商標権

商標の使用証拠の残し方|不使用取消審判に備えるチェックリストを弁理士が解説

悩んでいる方
商標は登録したら安心だと思っていたけど、使っていないと取り消されるって本当?

こうした疑問にお答えします。

日本の商標は、登録しただけで永久に守られるわけではありません。継続して3年以上、日本で使っていない登録商標は、第三者からの「不使用取消審判」によって取り消されるおそれがあります。しかも、審判を請求されたときに「使っていること」を証明する責任は、権利者側にあります。

実際に使っていても、日付の入った証拠が残っていなければ、証明に苦労することがあります。特に、ネット販売中心の事業者や、海外ブランドの日本の輸入元・販売代理店として商品を扱っている方は、証拠の残し方に注意が必要です。

この記事では、特許事務所BrandAgentの弁理士・叶野徹が、不使用取消審判の仕組みと、日頃から残しておくべき使用証拠、ネット販売・Amazonでの注意点をチェックリスト形式で解説します。

※2026年11月時点の情報です。

この記事でわかること

  • 不使用取消審判の仕組みと、権利者が負う立証責任
  • 「登録商標の使用」として認められるもの・認められにくいもの
  • 日付の入った証拠が重要な理由
  • ネット販売・Amazonでの証拠の残し方
  • 今日から使える証拠保管チェックリスト

不使用取消審判とは

不使用取消審判は、日本国内で継続して3年以上使われていない登録商標について、その登録の取消しを求める制度です。使われていない商標が他人の商標選択の妨げにならないようにするための仕組みです。

  • 誰でも請求できる:以前は利害関係人に限られていましたが、現在は「何人も」請求できます。
  • 証明するのは権利者:請求を受けた権利者側が、審判請求の登録前3年以内に日本で登録商標を使用していたことを証明する必要があります。
  • 使用者は権利者でなくてもよい:商標権者のほか、専用使用権者・通常使用権者(ライセンシー)の使用も認められます。
  • 取り消されると遡って消滅:取消しが確定すると、商標権は審判請求の登録日に消滅したものとみなされます。

請求する側の特許庁費用は、商標の審判請求料として15,000円+1区分につき40,000円です。決して高額ではないため、「出願したい商標と同じ登録があったので、取消審判で空けてもらう」という使い方は珍しくありません。

「駆け込み使用」は原則として認められません


審判請求前3か月から請求の登録日までの間の使用は、それが審判の請求がされることを知った後の使用であると請求人が証明した場合、使用と認められません(権利者側が正当な理由を明らかにした場合を除く)。たとえば、相手方から「その商標を譲ってほしい」と打診があってから使い始めた、というケースは要注意です。証拠は日頃から積み上げておくことが大切です。

何が「登録商標の使用」になるか

商標法では、商品やその包装に商標を付すこと、商標を付した商品を譲渡・引渡し・輸入すること、インターネットを通じて提供すること、広告・価格表・取引書類に商標を付して展示・頒布し、または電磁的方法で提供することなどが「使用」として定められています。

証拠として評価されるには、次の3点がそろっていることが重要です。

  • ①どの商標か:登録商標と同じもの、または社会通念上同一と認められるもの
  • ②どの商品・役務か:登録で指定されている商品・役務についての使用であること
  • ③いつ・どこで:対象となる3年の期間内に、日本国内で使用されたこと

「社会通念上同一」とは

使っている商標が登録商標と少し違っていても、社会通念上同一と認められれば使用として扱われます。特許庁の審判便覧では、書体だけを変えた同じ文字の商標や、平仮名・片仮名・ローマ字を相互に変えたもので同じ読み方と意味を生じるもの(例:「ラブ」と「love」)が挙げられています。一方で、読みが同じでも意味が異なる場合(例:「ピース」は「平和」「小片」の意味があり、「peace」とは同一とされない)は、同一とは認められません。

ロゴを大きくデザイン変更した、別の文字を付け加えた、図形と文字の組合せを崩した、といった場合は、登録商標の使用とは認められないおそれがあります。ブランドをリニューアルしたら、新しいロゴの出願も検討しましょう。

指定商品との関係

取消審判は、指定商品・役務の一部に絞って請求されることもあります。たとえば「被服」で登録していても、実際には「帽子」しか販売していない場合、請求された商品の範囲によっては、使用していない商品について取り消されるおそれがあります。実際の商品が指定商品のどれに当たるか、日頃から把握しておきましょう。

証拠として使いやすいもの・弱いもの

使いやすい証拠 弱い・使えないことが多いもの
商標が付いた商品・パッケージの写真と、同じ商品の販売記録 撮影日・販売時期がわからない商品写真だけ
日付・商品名・商標が記載された請求書、納品書、発注書 社内の企画書・試作品など、外部に出ていない資料
日付入りのカタログ、チラシ、広告、展示会の資料 海外だけでの販売・広告(日本での使用が必要)
URLと取得日がわかるECサイトの商品ページ 登録商標と大きく異なるロゴでの使用
輸入時の書類(商品名・ブランド名が確認できるもの) 指定商品に含まれない商品での使用

一つの資料だけで全てを示せることは多くありません。「商品写真」で商標と商品を、「請求書」で日付と取引を、というように、複数の資料を組み合わせて示すのが基本です。

ネット販売・Amazonでの証拠の残し方

ネット販売だけで事業をしている場合、店舗や紙のカタログがないため、証拠が意外と残りません。商品ページは更新や削除で消えてしまうので、意識して保存しておく必要があります。

