提案します。

※これまで1,000件以上の特許サポートの実績を持つ代表弁理士の叶野が、すべての案件を直接担当いたします。

お一人お一人に割ける時間に限りがあるため、本気で出願・防衛を検討されている企業様限定の窓口とさせていただいております。

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  • この記事を書いた人

叶野徹

弁理士 叶野徹 京都を拠点とする「BrandAgent特許事務所」代表。 これまで累計4,000件以上の商標案件に携わってきた商標・特許の専門家。 プロスポーツチーム『滋賀レイラックFC』様の公式マスコット(うーまくん)の商標登録を担当するなど、複雑なキャラクターIPやAmazonブランド申請のためのロゴの権利保護において高い実績を持つ。 最新のAI技術と豊富な実務経験を掛け合わせ、京都・滋賀をはじめ全国の経営者様のブランドを最短ルートで守る盾となります。

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