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商標権の譲渡とは?手続・必要書類・費用を弁理士がわかりやすく解説【2026年版】

悩んでいる方

商標権って売ったり譲ったりできるの?
商標権の譲渡はどんな手続が必要?
契約書だけで権利は移るの?

こうした疑問に、弁理士がわかりやすく解説します。

商標権は財産権の一種なので、売買、事業譲渡、グループ会社間の整理、M&Aなどに伴って第三者へ譲渡することができます。

ただし、当事者間で契約しただけでは、特許庁の登録原簿上の権利者は変わりません。

特許庁の案内でも、移転登録の手続は「登録原簿に記録されることで法律上の効力が発生する」と明記されています。つまり、

契約

特許庁で移転登録申請

原簿への登録(登録の効力は申請書の受付年月日から発生)

という流れで、登録まで完了して初めて対外的にも新しい権利者として整理されます。

この記事では、

商標権譲渡の基本

移転登録申請の手続の流れ

登録免許税と納付方法

出願中商標の名義変更

実務上の注意点

の順に解説します。

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結論:商標権の譲渡は「契約」+「特許庁の移転登録」で完了します。

  • 当事者間の契約だけでは、登録原簿上の権利者は変わらない
  • 移転登録申請後、不備がなければ受付日から土日祝日を除き15日で原簿に登録される
  • 登録の効力は申請書の受付年月日から発生する
  • 登録免許税は通常の譲渡(特定承継)で1件につき30,000円
記事の信頼性

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商標権の譲渡とは?

商標権の譲渡とは、商標権の所有者を別の人や会社に移転することです。

商標権は財産権なので、土地や株式と同じように権利の移転対象になります。よく行われる場面は以下のとおりです。

商標権譲渡が行われる主な場面

  • 会社の事業譲渡
  • M&A(企業買収・合併)
  • ブランド売却
  • グループ会社間での権利整理
  • 会社分割に伴う権利移転
  • 相続による権利承継

特許庁の案内では、移転の原因として、譲渡などによる「特定承継」と、合併・相続・会社分割などによる「一般承継」が区別されています。手続の内容や登録免許税の金額が異なります。

また、商標権の移転登録は、登録原簿に記録されることで法律上の効力が発生します(一般承継の移転を除く)。登録原簿は権利者だけでなく第三者も閲覧するため、最新かつ正しい情報を反映させておく必要があります。手続は速やかに行うことが重要です。

この記事でわかること

  • 商標権譲渡とは何か(特定承継・一般承継の違い)
  • 移転登録申請の手続の流れ
  • 登録免許税の金額と納付方法
  • 申請書に不備があった場合の対応
  • 出願中の商標(登録前)を譲渡する場合の手続
  • 実務上の注意点

契約書だけでは足りない理由

ここは誤解が多いポイントです。

商標権の譲渡契約を締結すれば、当事者間では「譲った・譲り受けた」という整理はできます。しかし、特許庁で移転登録をしていないと、登録原簿上は旧権利者のままです。

そのため、移転登録を済ませないまま放置すると、次のような問題が起こり得ます。

移転登録をしないと起こり得る問題

  • 対外的に権利者が誰か分かりにくくなる
  • ライセンス付与・担保設定の整理がずれる
  • 後で譲渡の有無や範囲をめぐってトラブルになる
  • 第三者への対抗要件を備えられない

契約書だけで終わるのは危険で、移転登録まで完了して初めて実務上すっきりすると考えるのが安全です。

移転登録申請の手続の流れ

特許庁の案内(「移転登録申請の受付から原簿への登録まで」)をもとに、手続の流れを整理します。

① 移転の原因の発生(譲渡契約の締結など)

② 移転登録申請書の提出(書面または電子特殊申請)

③ 特許庁による方式審査

④ 原簿への登録(受付日から土日祝日を除き15日)

⑤ 登録済通知書の送付

申請方法について

申請は、郵送・窓口での書面による申請、またはインターネット出願ソフトによる電子特殊申請が可能です。

登録のスピードについて

特許庁の案内では、申請書に不備がなければ、受付日から土日祝日を除き15日で原簿に登録されます。また、登録の効力は申請書の受付年月日から発生します。

登録状況はJ-PlatPatで確認できます(通常、登録日の翌日に更新されます)。

登録済通知書について

登録後は登録済通知書が送付されます。また、書面申請において譲渡証書等を添付した場合は、その裏面に登録済みである旨が記載され、申請人(登録権利者)へ書留にて返却されます。

