
こうした疑問にお答えします。
海外ブランドの日本法人や輸入総代理店、海外メーカーと取引のある日本企業の方から、「本国の会社名義で日本に出願したい」「どんな書類を本国に頼めばいいのか」というご相談をよくいただきます。本国とのやり取りには時間がかかるため、必要な書類を最初に正確に把握しておくことが、スムーズな出願の近道です。
この記事では、特許事務所BrandAgentの弁理士・叶野徹が、外国の会社や個人が日本に商標・特許・意匠を出願する際の委任状の扱いと、権利ごとに必要な書類を解説します。
※2026年11月時点の情報です。委任状の扱いについては特許庁「代理人に関するQ&A」もご参照ください。
この記事でわかること
- 外国の出願人が日本の弁理士を通す必要がある理由
- 出願時に委任状が要らない理由と、後で必要になる手続
- 委任状の押印・署名についての特許庁の扱い
- 願書に書く原語表記(英語名・現地住所)
- 商標・特許・意匠ごとの必要書類と、優先権証明書の期限
外国の出願人は日本の弁理士を通して手続します
日本国内に住所(法人の場合は営業所)がない外国の会社や個人は、原則として、日本国内に住所のある代理人によらなければ特許庁に手続ができません。特許法ではこの代理人を「特許管理人」と呼び、商標・意匠などにも同じ考え方が当てはまります。実務上は日本の弁理士が代理人になります。
日本法人がある場合でも、出願人を本国の会社にするなら、本国の会社は「日本に営業所のない外国法人」として扱われるのが通常です。出願人を本国の会社にするか日本法人にするかは、後の権利行使やライセンスにも関わるため、最初に決めておきましょう。
出願時に委任状は原則として不要です
意外に思われるかもしれませんが、日本の弁理士が代理人として商標・特許・意匠を出願する際、出願と同時に委任状を提出する必要は、原則としてありません。そのため、本国からの書類を待たずに出願を進められるのが日本の制度の大きな利点です。急いで出願日を確保したい場合に特に役立ちます。
後から委任状が必要になる主な手続
一方で、出願後の次のような手続では、代理権を証明する書面(委任状)が必要になります。
- 出願の取下げ・放棄など:出願人にとって重大な手続なので、代理権の確認が求められます。
- 代理人の選任・変更:途中から別の弁理士に依頼を切り替える場合(代理人選任届・代理人変更届)など。
- 出願人の名義変更・権利の移転:譲渡人・承継人それぞれの委任状が必要になるのが通常です。
- 登録後の各種申請や一部の審判:表示変更登録申請や、新たに代理人となって行う審判の請求など。
特許法では、日本に住所がある人の代理人は、出願の変更・放棄・取下げ、優先権の主張やその取下げ、復代理人の選任などについて「特別の授権」が必要とされています。外国の出願人の代理人(特許管理人)は原則として包括的な代理権を持ちますが、特許庁は代理権の範囲が確認できない場合に委任状の提出を求めることがあります。実務上は、こうした手続の際に委任状を用意すると考えておけば安心です。
委任状に押印・署名は必要?
特許庁の「代理人に関するQ&A」では、代理権を証明する書面などに押印は不要であり、また委任者が外国人(外国に住む日本人を含む)の場合は委任者の署名も不要であると案内されています。
さらに、2022年9月26日からは、委任者と受任者の間で合意して作成された委任状の写しであることに疑義がない限り、委任状の写し(コピー)を提出することも認められています。原本を国際郵便で送ってもらう必要は、通常ありません。包括委任状の写しも認められます。
BrandAgentの運用
当事務所では、委任状は会社名と代表者名を記載した形でこちらが作成します。手書きの署名や押印は不要です。内容をご確認いただき、「この内容で提出してよい」とご指示いただければ、そのまま手続を進めます。本国の会社に署名をお願いして待つ時間を省けます。
願書には「原語表記」も記載します
外国の出願人の住所は、願書の【住所又は居所】欄に、国・州・市などの行政区画の順で、原語の発音をカタカナで表記します。名称も日本語(カタカナや漢字)で記載します。
これに加えて、特許庁の商標登録願の様式では、出願人が外国人で住所や名称をローマ字で表記できる場合は、【住所又は居所】の次に【住所又は居所原語表記】、【氏名又は名称】の次に【氏名又は名称原語表記】の欄を設け、原語をなるべく記載することとされています。たとえば中国企業であれば、営業許可証(営業執照)の正式な英文名称や、英文の住所を記載するのが一般的です。
原語表記があると、日本語表記だけでは分かりにくい会社名の同一性がはっきりし、後の権利行使や、ECモールでのブランド登録の際の確認もしやすくなります。本国から情報をもらう際は、次の点をそろえてください。
- 正式な社名(現地語)と正式な英文社名
- 登記上の住所(現地語・英文)
