商標権

商標の住所・名称変更(表示変更)の手続とは?出願中・登録後の違いと移転との区別を弁理士が解説

悩んでいる方
会社の住所や社名が変わったけど、登録した商標も変更の手続が必要なの?

こうした疑問にお答えします。

本社の移転、商号変更、グループ再編などで会社の住所や名称が変わると、法務局の登記や取引先への案内には気を配っても、商標の登録情報はそのままになっていることがよくあります。特に、海外ブランドの日本法人・輸入総代理店として、本国の会社名義の日本商標を管理している方からのご相談では、「何年も前の住所のまま」というケースが少なくありません。

この記事では、特許事務所BrandAgentの弁理士・叶野徹が、商標の住所・名称を変更する手続(表示変更)について、出願中と登録後の違い、特許庁に納める費用、必要書類、そして「移転(名義変更)」との違いを解説します。

※2026年11月時点の情報です。最新の料金は特許庁の料金一覧、手続の詳細は特許庁「登録名義人の表示変更登録申請」のページでご確認ください。

この記事でわかること

  • 「表示変更」と「移転(名義変更)」の違い
  • 出願中の商標と登録後の商標で手続が違う理由
  • 特許庁に納める費用と必要書類
  • 変更を放置すると困る場面(更新・移転・権利行使・ECモール)
  • 海外の権利者の住所・名称が変わった場合の注意点

「表示変更」とは?移転(名義変更)とは別の手続です

商標の「表示変更」とは、権利者は同じまま、その住所や名称の表記だけを新しいものに改める手続です。たとえば「株式会社A」が本社を移転した、「株式会社A」が「A株式会社」に商号変更した、という場合がこれに当たります。会社としては同一なので、権利そのものは動きません。

これに対して、権利者が別の人・別の会社に替わる場合は「移転」です。親会社から日本法人に商標を移す、事業を譲り受けた会社に商標も譲る、といったケースです。一般には両方とも「名義変更」と呼ばれがちですが、特許庁の手続も費用も全く別物です。

ここがポイント


表示変更の申請をしても、権利者を別の会社に替えることはできません。特許庁も、権利者を他人に変える場合は移転登録申請が必要だと案内しています。社名変更なのか、別会社への譲渡なのかを、最初にはっきりさせることが大切です。

出願中か登録後かで、手続が違います

住所や名称が変わったとき、その商標が「まだ出願中」か「すでに登録済み」かで、使う手続が変わります。

商標の状態 手続 特許庁に納める費用
出願中 住所(居所)変更届・氏名(名称)変更届 なし
登録後 登録名義人の表示変更登録申請 登録免許税 登録1件につき1,000円
マドプロ(国際登録) WIPO国際事務局で変更を記録(様式MM10) WIPOの手数料表で確認

出願中の場合:変更届を出す

出願中の商標は、まだ商標原簿に載っていません。この段階では、出願人として特許庁に登録されている住所・名称を変更する届出を行います。特許庁の手数料はかかりません。審査の途中でも提出できます。

登録後の場合:表示変更登録申請を出す

登録された商標は、特許庁の「商標原簿」に権利者の住所・名称が記録されています。この原簿の記載を書き換えるのが「登録名義人の表示変更登録申請」です。登録免許税として、登録1件ごとに1,000円がかかります。登録を5件持っていれば、5件分が必要です。

なお、住所と名称の両方が変わった場合も、特許庁の案内では一つの申請で両方を変更する書き方が示されています。また、同じ権利者の複数の登録をまとめて申請すること(併合申請)もできます。

市町村の住居表示の実施によって住所の表記が変わっただけの場合は、登録免許税が非課税となる扱いがあります。申請書にその旨を記載する必要があるので、該当しそうなときはご相談ください。

見落としがちな点:識別番号の登録情報は別に更新が必要

特許庁では、出願人ごとに「識別番号」が振られ、その番号に住所・名称が登録されています。特許庁は、表示変更登録申請をしても識別番号に登録されている情報(申請人登録情報)は更新されないと注意喚起しています。

つまり、出願中の案件と登録済みの案件が混在している会社では、「原簿の表示変更」と「識別番号の住所・名称の変更届」の両方が必要になることがあります。どちらか一方だけでは、次に出す書類で住所が食い違う原因になります。

変更を放置すると困る4つの場面

表示変更をしなくても、商標権がすぐに消えるわけではありません。ただ、次のような場面で手続が止まったり、余計な時間がかかったりします。

  • 更新のとき:10年ごとの更新申請で、原簿の表示と現在の住所・名称が食い違っていると、あわせて表示変更の手続が必要になります。期限直前に気づくと、二つの手続を同時に進めることになり、慌ただしくなります。
  • 移転(譲渡)のとき:譲渡人の表示が原簿と違うと、移転登録の前提として表示変更が必要になります。M&Aやグループ再編のスケジュールに影響します。
  • 権利行使のとき:模倣品業者への警告、税関への輸入差止申立て、訴訟などでは、登録原簿の写しを示すのが通常です。原簿の権利者表示が現在の会社と一致しないと、同一の会社であることを別途説明する手間がかかります。
  • ECモールのブランド登録・権利侵害申告のとき:Amazonなどのブランド登録や知的財産権の申告では、商標の権利者情報を入力・確認する場面があります。申請者の情報と登録情報が食い違うと、追加の説明を求められることがあります。各モールの要件はよく変わるため、最新のガイドラインを確認してください。