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移転登録申請に必要な書類

移転登録申請では、主に次の書類が必要になります。

書類 内容・注意点
商標権移転登録申請書 特許庁の様式に従い作成。申請書左上に登録免許税額を記載する
譲渡証書 譲渡人・譲受人・登録番号・譲渡の内容・譲渡日などを記載
登録免許税 収入印紙(書面申請)または電子納付(オンライン申請)。特許印紙は使用不可
委任状 代理人(弁理士等)が申請する場合に必要。現在は押印不要

重要な注意点:申請書提出前に登録情報を最新確認すること

特許庁は、申請書に現在登録原簿に登録されている情報を正確に記載するよう求めています。J-PlatPatの情報と登録原簿の情報が異なる場合もあるため、申請書提出前に必ず最新の登録情報を確認してください。

押印について

特許庁の案内では、申請書や添付書面への押印ルールが案内されています。現在は委任状への押印は不要となっています。在外者(日本国内に住所・居所、法人にあっては営業所を有しない方)の場合は、代理人による手続が必要です。

登録免許税の金額と納付方法

商標権の移転登録には、移転の原因によって登録免許税の金額が異なります。

移転の原因 登録免許税 該当する場面
相続または法人の合併による移転 1件につき3,000円 相続、会社合併など(一般承継)
その他の原因による移転(特定承継) 1件につき30,000円 通常の譲渡、事業譲渡、売買など

通常の譲渡は「その他の原因による移転(特定承継)」に当たるため、1件につき30,000円です。複数の商標権を同時に譲渡する場合は件数分かかります。

登録免許税の納付方法

令和6年1月より、登録免許税の納付方法が整備されています。申請方法によって利用できる納付方法が異なります。

納付方法 書面申請 電子特殊申請(オンライン)
収入印紙(申請書左上に貼付) ×
現金納付(銀行・郵便局で事前納付) ×
電子納付(ペイジー) ×
電子納付(口座振替) ×
クレジットカード納付(決済手数料あり) ×

納付に関する重要な注意点

  • 特許印紙では納付できません(商標権の分割登録申請書の本人分割を除く)。必ず収入印紙を使用してください
  • 収入印紙は消印しないこと
  • 予納での支払いは登録免許税の納付には利用できません
  • 電子納付の場合、国庫への払込だけでは申請は完了しません。払込後は速やかに申請手続を行ってください

申請書に不備があった場合の対応

申請書に不備がある場合、特許庁から手続補正指令書または却下理由通知書が届きます。

通知の種類 内容 応答期限
手続補正指令書 方式上の不備がある場合に補正を求める 発送日から2ヶ月以内(商標は申請人の申出により2ヶ月延長可)
却下理由通知書 補正で解消できない不備がある場合 発送日から2ヶ月以内(商標は申請人の申出により2ヶ月延長可)に弁明書を提出

補正を適切に行えば、申請書の受付日が確保されたうえで登録原簿に記載されます。逆に、補正指令に応答しなかった場合や却下理由が覆らない場合は、申請が却下処分となります。

再申請を急ぐ場合は、取下書を提出することで提出書類一式の早期返却を求めることができます(受付から約2週間)。なお、貼付した印紙は消印せずに返却されます。

出願中の商標を譲渡する場合

まだ登録されていない商標、つまり出願中の案件についても譲渡は可能です。ただし、この場合は「商標権の移転登録申請」ではなく、出願人名義変更届(承継の届出)の手続になります。

商標の状況 手続の種類 費用
出願中(登録前) 出願人名義変更届(特定承継による承継の届出) 4,200円
登録後 移転登録申請 30,000円(通常の譲渡)

M&Aや事業譲渡のタイミングによっては、登録前案件と登録後案件が混在することがあります。それぞれ手続の種類が違うため、対象となる商標の状況を事前に確認しておくことが重要です。

