
商標を早く取るにはどうしたらいいの?
商標出願は、通常審査結果が出るまで平均約6〜7ヶ月かかります。
「できるだけ早く登録したい」という場合は、早期審査制度の活用が有効な選択肢になります。
ただし、条件を満たさないまま申請しても却下されるだけで時間をロスしてしまいます。
この記事では、令和6年3月改訂の特許庁公式ガイドラインをもとに、「早期審査の基本・3つの対象・必要書類・証拠の作り方・注意点」を初心者にもわかるようにまとめます。
- 早期審査:「出願商標をすでに使用している(または使用準備中)」であることが全対象に共通の基本条件
- 対象は3パターン:対象1(一部使用+緊急性)・対象2(全商品に使用)・対象3(一部使用+基準表示)
- 特許庁への追加費用は不要(申出は無料):ただし証拠書類の準備が必要
- 審査期間の目安:平均約1〜2ヶ月(通常の約6〜7ヶ月より大幅短縮)
- 一番の失敗:「急ぎたい」だけで条件に合わない申請をして時間をロスすること
判断に迷う場合は、条件確認の段階で相談するのが安全です:無料相談・見積りはこちら

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商標の早期審査とは

商標の早期審査とは、一定の条件を満たす商標登録出願について、特許庁に早く審査を進めてもらう制度です(申出は無料)。
昭和63年(1997年)9月から運用されており、令和6年3月に最新のガイドラインが改訂されました。
早期審査には①早期審査(審査前・審査中の案件対象)と②早期審理(拒絶査定不服審判を請求した案件対象)の2種類があります。
この記事では、出願後に使う①早期審査を中心に解説します。
早期審査の対象外となる案件(要注意)
- 新しいタイプの商標(動き商標・ホログラム商標・色彩のみからなる商標・音商標・位置商標)および立体商標の一部
- コンセント制度の適用を主張する出願(令和6年4月1日以後の出願)
- 他人の氏名を含む商標に係る出願(令和6年4月1日以後の出願)
- マドリッド協定議定書に基づく国際商標登録出願(日本を指定国とする出願)
早期審査の期間(目安)

| 審査の種類 | 最初の審査結果まで |
|---|---|
| 通常審査 | 平均 約6.9ヶ月(2024年実績) |
| 早期審査(対象に選定された場合) | 平均 約1〜2ヶ月 |
※案件や審査状況により変動します。出典:特許庁「商標早期審査・早期審理ガイドライン」(令和6年3月改訂)
早期審査のメリット
メリット(要点)
- 特許庁への追加費用は不要(申出は無料)
- 使ってよいネーミングか早く判断できる
- 模倣・無断使用に早く対応しやすい
- Amazon等のブランド登録・運用を早く進められる場合がある
- マドプロ出願の基礎出願を早く確定できる
特許庁費用は不要
「審査を早くしてもらう=追加費用が必要」と思われがちですが、早期審査の申出自体に特許庁への追加費用は不要です。
ただし、事情説明書や証拠書類の準備に手間がかかります。弁理士に依頼する場合は代理人手数料が発生します。
ネーミングを使ってよいか早くわかる
審査で登録不可となると、名刺・看板・広告・パッケージ等の変更が必要になることがあります。
結果が早く分かれば、方針転換のコストを抑えやすくなります。
模倣や無断使用へ早く対応できる
相手に「やめてください」と言う場面では、商標権の登録が重要になることが多いです。
早期に登録できれば、警告や交渉を早めに進められる可能性があります。
早期審査が使える3つの対象パターン

早期審査は「出願商標をすでに使用している(または使用の準備を相当程度進めている)こと」が全対象に共通の基本条件です。
その上で、対象1〜3のいずれかに該当することが必要です。
| 対象 | 条件の概要 | こんな人が使える |
|---|---|---|
| 対象1 | 一部の指定商品・役務に すでに使用(または使用準備)していて、 かつ、権利化について緊急性を要する |
第三者に無断使用されている、警告状が届いた、外国にも出願中など |
| 対象2 | 全ての指定商品・役務について すでに使用(または使用準備)している |
出願しているすべての商品・サービスでブランドを使用中の人 |
| 対象3 | 一部の指定商品・役務に すでに使用(または使用準備)していて、 かつ、指定商品・役務が全て審査基準等に掲載の表記のみ |
基準どおりの表記で出願しており、一部の商品・サービスで使用中の人 |
出典:特許庁「商標早期審査・早期審理ガイドライン」(令和6年3月改訂)
対象1:緊急性を要する5つのケース
対象1の「権利化について緊急性を要する」とは、以下のいずれかに該当する場合です。
対象1の緊急性の要件(a〜eのいずれか)
- a) 第三者が、出願商標(又は類似商標)を無断で使用している
- b) 出願商標の使用について、第三者から警告を受けている
- c) 出願商標について、第三者から使用許諾を求められている
- d) 出願商標について、日本以外の特許庁・政府間機関へも出願中である
- e) 本出願をマドリッド協定議定書(マドプロ)に基づく国際登録出願の基礎出願にする予定がある
※「単に取引上早急に商標を決定する必要がある」などは対象になりません
対象3:特に使い勝手がよい理由
対象3は「緊急性」が不要な点が対象1と大きく異なります。
また、全ての指定商品・役務が「類似商品・役務審査基準」「ニース分類」等の掲載表記どおりであれば、指定商品・役務に係る拒絶理由に引っかかる可能性が低く、権利化までの期間も非常に短くなる効果が期待できます。
特許庁もこの対象3を「ぜひ活用してください」と明示しています。
「使用している」「使用準備中」の証拠は何が必要?

