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商標の出願人名義変更届とは?手続の流れと必要書類を弁理士が解説

悩んでいる方

商標を出願中に会社に譲渡することになったけど、手続はどうするの?
出願人名義変更届って何を出せばいいの?
登録前と登録後では手続が違うって本当?

こうした疑問に、弁理士がわかりやすく解説します。

商標出願後、審査中の段階で出願人が変わるケースがあります。事業譲渡、会社間での権利整理、グループ内の名義移転など、さまざまな場面で必要になるのが「出願人名義変更届」です。

登録後の商標権であれば「移転登録申請」が必要ですが、まだ登録されていない出願中の案件については、この出願人名義変更届を特許庁に提出することで、出願の名義を変更します。

この記事では、

出願人名義変更届の基本

特定承継(譲渡)による手続

一般承継(相続・合併・会社分割)による手続

証明書への押印ルール(実印・代表者印)

実務上の注意点

の順に解説します。

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結論:出願中の商標の名義変更は、「出願人名義変更届」を特許庁に提出します。

  • 登録前(出願中)→ 出願人名義変更届
  • 登録後 → 移転登録申請(別の手続)
  • 譲渡などは「特定承継」、相続・合併などは「一般承継」として手続が分かれる
  • 証明書(譲渡証書等)には実印または法人代表者印の押印が必要
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出願人名義変更届とは?

出願人名義変更届とは、出願中(登録前)の商標について、出願人が変わった事実を特許庁に届け出る手続です。

特許庁の案内では、「出願に係る特許を受ける権利を他者(他社)に譲り渡したときに承継人又は譲渡人が、また承継したときに承継人がその事実を届け出るもの」と説明されています。

なぜ届け出が必要なのか

商標の出願は、審査が終わるまでに数ヶ月〜1年以上かかることがあります。その間に会社の合併、事業譲渡、個人から法人への権利移転など、さまざまな事情で出願人が変わることがあります。特許庁への届出なしに放置すると、登録通知や審査の通知が旧名義人に届くなど、後で混乱が生じる原因になります。

登録後の手続との違い

商標の状態 必要な手続 費用
出願中(登録前) 出願人名義変更届 4,200円
登録後 移転登録申請 30,000円(通常の譲渡)

特定承継(譲渡)による名義変更

譲渡、持分放棄などによって出願人が変わる場合を「特定承継」といいます。最もよくある名義変更のパターンです。

特定承継に当たる主な場面

  • 事業譲渡に伴い出願中商標を譲渡する
  • 個人出願を法人に譲渡する
  • 共有出願の持分を他の共有者に放棄・譲渡する
  • グループ会社間で出願中商標を移転する

届出ができる人

特定承継の場合、届出は承継人(譲り受けた側)または譲渡人(譲り渡した側)のいずれかが行います。

必要な添付書類

原因 必要な証明書類
譲渡 譲渡証書、または権利の承継を証明する契約書等
(共有者の同意が必要な場合は同意書も必要)
持分放棄 持分放棄書
持分の届出・変更 持分証明書、または持分の定めを明記した譲渡証書

証明書類は原本の提出が必要です(写しは原則不可。ただし外国語書類の場合は公証人による認証付き写しが認められる場合あり)。

特定承継の効力発生日について

特許庁の案内によると、特定承継は特許庁への届出によって効力が生じます。そのため、出願人名義変更届を提出した後(同日を含む)に審査請求書や意見書を提出する場合、それらの書類の出願人欄には譲受人(承継人)を記載します。

特定承継の重要な注意点

  • 譲渡日は出願日より前にできない:譲渡日が出願日より前になることは認められません
  • 譲渡日は届出日より後にできない:譲渡日が名義変更届の提出日より後になることも認められません
  • 譲渡日の明示がない場合:譲渡証書に明示の記載がない場合、証書の作成日を譲渡日とみなして処理されます
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一般承継(相続・合併・会社分割)による名義変更

相続、会社合併、会社分割などにより権利が移転する場合を「一般承継」といいます。特定承継と異なり、権利義務が包括的に移転するケースです。

一般承継に当たる主な場面

  • 出願人が死亡し相続人が権利を引き継ぐ
  • 会社合併により存続会社が消滅会社の権利を承継する
  • 会社分割により分割後の会社が権利を承継する

必要な添付書類

原因 必要な証明書類
相続 相続関係者の戸籍謄本(法定相続情報一覧図の写しで代替可)、住民票(必要に応じ)、遺産分割協議書(必要に応じ)等
合併 履歴事項全部証明書(承継する会社のもの)、閉鎖事項全部証明書(必要に応じ)
会社分割 履歴事項全部証明書(承継する会社のもの)、会社分割承継証明書

なお、登記事項証明書(履歴事項全部証明書等)については、特許庁が電子情報処理組織を使用して確認できる場合には、提出が省略できる場合があります。

一般承継の効力発生日について

特定承継と異なり、一般承継は相続・合併・会社分割等の効力発生日に承継の効力が生じます。届出によって効力が生じるわけではない点が重要な違いです。

代理人の取扱いについて

相続・合併の場合、届出前の代理人の代理権は存続するため、届出前と同じ代理人であれば代理権の証明は不要です。一方、会社分割の場合は承継人代理人について委任状の提出が必要です。

