
登録された商標って、本当にもう覆せないの?
「商標登録異議申立て」ってどんな制度?
無効審判とはどう違うの?
こうした疑問に、弁理士がわかりやすく解説します。
商標登録は、特許庁の審査を経て設定登録されます。しかし、審査の過程で見落としが生じる可能性は完全にゼロではありません。
そこで設けられているのが、
「商標登録異議申立制度」
です。
これは、登録された商標について第三者が「この登録には問題がある」と考える場合に、特許庁に対して取消しを求めることができる制度です。
この制度の大きな特徴は以下の2点です。
・誰でも申し立てできる(利害関係人に限らない)
・申立てができる期間は「商標掲載公報の発行日から2ヶ月」だけ
この記事では、
異議申立制度の基本と趣旨
↓
申立てができる期間・理由
↓
手続の流れ(申立→審理→決定)
↓
無効審判・取消審判との違い
の順に解説します。
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- 申立てできる人:誰でも可能(利害関係人に限定されない)
- 申立期間:商標掲載公報の発行日から2ヶ月以内
- 審理機関:3人または5人の審判官の合議体が審理・決定
- 2ヶ月を過ぎると異議申立てはできません。その場合は無効審判を検討します。

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商標登録異議申立制度とは?制度の趣旨

商標登録異議申立制度とは、設定登録された商標について、第三者がその取消しを特許庁に求めることができる制度です(商標法§43の2〜§43の15)。
特許庁の審査を経て登録された商標であっても、審査の過程で見落としが生じる可能性はゼロではありません。そのため、登録後の一定期間、広く第三者にチェックの機会を与えることで、商標登録制度全体の信頼性を高める仕組みになっています。
この制度の重要なポイントは、当事者間の具体的な紛争解決を主目的とするのではなく、公益的な観点から登録の適否を広くチェックする点にあります。そのため、申立てができる人は利害関係人に限られず、「何人も」申し立てることができます。
つまり異議申立制度は、「登録後の公益的な再チェック制度」ともいえます。
この記事でわかること
- 商標登録異議申立制度の趣旨・概要
- 申立てができる期間と申立人の範囲
- 申立ての主な理由(根拠条文)
- 申立書の提出から決定までの流れ
- 無効審判・取消審判との違い
異議申立てができる期間

異議申立てができる期間は、
商標掲載公報の発行日から2ヶ月以内
です(商標法§43の2)。
この期間は非常に重要です。2ヶ月を過ぎると、異議申立てはできなくなります。
| タイミング | 対応 |
|---|---|
| 公報発行日から2ヶ月以内 | ✅ 異議申立て可能 |
| 2ヶ月経過後 | ❌ 異議申立て不可(無効審判を検討) |
なお、申立書提出後も、申立期間の経過後30日以内であれば、申立ての理由や証拠について補充(補正)することができます。ただし、申立書の要旨を変更する補正は原則として認められません。
異議申立てができる人(申立人の範囲)

異議申立ては、「何人も」申し立てることができます。
利害関係人に限定されていないため、以下のような立場の方が申し立てることができます。
- 競合企業・同業者
- 商標権についての権利を有する者(専用使用権者・通常使用権者など)
- 弁理士などの代理人
- その他の第三者
これは、制度の目的が「特定の当事者間の紛争解決」にあるのではなく、「登録の適否を広く公益的にチェックする」点にあるためです。
ただし、以下の点には注意が必要です。
申立人に関する注意点
- 申立人が死亡した場合、または合併により消滅した場合は、申立てについての地位を承継することができません。
- 商標権が既に消滅(放棄を含む)した後は、異議申立てをすることができないと解されています。
異議申立ての主な理由(根拠条文)

異議申立ての理由は、商標法§43の2に規定されるものに限られます。主な理由は以下のとおりです。
異議申立ての主な理由
- 商標登録要件を満たしていない(商§3):識別力がない、普通名称にすぎない、など
- 不登録事由に該当する(商§4①):先行商標と類似している(11号)、品質誤認のおそれがある(16号)、公序良俗に反する(7号)など
- 地域団体商標の登録要件違反(商§7の2①)
- 先願違反(商§8①②⑤)
- 条約違反(商§43の2①二)
実務で最も多いのは、先行登録商標との類似(商§4①11号)を理由とするものです。既に存在する他人の商標に近いものが登録されてしまった場合に、異議申立てが検討されます。
無効理由や拒絶理由との違い
注意点として、以下の理由は異議申立ての理由とはなりません。
- 一商標一出願違反(商§6)
- 無権利者登録(商§46①四)
- 後発的事由(商§46①五〜七)
また、パリ条約§6の7に基づく代理人・代表者による不正登録については、異議申立てではなく取消審判(商§53の2)によることとされています。
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異議申立ての手続の流れ