- 代表者の氏名
- 営業許可証などの写し(表記の確認用)
権利ごとの必要書類
| 権利 | 出願時に用意するもの | 優先権証明書の提出期限 |
|---|---|---|
| 商標 | 商標(文字・ロゴ画像)、指定商品・役務、出願人情報 | 出願日から3か月以内 |
| 特許 | 明細書・特許請求の範囲・図面・要約書(外国語の場合は日本語訳)、発明者・出願人情報 | 最先の優先日から1年4か月以内 |
| 意匠 | 図面または写真、物品名、創作者・出願人情報 | 出願日から3か月以内 |
優先権証明書は、外国の最初の出願を基礎に優先権を主張する場合に必要な書類です。期限を過ぎると優先権の主張の効力が失われるため、出願前に本国から入手できるか確認しておきましょう。
商標
商標の出願は、書類の負担が最も軽い手続です。ロゴの場合は、本国で使っているロゴ画像をそのまま使います。指定商品・役務は、実際に扱う商品やサービスを伺ったうえで、日本の審査で通りやすい表現を検討します。
当事務所の商標出願の手数料は、出願時1区分25,000円、登録時1区分25,000円(いずれも税別)です。出願をご依頼いただく場合、事前の調査は無料で、ご相談・お見積りも無料です。
特許
外国語で書かれた明細書をもとに出願する場合、日本語の翻訳文が必要です。翻訳文が日本での権利範囲の基礎になるため、翻訳の品質が重要です。PCT国際出願から日本に移行する場合も、期限内に日本語訳を提出します。
意匠
意匠は図面が権利範囲そのものになります。本国の出願で使った図面を流用できることも多いですが、日本の様式に合わせた調整が必要になる場合があります。
出願後に追加で必要になりやすい書類
- 譲渡証書:出願中の名義変更や登録後の移転で必要です。
- 外国語書類の日本語訳:外国語の書面を添付する場合は、日本語の訳文が必要です。
- 委任状:上で説明した取下げ・代理人変更などの手続で必要です。
なお、出願人名義変更届の特許庁手数料は4,200円です。当事務所の手数料は手続ごとに異なりますので、無料でお見積りします。
本国とのやり取りをスムーズにするコツ
日本法人や代理店の方が窓口になって本国と調整する場合、次の点を意識すると、出願までの時間を大きく短縮できます。
- 出願人を最初に確定する:本国の会社か日本法人か、共同出願にするのか。後から変えると名義変更の手続と費用がかかります。
- 表記の元になる資料を一度にもらう:営業許可証の写しを最初に入手しておけば、社名や住所の表記を何度も確認し直す必要がありません。
- 優先権を使うかどうかを早めに決める:優先権を主張するなら、基礎となる外国出願の番号・出願日と、優先権証明書の入手方法を確認しておきます。
- 署名集めを前提にしない:出願時には委任状が不要で、後で必要になっても署名は求められません。本国の決裁フローに「署名」の工程を組み込まずに済みます。
- 書類の言語を決めておく:当事務所は英語・中国語でも直接やり取りできるため、本国の担当者と直接連絡を取る形も選べます。
「どこまで準備すれば出願できるのか」が最初にはっきりしていれば、本国への依頼も一度で済みます。迷ったら、出願を検討している段階でご相談ください。
よくある質問
- Q. 出願前に本国の会社から委任状をもらう必要はありますか?
A. 原則として不要です。出願後、取下げや代理人変更などの手続が必要になったときに用意します。 - Q. 委任状に代表者の署名は必要ですか?
A. 特許庁は、押印は不要、委任者が外国人の場合は署名も不要と案内しています。当事務所では代表者名を記載した委任状を作成します。 - Q. 委任状は原本が必要ですか?
A. 2022年9月26日以降は、疑義がない限り写しの提出が認められています。 - Q. 原語表記は必ず書く必要がありますか?
A. 商標登録願の様式では、ローマ字で表記できる場合は「なるべく記載する」とされています。当事務所では原則として記載しています。 - Q. 日本法人の担当者が窓口でも大丈夫ですか?
A. はい。日本法人のご担当者様と日本語で、本国とは英語・中国語でやり取りすることもできます。
まとめ
- 日本に住所のない外国の出願人は、日本の弁理士を代理人として手続します。
- 出願時の委任状は原則不要で、取下げ・代理人変更・名義変更などで必要になります。
- 特許庁は押印不要、外国人の委任者は署名も不要と案内しており、写しの提出も認められています。
- 商標登録願には、ローマ字で表記できる場合、住所・名称の原語表記をなるべく記載します。
- 優先権証明書は、商標・意匠は出願日から3か月、特許は最先の優先日から1年4か月以内に提出します。
海外の会社名義での日本出願や、必要書類の準備でお困りの方は、特許事務所BrandAgent(累計4,000件超の出願実績・全案件を弁理士本人が担当)までお気軽にご相談ください。