
こうした疑問にお答えします。
特許は登録されたら終わりではありません。権利を維持するには、毎年「特許料」(いわゆる年金)を特許庁に納める必要があります。納め忘れると権利が消滅してしまうため、特許を持つ企業や個人にとって、年金管理はとても大切な業務です。
この記事では、特許事務所BrandAgentの弁理士・叶野徹が、特許年金の金額と納付期限の考え方、納付方法、中小企業などの減免制度、そして納め忘れたときの追納と権利の回復について解説します。自社の特許を管理している方はもちろん、海外の親会社が持つ日本特許の管理を任されている日本法人の方にも役立つ内容です。
※特許庁の料金は2026年11月時点のものです。最新の金額は特許庁の料金一覧でご確認ください。
この記事でわかること
- 特許年金の仕組みと納付期限の数え方
- 年次ごとの特許料の金額
- 納付方法と自動納付制度
- 中小企業・大学などの減免制度
- 納め忘れたときの追納と、権利の回復
特許年金の仕組み
特許権は、特許料を納めることで維持されます。流れは次のとおりです。
- 第1年〜第3年分:特許査定の後、設定登録のときに3年分をまとめて納付します。
- 第4年分以降:毎年、前年までに次の年の分を納付します。複数年分をまとめて前納することもできます。
ポイントは、年次が設定登録日から数えられることです。特許庁の説明では、納付期限日は「設定登録年月日に納付済年分を加えた日」とされています(休日にあたる場合は翌開庁日)。たとえば、2026年6月10日に設定登録され、第1〜3年分を納めた特許であれば、第4年分の納付期限は2029年6月10日です。出願日を基準にしないよう注意しましょう。
一方、特許権の存続期間は出願日から20年(延長登録があれば最長25年)で終わります。そのため、実際に年金を納める年数は、出願から登録までにかかった期間によって変わります。
特許料(年金)の金額
2004年4月1日以降に審査請求をした出願の特許料は、次のとおりです。請求項の数によって金額が変わり、年次が進むほど高くなります。
| 年次 | 1年あたりの金額 | 請求項1 | 請求項5 | 請求項10 |
|---|---|---|---|---|
| 第1〜3年 | 4,300円+300円×請求項数 | 4,600円 | 5,800円 | 7,300円 |
| 第4〜6年 | 10,300円+800円×請求項数 | 11,100円 | 14,300円 | 18,300円 |
| 第7〜9年 | 24,800円+1,900円×請求項数 | 26,700円 | 34,300円 | 43,800円 |
| 第10〜25年 | 59,400円+4,600円×請求項数 | 64,000円 | 82,400円 | 105,400円 |
※第21年〜第25年は延長登録の出願があった場合のみ。減免を受けない場合の金額です。
第1年〜第10年分の合計は、請求項1の場合で191,200円、請求項5の場合で245,600円です。第10年以降は1年ごとの負担が大きくなるため、10年目を一つの区切りとして、権利を維持するかどうかを見直す企業も少なくありません。
納付方法と自動納付制度
特許料は、特許料納付書を特許庁の窓口に提出する、郵送する、電子出願ソフトでオンライン提出する、といった方法で納めます。納付期限が近づいても、特許庁から納付期限のお知らせは届かないと考えておくべきです。特許庁も、回復手続の案内の中で、納付期限のお知らせ等は行わない旨を明記しています。
納め忘れを防ぐ仕組みとして、特許庁には自動納付制度があります(2009年1月1日開始)。あらかじめ予納台帳または口座振替の登録をしたうえで「自動納付申出書」を提出しておくと、毎年の特許料が自動的に引き落とされます。納付期限の約60日前には「自動納付事前通知」が送られます。ただし、残高不足で引き落とせなかった年は自動納付の対象外となり、個別に納付書で納める必要があります。クレジットカードには対応していません。
中小企業・大学などの減免制度
2019年4月1日以降に審査請求をした案件では、要件を満たせば、審査請求料と第1年〜第10年分の特許料が減免されます。主な対象と軽減率は次のとおりです。
| 対象 | 軽減率 |
|---|---|
| 中小企業(会社・個人事業主など) | 1/2 |
| 小規模企業・中小スタートアップ企業 | 1/3 |
| 大学・大学の研究者(アカデミック・ディスカウント) | 1/2 |
特許料の減免は、減免申請書や証明書類を提出しなくても、特許料納付書の【特許料等に関する特記事項】に「減免を受ける旨」と「減免申請書の提出を省略する旨」を記載すれば受けられます。ただし、納付した後から減免を申請することはできません。中小企業であるのに通常額で納めてしまうケースもあるので、納付前に要件を確認しましょう。なお、要件を満たせば外国の出願人も対象になります。
納め忘れたら:6か月の追納期間(倍額)