特殊なケースの移転登録申請

特許庁の「その他移転登録申請手続について」では、以下のような特殊なケースの手続が案内されています。実務では、これらのケースに当てはまる場合があります。

特殊なケースの移転申請

  • 単独申請:登録権利者または登録義務者が単独で申請する場合(通常は共同申請)
  • 併合申請・大量申請:複数の商標権をまとめて申請する場合(100件以上は大量申請)
  • 利益相反行為:会社とその取締役間の権利譲渡など(会社法上の利益相反行為に当たる場合は追加書面が必要)
  • 破産・清算状態にある者からの移転:管財人・清算人が申請する場合の特別な手続

実務上の注意点

移転登録申請の実務上の注意点

  • 登録原簿の最新情報を事前確認:J-PlatPatの情報と登録原簿の情報が異なる場合があるため、申請書提出前に必ず最新の登録情報を確認する
  • 移転登録は速やかに:登録原簿は第三者も閲覧するため、実態と登録情報が乖離しないよう、移転の原因発生後は速やかに申請する
  • 特許印紙ではなく収入印紙:登録免許税は収入印紙で納付する(特許印紙は不可)
  • 登録前・登録後で手続が違う:出願中の案件は名義変更届、登録後は移転登録申請と手続が異なる
  • 既存ライセンスの確認:専用使用権・通常使用権などのライセンス設定状況を事前に確認する
  • 在外者は代理人が必要:日本国内に住所・居所のない場合は代理人による手続が必要

特に多いのが、譲渡契約を作っただけで安心してしまうケースです。後で見返すと、登録原簿上は旧権利者のままで名義がずれていることがあります。

また、ブランド譲渡の場面では、商標権だけでなく、以下もセットで整理すべきことが多いです。

  • ロゴデータ・デザインデータ
  • ドメイン名
  • 既存のライセンス契約
  • SNSアカウント

よくある質問(FAQ)

Q. 商標権は売買できますか?
A. はい。商標権は財産権なので、売買・譲渡の対象になります。ただし、登録後の商標は特許庁で移転登録申請を行わないと、登録原簿上の権利者は変わりません。

Q. 契約書だけで譲渡できますか?
A. 当事者間の契約だけで終わらせるのは危険です。特許庁で移転登録を完了することで、登録の効力が申請書の受付年月日から発生します。

Q. 移転登録にはどれくらい時間がかかりますか?
A. 申請書に不備がなければ、受付日から土日祝日を除き15日で原簿に登録されます。ただし、書類不備があると補正対応が入り、全体が遅れます。

Q. 出願中でも譲渡できますか?
A. 可能です。この場合は移転登録申請ではなく、出願人名義変更届(特定承継による承継の届出)を行います。費用は4,200円です。

Q. 移転登録の登録免許税はいくらですか?
A. 通常の譲渡(特定承継)は1件につき30,000円です。相続や法人合併による移転(一般承継)は1件につき3,000円です。

Q. 複数の商標権をまとめて譲渡できますか?
A. 可能です。複数の権利について一括で申請する「併合申請」(100件以上は「大量申請」)が利用できます。

まとめ

商標権の譲渡(移転登録)について解説しました。

まとめ

  • 商標権の譲渡は「契約」+「特許庁の移転登録申請」の2段階で完了する
  • 移転登録は登録原簿に記録されることで法律上の効力が発生する(登録の効力は申請書の受付年月日から)
  • 不備がなければ受付から土日祝日を除き15日で原簿に登録される
  • 登録免許税は通常の譲渡で1件につき30,000円(相続・合併は3,000円)
  • 登録免許税は収入印紙で納付(特許印紙は不可)
  • 出願中の案件は名義変更届(4,200円)、登録後は移転登録申請(30,000円)と手続が異なる
  • 申請前に登録原簿の最新情報を確認することが重要

移転登録申請の手続代行や、M&A・事業譲渡に伴う商標権整理のご相談は、お気軽にお問い合わせください。

商標権の譲渡・移転登録をお考えの方は、お気軽にご相談ください。

特許事務所BrandAgent
弁理士 叶野徹

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  • この記事を書いた人

叶野徹

京都の特許事務所BrandAgentを運営している弁理士です。関西の特許事務所→大手法律事務所→大手企業知財部→BrandAgentを設立。特許1,000件以上、商標2,000件以上をこれまでにサポートしています。趣味は温泉・サウナです。

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