  • 商品ページの保存:商標・商品名・価格が見える状態で、URLと日付がわかるように画面を保存(PDF化)します。定期的に(たとえば半年ごと)保存しておくと、期間を通じた使用を示しやすくなります。
  • 販売実績の記録:注文データや売上レポートのうち、日付・商品名がわかるものを残します。個人情報は必要に応じて伏せて提出できます。
  • 実物の写真:出荷する商品やパッケージに商標が付いていることがわかる写真を、時期ごとに残します。
  • 日本向けであることの裏付け:日本のモール(Amazon.co.jp、楽天市場など)での販売、日本語の商品ページ、円建ての価格、日本への発送記録など、日本の需要者に向けた使用であることがわかる資料を意識して残します。

モールの管理画面で確認できるデータの種類や保存期間は、運営側の仕様変更で変わることがあります。必要なデータは早めに自社で保存しておくのが安全です。

輸入元・販売代理店の方へ

海外ブランドの商標を本国の会社が日本で登録し、日本の輸入元や代理店が販売しているケースでは、日本での実際の使用は代理店側の手元に記録が残ります。ライセンシーによる使用も使用と認められますが、その前提として、使用を許諾した関係がわかる契約書などを用意しておくと安心です。

本国の権利者から「日本での使用証拠を送ってほしい」と急に頼まれても、すぐに出せるよう、取引書類や商品写真を年ごとに整理しておくことをおすすめします。

証拠を整理するときの実務のポイント

  • 年ごとにまとめる:取消審判で問われるのは請求の登録前3年間です。写真・請求書・画面の保存データを年ごとにフォルダ分けしておくと、必要な期間の証拠をすぐに取り出せます。
  • 商標と商品を結び付ける:請求書に型番だけが書かれ、ブランド名が入っていないことはよくあります。請求書や納品書には、ブランド名と商品名をあわせて記載する運用にしておくと証拠として使いやすくなります。
  • 元データも残す:スクリーンショットだけでなく、PDFや管理画面から出力したデータなど元の電子ファイルも保存しておくと、日付の信用性を示しやすくなります。
  • 外国語の資料には注意:海外の本社が作成した外国語の資料を使う場合、特許庁に提出する際には日本語訳が必要になります。日本の取引で作成した日本語の書類を優先して残しておくと負担が減ります。

証拠保管チェックリスト

今日から始めるチェックリスト

  • 登録商標の見本・登録番号・指定商品を一覧にしている
  • 実際に使っているロゴが登録商標と同じか確認した
  • 販売している商品が指定商品のどれに当たるか確認した
  • 商品・パッケージの写真を時期ごとに保存している
  • 商標と商品名が入った請求書・納品書を保管している
  • ECの商品ページをURL・日付付きで定期的に保存している
  • ライセンシーや代理店が使っている場合、契約書と使用資料を集めている

BrandAgentのサポート

特許事務所BrandAgentは累計4,000件超の出願実績があり、すべての案件を弁理士本人が担当しています。不使用取消審判を請求された場合の答弁や、使用証拠の整理、逆に他人の不使用商標の取消しを検討する場合も、内容に応じて無料でお見積りします。

ロゴの変更や事業の拡大に合わせて新しく商標を出願する場合の手数料は、出願時1区分25,000円、登録時1区分25,000円(いずれも税別)です。出願をご依頼いただく場合、事前の調査は無料です。

よくある質問

  • Q. 登録から3年以内でも取消審判を請求されますか?
    A. 不使用取消審判は、継続して3年以上日本で使用されていないことが前提です。登録から3年たっていない段階では、この審判の対象になりません。
  • Q. 海外で販売していれば使用になりますか?
    A. 日本国内での使用が必要です。海外だけでの販売や広告では足りません。
  • Q. ロゴを少し変えて使っています。大丈夫ですか?
    A. 書体の変更程度であれば社会通念上同一とされることがありますが、構成が変わると認められないおそれがあります。新しいロゴの出願も検討してください。
  • Q. 取消審判を請求されてから使い始めても間に合いますか?
    A. 審判で問われるのは請求の登録前3年間の使用なので、請求の登録後に始めた使用は数えられません。請求前3か月から請求の登録日までの使用も、請求されることを知った後の使用だと請求人が証明すれば、正当な理由がない限り認められません。日頃の証拠の蓄積が重要です。
  • Q. 代理店が販売している場合も使用になりますか?
    A. 専用使用権者・通常使用権者の使用も認められます。許諾関係がわかる資料もあわせて残しておきましょう。

まとめ

  • 日本で継続して3年以上使っていない登録商標は、誰からでも不使用取消審判を請求されるおそれがあります。
  • 使用を証明する責任は権利者にあり、請求を知った後の駆け込み使用は、請求人がそれを証明すれば認められません。
  • 証拠は「どの商標を」「どの商品に」「いつ・日本で」使ったかを、複数の資料で示します。
  • ネット販売は商品ページや販売記録が消えやすいので、日付付きで定期的に保存しましょう。
  • ライセンシーや代理店の使用も使用になりますが、許諾関係の資料も用意しておきます。

使用証拠の残し方や不使用取消審判への対応でお悩みの方は、特許事務所BrandAgentまでお気軽にご相談ください。

  • この記事を書いた人

叶野徹

弁理士 叶野徹 京都を拠点とする「BrandAgent特許事務所」代表。 これまで累計4,000件以上の商標案件に携わってきた商標・特許の専門家。 プロスポーツチーム『滋賀レイラックFC』様の公式マスコット(うーまくん)の商標登録を担当するなど、複雑なキャラクターIPやAmazonブランド申請のためのロゴの権利保護において高い実績を持つ。 最新のAI技術と豊富な実務経験を掛け合わせ、京都・滋賀をはじめ全国の経営者様のブランドを最短ルートで守る盾となります。

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