国内商標

中国ブランドの日本商標は漢字・ピンイン・カタカナのどれで出願?呼称の考え方と出願戦略を弁理士が解説

悩んでいる方
中国ブランドを日本で扱うけど、商標は漢字とピンインとカタカナ、どれで出願すればいいの?

こうした疑問にお答えします。

中国企業の日本法人や、中国ブランドの輸入代理店・販売店の方から「本国のロゴは簡体字なんですが、日本でもこのまま登録すれば大丈夫ですか?」というご相談をよくいただきます。中国では漢字表記が主役のブランドでも、日本の消費者はその漢字を日本語の読み方で読みます。ピンインのアルファベットも、日本人には中国語どおりには読まれないことがほとんどです。

この記事では、中国・香港・台湾などのお客様からの出願を数多く扱ってきた特許事務所BrandAgentの弁理士・叶野徹が、中国ブランドの名称を日本で商標登録するときの「表記の選び方」と「出願件数の決め方」を解説します。

この記事でわかること

  • 簡体字・繁体字・日本の漢字の違いと、日本での見え方
  • 日本の審査で重視される「称呼(読み方)」の考え方
  • ピンイン・カタカナ・英語表記それぞれのメリットと注意点
  • 何件出願すべきか(表記の組み合わせと費用の目安)
  • 日本の代理店・日本法人が気を付けたい名義の問題

日本の商標審査は「外観・称呼・観念」で類否を判断する

日本の商標審査では、出願した商標が先に登録された他人の商標と似ているかどうか(類否)を、外観(見た目)・称呼(読み方)・観念(意味)などによって需要者に与える印象を総合して判断します。特許庁の商標審査基準でも、これらを「総合して全体的に観察」すると定められています。

ここで重要なのが「称呼」です。称呼は、その商標を見た日本の取引者・需要者が自然に読む読み方を基準にします。つまり、本国でどう発音されているかではなく、日本人がどう読むかで判断されるということです。

また審査基準では、2以上の自然な読み方がある文字商標は、振り仮名で一方の読みを示していても、もう一方の読みも生じるものとされています。漢字は音読み・訓読みなど複数の読みを持つことが多いため、漢字の商標は「想定外の読み方」でも他人の商標と比べられる可能性がある、という点を押さえておきましょう。

※最新の審査基準は特許庁のウェブサイトでご確認ください。

簡体字・繁体字・日本の漢字はどう違う?

中国大陸の簡体字、香港・台湾の繁体字、日本の漢字(新字体)は、同じ漢字でも字形が異なることがあります。例えば「楽」は、簡体字では「乐」、繁体字では「樂」です。「竜」は、繁体字・旧字体では「龍」、簡体字では「龙」と書きます。

  • 簡体字:日本人にはなじみのない字形が多く、漢字として読めない(=図形のように見える)こともあります。
  • 繁体字:日本の旧字体と同じ字も多く、日本人にも比較的読みやすい表記です。
  • 日本の漢字:日本の消費者に最も自然に読まれ、意味も伝わりやすい表記です。

日本で実際にパッケージや店頭・ECサイトに表示する予定の表記で登録しておくことが基本です。本国ロゴが簡体字でも、日本向け商品で日本の漢字やカタカナを使うのであれば、その表記で登録しておかないと「使っている商標と登録商標が違う」という状態になりかねません。

標準文字で出願できるかも確認を

日本には、特許庁長官が指定した文字だけで構成された商標を、書体を指定せずに出願できる「標準文字」という制度があります。指定された文字以外を含む商標は、標準文字ではなくロゴ(商標見本の画像)として出願することになります。簡体字の一部など、日本の文字コードにない字を含む場合はこの点の確認が必要ですので、出願前に弊所でチェックします。

漢字の読まれ方:本国の発音どおりには読まれない

例として、架空のブランド「美悦(Meiyue)」で考えてみます。

表記 日本人の自然な読み方(例) ポイント
美悦(漢字) ビエツ など 日本語の音読みで読まれる
MEIYUE(ピンイン) メイユエ、メイユー など ローマ字読み・英語読みで揺れる
メイユエ(カタカナ) メイユエ 読み方が一つに定まる

※架空の例です。実際の類否は個別に判断されます。

このように、漢字表記の「美悦」と、ピンイン・カタカナの「メイユエ」は、日本では全く別の読み方になります。そのため、漢字だけを登録していても、第三者が「メイユエ」をカタカナで登録してしまえば、読み方の面では防ぎにくい場面が出てきます。反対に、他人の「ビエツ」という登録商標があれば、漢字の「美悦」は称呼が共通するとして問題になる可能性があります。

ピンインはさらに読み方が揺れやすく、「X」「Q」「ZH」などを含む綴りは日本人がどう読むか予想しにくいものです。日本で広めたい読み方があるなら、カタカナ表記を登録しておくのが確実です。

表記ごとのメリットと注意点

表記 メリット 注意点
漢字 本国ブランドとの一体感。意味が伝わる 日本語読みで類否判断される。簡体字は読めないことも
ピンイン 海外展開と共通で使いやすい 読み方が定まりにくい
カタカナ 日本での呼び名を確保できる 海外では使えない。日本向け専用
英語名 ECやグローバル展開で統一しやすい 一般的な英単語は識別力や先行商標に注意