必要書類

登録後の表示変更登録申請では、主に次のものを準備します。

  • 表示変更登録申請書:対象の登録番号、変更前・変更後の住所や名称を記載します。弁理士が作成します。
  • 委任状:弁理士に依頼する場合に必要です。代理人が申請する場合、申請人の押印は不要とされています。
  • 変更の経緯がわかる資料:履歴事項全部証明書など。案件によって提出や確認が必要になることがあるので、手元に用意しておくと安心です。
  • 外国語の書類の日本語訳:海外の会社の登記書類など外国語の書面を添付する場合は、日本語の訳文が必要です。

手続の流れ

弁理士に依頼した場合の一般的な流れは次のとおりです。

  1. 登録・出願の洗い出し:権利者名義の商標(意匠・特許も含めて)を一覧にし、出願中か登録済みかを確認します。
  2. 変更内容の確認:変更前・変更後の住所や名称、変更の時期を、登記事項証明書などで確認します。表示変更なのか移転なのかもここで判断します。
  3. 書類の作成・確認:申請書・届出書と委任状を弁理士が作成し、内容をご確認いただきます。
  4. 特許庁へ提出:登録免許税を納付して提出します。出願中の案件や識別番号の情報もあわせて変更します。
  5. 完了の確認:原簿の記載が変更されたことを確認し、ご報告します。

登録件数が多い会社ほど、洗い出しの段階で漏れが起きやすくなります。商標だけでなく、意匠や特許も同じ名義で持っていないか確認しておきましょう。

表示変更と移転の比較

項目 表示変更 移転
どんなとき 同じ会社の住所・名称が変わった 権利者が別の会社・人に替わる
出願中 変更届(手数料なし) 出願人名義変更届(手数料4,200円)
登録後 登録免許税 1件1,000円 登録免許税 1件30,000円(相続・合併は3,000円)

たとえば、本国の親会社名義の商標を日本法人に移す場合は移転です。表示変更よりも書類(譲渡証書など)が多くなり、登録免許税も大きく変わります。

海外の権利者の住所・名称が変わった場合

中国などの海外企業が権利者の場合、行政区画の再編や本社移転、社名変更などで住所・名称が変わることがあります。日本の原簿では、海外の住所はカタカナ表記で記録されているため、変更後の住所を日本語でどう表記するかを、元の登録との整合を見ながら決める必要があります。

海外の権利者は、日本に住所がない限り、日本の弁理士を代理人として手続します。日本法人や代理店の方が窓口となって本国と調整されるケースも多いので、変更後の正式な社名・住所(原語表記)をわかる資料をそろえていただければ、こちらで日本語の表記を整理します。

BrandAgentへのご依頼について

特許事務所BrandAgentは、累計4,000件超の出願実績があり、すべての案件を弁理士本人が担当しています。表示変更や移転の手続は、対象の登録件数や変更内容によって作業量が変わるため、まずは登録番号と変更内容をお知らせください。費用は無料でお見積りします。

新しい社名やブランドで新たに商標を出願する場合の手数料は、出願時1区分25,000円、登録時1区分25,000円(いずれも税別)です。出願をご依頼いただく場合、事前の調査は無料で行います。

よくある質問

  • Q. 住所が変わったら、すぐに手続しないと商標権が消えますか?
    A. すぐに消えることはありません。ただ、更新・移転・権利行使の場面で必要になるので、変更があった時点で手続しておくのがおすすめです。
  • Q. 社名変更は「移転」になりますか?
    A. 同じ会社の商号変更であれば表示変更です。別の会社に権利を移す場合は移転になります。
  • Q. 登録商標が10件あります。費用はどうなりますか?
    A. 登録免許税は登録1件ごとに1,000円かかります。申請自体はまとめて行うことができます。
  • Q. 出願中の商標と登録済みの商標があります。
    A. 出願中のものは変更届、登録済みのものは表示変更登録申請と、手続が分かれます。識別番号の登録情報の変更もあわせて確認しましょう。
  • Q. 海外の親会社名義の商標でも依頼できますか?
    A. はい。日本法人のご担当者様経由でも、本国の会社と直接(英語・中国語)でも対応しています。

まとめ

  • 表示変更は「同じ権利者の住所・名称の変更」、移転は「権利者が替わる」手続で、全く別物です。
  • 出願中は変更届(手数料なし)、登録後は表示変更登録申請(登録免許税 1件1,000円)です。
  • 表示変更をしても識別番号の登録情報は更新されないため、別途の届出が必要な場合があります。
  • 放置すると、更新・移転・権利行使・ECモールの手続で支障が出ることがあります。
  • 海外の権利者は日本の弁理士を通じて手続し、外国語の書類には日本語訳が必要です。

商標の住所・名称の変更や、移転との区別でお困りの方は、特許事務所BrandAgentまでお気軽にご相談ください。

  • この記事を書いた人

叶野徹

弁理士 叶野徹 京都を拠点とする「BrandAgent特許事務所」代表。 これまで累計4,000件以上の商標案件に携わってきた商標・特許の専門家。 プロスポーツチーム『滋賀レイラックFC』様の公式マスコット(うーまくん)の商標登録を担当するなど、複雑なキャラクターIPやAmazonブランド申請のためのロゴの権利保護において高い実績を持つ。 最新のAI技術と豊富な実務経験を掛け合わせ、京都・滋賀をはじめ全国の経営者様のブランドを最短ルートで守る盾となります。

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