納付期限を過ぎても、すぐに権利が消えるわけではありません。期限経過後6か月以内(追納期間)であれば、特許料を納付できます。ただし、本来の特許料に加えて、同額の割増特許料が必要です。つまり、実質的に倍額の支払いになります。
たとえば請求項5の特許の第4年分(14,300円)を追納期間に納める場合、割増特許料14,300円を加えた28,600円が必要です。
追納期間も過ぎると権利は消滅
追納期間内にも特許料と割増特許料を納めなかった場合、特許権は消滅します。その後は、次に説明する「権利の回復」が認められない限り、権利を取り戻すことはできません。
追納期間を過ぎた場合:「故意でない」なら権利の回復が可能
追納期間を過ぎて権利が消滅した場合でも、一定の条件のもとで権利の回復を申請できます。2023年4月1日以降に期間を徒過したものについては、回復の要件が、従来の「正当な理由」から「故意によるものでない」ことに緩和されました。
権利の回復(故意でない基準)のポイント
- 期限:手続ができるようになった日(通常は徒過に気づいた日)から2か月以内、かつ追納期間の経過後1年以内。
- 提出書類:回復理由書(徒過の理由、手続ができるようになった日、故意によるものでない旨)と、特許料及び割増特許料を納める特許料納付書。
- 回復手数料:特許の場合212,100円。特許料・割増特許料とは別に必要です。
- 手数料の免除:災害など、手続をする者の責めに帰することができない理由による場合は、証明により免除されることがあります。
回復手数料は高額ですし、期限も短いため、「後で回復すればいい」と考えるのは危険です。また、「故意でない」基準でも、回復理由書で徒過の経緯を具体的に説明する必要があり、特許庁から証拠の提出を求められることもあります。また、回復の判断を待つ間に次の年分の納付期限が来ることもあり、それも忘れずに納める必要があります。
海外の親会社・外国の権利者の日本特許を管理する場合
中国企業や海外企業の日本法人の方から、「親会社名義の日本特許の年金を誰が払っているのかわからない」という相談を受けることがあります。海外の権利者は、日本の手続を日本の弁理士や年金管理サービスに任せていることが多いのですが、担当者の交代や代理人の変更をきっかけに、管理が抜け落ちることがあります。
特に注意したいのは、海外では年金の期限を出願日基準で数える国も多いため、日本も同じだと思い込んでしまうケースです。日本は設定登録日が基準なので、海外の管理システムに日本の特許を登録するときは、設定登録日を正しく入力しておく必要があります。また、権利者の名称や住所が変わっている場合は、年金とは別に登録名義人の表示変更の手続も検討しましょう。
日本の特許の番号と設定登録日がわかれば、次の納付期限と納付済みの年分は特許庁の情報で確認できます。不安な場合は、まず現状の確認から始めることをおすすめします。
年金管理で気をつけたいこと
- 期限は設定登録日基準:出願日や査定日と混同しないようにします。
- 自動納付や管理表を活用:担当者の異動や退職で管理が途切れるのが典型的な失敗です。
- 定期的な棚卸し:製品の終売や事業の変更で不要になった特許は、納付をやめれば権利は消滅します。逆に、必要な特許をうっかり失わないよう、維持・放棄の判断は社内で記録しておきましょう。
- 減免は納付前に確認:事後的な減免申請はできません。
よくある質問
- Q. 第4年分の納付期限はいつですか?
A. 設定登録日に納付済みの年分を加えた日です。第1〜3年分を納めていれば、設定登録日から3年後の同じ日が期限になります。 - Q. 期限を過ぎてしまいました。どうなりますか?
A. 期限経過後6か月以内なら、特許料と同額の割増特許料(合計で倍額)を納めて維持できます。 - Q. 追納期間も過ぎてしまいました。
A. 故意によるものでなければ、手続ができるようになった日から2か月以内かつ追納期間経過後1年以内に、回復理由書と回復手数料(212,100円)などを提出して回復を申請できます。 - Q. 特許庁から納付期限の通知は来ますか?
A. 通常は来ません。自動納付制度を使えば、引落しの約60日前に事前通知が届きます。 - Q. 中小企業は年金が安くなりますか?
A. 2019年4月1日以降に審査請求をした案件なら、要件を満たせば第1〜10年分が1/2(小規模企業等は1/3)になります。
まとめ
- 特許年金は、第1〜3年分を登録時に、第4年分以降を毎年納めます。期限は設定登録日基準です。
- 金額は請求項数と年次で決まり、第10年以降は大きく上がります。
- 特許庁から期限の通知は来ないため、自動納付制度や管理表で管理します。
- 納め忘れても6か月以内なら倍額で追納できます。
- 追納期間後も「故意でない」なら回復の余地がありますが、回復手数料212,100円と短い期限に注意が必要です。
特許年金の管理や納め忘れの対応でお困りの方は、累計4,000件超の出願実績があり、すべての案件を弁理士本人が担当する特許事務所BrandAgentまでお気軽にご相談ください。
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