証明書への押印ルール(実印・代表者印)

出願人名義変更届に添付する証明書(譲渡証書、同意書、持分放棄書、会社分割承継証明書等)への押印については、令和2年12月の省令改正を経て現在のルールが適用されています。

押印が必要な書類

譲渡証書、同意書、持分放棄書、持分証明書、会社分割承継証明書などには、「実印」または「実印により証明可能な法人の代表者印」の押印が必要です。なお、委任状や官公庁が発行する登記事項証明書等への押印は不要です。

個人の場合(令和7年4月1日以降)

証明書への実印の押印に加え、印鑑証明書の添付が必要です。ただし、代理人(代理人を付さない場合は手続者本人)が「譲渡人等の実印である旨」を宣誓すれば、印鑑証明書の提出は省略できます(合理的な疑義がある場合は提出を求められます)。

法人の場合(令和7年4月1日以降)

実印(登記所登録印)または実印により証明可能な法人の代表者印の押印が必要です。「実印により証明可能な法人の代表者印」とは、「○○株式会社代表者印」などの法人の代表者印と認められるものであれば足り、「知的財産専用代表取締役印」のような特定の文字を含む印影である必要はありません。

押印・印鑑証明書に関する注意点

  • 印鑑証明書は発行日から3ヶ月以内のものが必要(令和7年3月31日まで)
  • 委任状・包括委任状への押印は不要
  • 譲渡証書には譲渡人の印のみが必要(譲受人の押印は不要)
  • 電子特殊申請(オンライン)で提出する場合は、押印に代えて電子署名が必要(デジタル庁GPKI電子署名アプリを使用)
  • 外国人による証明書類への署名については、令和4年1月1日以降、本人確認できる措置が必要

届出の方法と手続補足書について

出願人名義変更届は、書面(郵送・窓口)またはオンライン(インターネット出願ソフト)で提出できます。

証明書の提出方法:手続補足書の活用

オンラインで名義変更届を提出し、証明書(譲渡証書等)を後から書面で提出する場合は、「手続補足書」に証明書を添付して、名義変更届の提出から3日以内に提出します。この場合、名義変更届に提出物件の目録欄を設ける必要はありません(ただし包括委任状を援用する場合を除く)。

複数案件をまとめて手続する場合

譲渡人・譲受人および譲渡の内容が同じ複数案件については、1通の譲渡証書で手続が可能です。主たる案件に原本を提出し、他の案件は援用表示を設けることで省略できます。

書面申請の場合の電子化手数料

出願人名義変更届を書面で提出する場合は電子化手数料が必要です。証明書を提出するための手続補足書については不要です。オンライン手続の場合は電子化手数料は不要です。

よくある質問(FAQ)

Q. 出願人名義変更届は誰が提出できますか?
A. 特定承継の場合は承継人(譲り受けた側)または譲渡人(譲り渡した側)のいずれかが届け出ます。代理人(弁理士等)が手続する場合は委任状が必要です(押印は不要)。

Q. 特定承継と一般承継で何が違いますか?
A. 特定承継(譲渡等)は届出によって効力が生じますが、一般承継(相続・合併・会社分割等)は承継の原因が生じた日に効力が生じます。必要な添付書類も異なります。

Q. 譲渡証書には何を記載する必要がありますか?
A. 譲渡人、譲受人、出願番号、譲渡の内容、譲渡日などを記載します。譲渡日は出願日以降かつ名義変更届の提出日以前の日付でなければなりません。

Q. 委任状への押印は必要ですか?
A. 不要です。委任状(包括委任状を含む)への押印は不要となっています。

Q. 法人の代表者印はどのようなものが必要ですか?
A. 「○○株式会社代表者印」などの法人の代表者印と認められるものであれば足ります。「知的財産専用代表取締役印」などの特定の印影である必要はありません。

Q. 外国人が譲渡人の場合、譲渡証書の写しを提出できますか?
A. 原則として原本の提出が必要です。写しは認められません。ただし、公証人による認証付きの場合は証明書として認められる場合があります。また、外国語書類には翻訳文が必要です。

まとめ

商標の出願人名義変更届について解説しました。

まとめ

  • 出願中の商標の名義変更は出願人名義変更届(登録後は移転登録申請)
  • 譲渡などは「特定承継」、相続・合併・会社分割などは「一般承継」で手続が分かれる
  • 特定承継の効力は届出によって生じる。一般承継の効力は承継の原因が生じた日から
  • 証明書類(譲渡証書等)は原本の提出が必要
  • 証明書への押印は実印または法人代表者印が必要(委任状への押印は不要)
  • 譲渡日は出願日以降かつ届出日以前でなければならない
  • 複数案件の譲渡は、内容が同じであれば1通の譲渡証書でまとめて手続が可能

出願中の商標の名義変更手続でご不明な点があれば、お気軽にご相談ください。

商標の出願人名義変更届をお考えの方は、お気軽にご相談ください。

特許事務所BrandAgent
弁理士 叶野徹

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  • この記事を書いた人

叶野徹

京都の特許事務所BrandAgentを運営している弁理士です。関西の特許事務所→大手法律事務所→大手企業知財部→BrandAgentを設立。特許1,000件以上、商標2,000件以上をこれまでにサポートしています。趣味は温泉・サウナです。

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