何件出願すべき?表記の組み合わせ方

日本の商標出願は「1出願につき1つの商標」です。漢字とピンインを上下2段に並べたロゴは、その組み合わせ全体で1つの商標になります。2段の商標でも各部分が独立して読まれることは多いのですが、どの部分が要部として判断されるかはケースによるため、重要な表記は単独でも登録しておくと安心です。

実務上は、次のような優先順位で考えるのがおすすめです。

  • 第1候補:日本の商品・ECサイトで一番目立つ表記(多くの場合は英語名・ピンイン、またはカタカナ)
  • 第2候補:日本で呼ばれる名前を確保するカタカナ表記
  • 第3候補:漢字表記(日本で漢字を前面に出す場合や、模倣が心配な場合)

予算が限られる場合は、まず日本で実際に使う表記1件から始め、事業の拡大に合わせて追加出願するのも現実的な方法です。

費用の目安(1区分の場合)

特許庁の料金は、出願料が3,400円+8,600円×区分数、登録料(10年)が32,900円×区分数です。弊所の手数料は出願時1区分25,000円、登録時1区分25,000円(いずれも税別)です。出願をご依頼いただく場合、事前の商標調査は無料、ご相談・お見積りも無料です。

出願件数 特許庁費用 弊所手数料(税別) 合計(円)
1件(例:英語名) 44,900 50,000 94,900
2件(+カタカナ) 89,800 100,000 189,800
3件(+漢字) 134,700 150,000 284,700

※いずれも1区分・登録料10年分で計算。弊所手数料には別途消費税がかかります。

出願前に必ず確認したいこと

表記の候補が決まったら、出願前に先行商標を調査します。中国ブランドの場合は、次の点を特に確認します。

  • 漢字の日本語読みでの衝突:漢字表記が、日本語の読み方で同じ・似た称呼の登録商標とぶつからないか。
  • ピンインの複数の読み方:ローマ字読み・英語読みなど、考えられる読み方ごとに似た商標がないか。
  • カタカナ表記の先取り:日本で人気が出始めているブランドは、第三者にカタカナ表記を先に出願されていないか。
  • 指定商品・役務の範囲:日本で販売する商品だけでなく、今後扱う予定の商品やEC販売も含めて区分を検討します。

調査の結果、ある表記だけ先行商標とぶつかる場合でも、別の表記なら問題なく登録できることがあります。複数の表記を候補として持っておくと、日本での名前の決め方に余裕が生まれます。弊所では、出願をご依頼いただく場合、この事前調査を無料で行っています。

日本の代理店・日本法人が気を付けたいこと

中国ブランドの日本代理店や日本法人が、カタカナ表記などを自社名義で出願するケースがあります。日本での販売を担う会社が名義人になること自体は可能ですが、本国のブランドオーナーとの関係が終わったときに、商標の帰属をめぐってトラブルになることがあります。

名義を決める前に確認したいこと

  • ブランドオーナー名義で出願するのか、日本法人・代理店名義で出願するのか
  • 契約終了時に商標をどうするか(譲渡の有無など)を契約書で決めておく
  • 本国オーナーが日本でどの表記をすでに出願・登録しているか

また、日本で人気が出てから第三者にカタカナ表記を先に出願されてしまうと、取り戻すには異議申立てや無効審判などの手続が必要になり、時間も費用もかかります。日本での販売を始める前に、主要な表記を押さえておくことが一番の予防策です。

よくある質問

  • Q. 簡体字のロゴのまま日本で登録できますか?
    A. 登録できる場合はあります。ただし日本の消費者には読めない字形も多く、日本語読みでの類否も判断されます。日本で実際に使う表記での登録もあわせて検討してください。
  • Q. 漢字とピンインを2段にしたロゴ1件で足りますか?
    A. 1件でも一定の保護は得られますが、どの部分が要部と判断されるかはケースによります。重要な表記は単独での出願もおすすめします。
  • Q. 中国語の発音は審査で考慮されますか?
    A. 称呼は日本の需要者が自然に読む読み方が基準になります。中国語の発音どおりに読まれることを前提にしないほうが安全です。
  • Q. 代理店名義で出願してもよいですか?
    A. 可能ですが、ブランドオーナーとの契約で帰属を明確にしておくことが大切です。

まとめ

  • 日本の審査では、外観・称呼・観念を総合して類否が判断され、称呼は日本人の自然な読み方が基準です。
  • 漢字は日本語読み、ピンインは読み方が揺れるため、日本での呼び名はカタカナで確保するのが確実です。
  • 登録するのは、日本で実際に使う表記が基本です。
  • 予算に応じて優先順位をつけ、1件から始めて追加出願する方法もあります。
  • 代理店・日本法人名義で出願する場合は、本国オーナーとの契約で帰属を決めておきましょう。

弊所はこれまで4,000件超の出願を扱っており、すべての案件を弁理士本人が担当しています。中国ブランドの日本での表記や出願件数でお悩みの方は、特許事務所BrandAgentまでお気軽にご相談ください。

  • この記事を書いた人

叶野徹

弁理士 叶野徹 京都を拠点とする「BrandAgent特許事務所」代表。 これまで累計4,000件以上の商標案件に携わってきた商標・特許の専門家。 プロスポーツチーム『滋賀レイラックFC』様の公式マスコット(うーまくん)の商標登録を担当するなど、複雑なキャラクターIPやAmazonブランド申請のためのロゴの権利保護において高い実績を持つ。 最新のAI技術と豊富な実務経験を掛け合わせ、京都・滋賀をはじめ全国の経営者様のブランドを最短ルートで守る盾となります。

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