異議申立ての流れは、以下のとおりです。
① 商標権の設定登録・商標掲載公報の発行
↓
② 登録異議申立書の提出(2ヶ月以内)
↓
③ 特許庁による方式調査・審判官の指定
↓
④ 申立書副本の商標権者への送付
↓
⑤ 審判官合議体による審理
↓
⑥ 取消理由の通知(取消理由ありの場合)
↓
⑦ 商標権者による意見書の提出
↓
⑧ 決定(登録維持 or 登録取消)
各ステップのポイントを解説します。
申立書の提出
登録異議申立書には、①申立人・代理人の氏名等、②申立てに係る商標登録の表示(登録番号・指定商品または役務)、③申立ての理由および必要な証拠を記載します。申立書は正本のほか、商標権者に送付するための副本と審理用副本1通を提出します。
審判官の合議体による審理
審理は3人または5人の審判官の合議体が行い、過半数で決します(商§43の3①)。審理の公平性・独立性を担保するため、合議制が採用されています。
審理は原則として書面審理で行われますが、申立人・商標権者・参加人の申立てまたは職権により口頭審理にすることもできます。
複数の申立てがある場合の併合審理
同一の商標権に複数の異議申立てがされた場合は、特別な事情がない限り審理が併合されます。これにより、商標権者の負担を減らし、審理を迅速・効率的に進めることができます。
取消理由の通知と意見書
審判長が取消決定をしようとする場合、商標権者および参加人に対して取消しの理由を通知し、意見書を提出する機会が与えられます(商§43の12)。なお、商標権者は申立書副本の受領後に答弁書を提出する必要はなく、取消理由の通知を受けてから意見書を提出すれば足ります。
申立の取下げについて
異議申立ては、特許庁から取消理由の通知がされるまでであれば取り下げることができます。取消理由の通知後は取り下げることができません(商§43の11)。
決定の種類と効果

審理の結果、以下のいずれかの決定が下されます。
| 決定の種類 | 内容 | 不服申立て |
|---|---|---|
| 登録維持の決定 | 取消理由なし → 商標登録を維持 | 不服申立て不可 |
| 登録取消の決定 | 取消理由あり → 商標登録を取消し | 商標権者は東京高等裁判所(知財高裁)へ訴訟提起可(30日以内) |
取消決定の効果
登録取消の決定が確定したときは、商標権は初めから存在しなかったものとみなされます(商§43の3③)。
なお、指定商品または役務の一部についてのみ取消理由がある場合は、その部分についてのみ取消決定がなされ、残りの指定商品・役務については登録が維持されます。
異議申立てと無効審判・取消審判の違い

登録後の商標を争う制度として、異議申立て・無効審判・取消審判の3つがあります。それぞれの違いを整理します。
| 制度 | 請求できる人 | 申立期間 | 取消の効果 |
|---|---|---|---|
| 異議申立て | 誰でも | 公報発行から2ヶ月以内のみ | 商標権は初めから存在しなかったとみなす |
| 無効審判 | 利害関係人 | 原則いつでも | 商標権は初めから存在しなかったとみなす |
| 取消審判(不使用) | 誰でも | 登録後3年経過後 | 審判請求の登録時以降、商標権は存在しなかったとみなす |
異議申立ては「短期間の公益的チェック制度」、無効審判は「本格的な無効化の手続」と理解するとわかりやすいです。
異議申立てと無効審判が同時係属した場合
同一の商標登録について異議申立てと無効審判が同時に係属した場合、原則として異議申立ての審理を優先して行います。ただし、無効審判が早期に結審できる場合や、当事者が無効審判の迅速処理を求める場合などは、無効審判を優先することもあります(商§43の15、商§56①→特§168)。
異議申立てを検討すべきケースと注意点

実務では、次のようなケースで異議申立てが検討されます。
異議申立てを検討すべきケース
- 競合企業が自社ブランドに類似した商標を登録した
- 先行商標との類似が明らかにもかかわらず登録されてしまった
- 識別力がない・普通名称にすぎない商標が登録された
- 審査で見落としがあったと考えられる登録がある
異議申立ての注意点
- 期間が短い:公報発行から2ヶ月以内という期間は非常に短く、「問題がある」と気づいた時点ですぐに動くことが重要
- 法的根拠が必要:感覚ではなく、商標法§43の2に規定する申立て理由に沿って主張する必要がある
- 証拠の準備:先行商標の登録証・使用実績など、申立ての理由を裏付ける証拠を整備する必要がある
- 要旨変更の制限:申立書の要旨を変更する補正は原則認められない(申立期間経過後30日以内は理由・証拠の補充は可能)
よくある質問(FAQ)
Q. 異議申立ては誰でもできますか?
A. はい。利害関係人でなくても申し立てが可能です。ただし、商標権が既に消滅している場合は申し立てできません。
Q. 2ヶ月を過ぎたらどうなりますか?
A. 異議申立てはできなくなります。その場合は無効審判(利害関係人に限る)など別の手段を検討します。
Q. 異議申立ては成功しやすいですか?
A. ケースによります。先行商標との類似など明確な法的根拠がある場合には有効な手段となりますが、感覚的な主張では認められません。弁理士に相談のうえ、根拠と証拠を整えることが重要です。
Q. 無効審判とどちらを選ぶべきですか?
A. 公報発行から2ヶ月以内であれば異議申立てをまず検討します。期間を過ぎている場合や、利害関係人として本格的に無効化を求める場合は無効審判を選択します。
Q. 申立てが取り下げられた場合はどうなりますか?
A. 取消理由の通知前であれば取り下げが可能で、審理は終了します。複数の申立てがある場合でも全件取り下げられれば審理は終了します。
まとめ

商標登録異議申立制度について解説しました。
まとめ
- 異議申立ては、公報発行日から2ヶ月以内に誰でも申し立てられる「登録後の公益的チェック制度」
- 審理は3人または5人の審判官の合議体が行い、書面審理が原則
- 取消決定が確定すると、商標権は初めから存在しなかったとみなされる
- 2ヶ月の期間を過ぎると異議申立てはできない。その場合は無効審判を検討
- 異議申立ては期間が短いため、問題のある登録を発見したらすぐに弁理士に相談することが重要
競合企業の商標登録に問題があると感じた場合、異議申立て・無効審判・交渉など複数の選択肢があります。どの手段が最適かは個別の状況によって異なりますので、早めにご相談ください。