早期審査の申出には、「使用している(または使用準備中)」であることを客観的に示す証拠書類が必要です。
提出が必要な書類は以下の3点が客観的にわかる資料です。
証拠書類で証明する3つのポイント
- 使用している商標:出願商標と同一であること
- 使用されている商品・役務:指定商品・指定役務であること
- 使用者が出願人(またはライセンシー)であること
具体的な証拠書類の例
| 状況 | 使える証拠書類(具体例) |
|---|---|
| すでに使用している場合 | ①商標を付けた商品の写真 ②商標を付けたカタログ・パンフレット ③ウェブサイト・SNSの画面の写し(URLだけでなく画面の写しが必須) ④通販サイトの「特定商取引法に基づく表記」のページの写し |
| 使用準備を進めている場合 | ①カタログ・パンフレットの受発注を示す資料(発注書+受注書+デザイン画が必要) ②看板・広告の受発注を示す資料 ③新聞等の報道資料(商標を使用する予定であることが掲載されたもの) ④医薬品の場合:医薬品製造販売承認申請書の写し |
証拠書類の重要な注意点
- ウェブサイト・SNSの場合:URLを記載するだけではNG。画面の写しを必ず提出すること(URL変更・削除で確認できなくなるため)
- 使用準備の場合:「社内でデザイン案を作った」だけではNG。対外的に動き始めていて後戻りが難しい状態(発注済み・報道済み等)が必要
- 商標の同一性:出願商標と使用商標は同一が原則。ゴシック体と明朝体の違い・縦書きと横書きの違い・大文字と小文字の違いはOK。ローマ字とカタカナ・漢字とひらがなはNG
- 証拠書類は鮮明に:文字等がはっきり確認できるものを提出すること
早期審査の申請方法(具体的な手順)

STEP1:商標出願を行う
早期審査の申出は、出願と同時でも、出願後でもいつでも可能です。
ただし、提出が出願から大幅に遅れると審査着手が通常より遅れることがあるため、出願と同時または出願後すぐの提出を推奨します。
STEP2:対象を確認し、事情説明書を作成する
使用する様式は対象によって異なります。
| 対象 | 使用する様式 |
|---|---|
| 対象1 | 様式1(早期審査に関する事情説明書【対象1】) |
| 対象2・対象3 | 様式2(早期審査に関する事情説明書【対象2・対象3】) |
事情説明書には以下の項目を記載します。
- 商標の使用者(出願人、またはライセンシーの場合はその情報)
- 使用に係る商品名・役務名(販売品名ではなく指定商品・役務を記載)
- 商標の使用時期(例:「令和6年5月から使用中」)
- 商標の使用場所(住所またはURL)
- 証拠書類の内容説明
- 手続補正書の提出の有無(補正した場合のみ記載)
- 【対象1のみ】緊急性を要する状況の説明と証拠
STEP3:事情説明書と証拠書類を特許庁に提出する
提出方法は以下の3通りです。急いでいる場合はオンライン提出を推奨します(書面提出は電子化のため選定が1ヶ月程度遅れる場合があります)。
| 提出方法 | 詳細 |
|---|---|
| ①オンライン提出(推奨) | 電子出願ソフトサポートサイトを利用(最も早い) |
| ②特許庁窓口へ直接持参 | 東京都千代田区霞が関3-4-3 特許庁庁舎1階 出願課(平日9時〜17時) |
| ③郵送 | 特許庁長官宛(〒100-8915)封筒に「早期審査に関する事情説明書在中」と記載 |
手数料:不要(書面提出の場合も電子化手数料は不要)
STEP4:選定結果を待つ
特許庁が証拠書類をもとに早期審査の対象とするかどうかを選定します。
早期審査の対象となった場合は通知がなく、そのまま審査が進み最初の審査結果(登録査定または拒絶理由通知)が届きます。
対象とならなかった場合のみ、その理由が通知されます。再申出も可能です。
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早期審査のデメリット・失敗しやすい点

デメリット・失敗しやすい点
- 証拠書類の準備に手間がかかる:単純に「使ってます」と書くだけではなく、①商標・②商品・役務・③使用者の3点が客観的にわかる資料が必要
- 「使用準備」の基準が厳しい:社内でデザイン案を作っただけではNG。対外的に後戻りが難しい状態(発注済み・報道済み)が必要
- 商標の同一性の落とし穴:出願商標と実際に使っている商標がローマ字⇔カタカナ等で異なる場合はNG
- 対象2は全商品・役務の証拠が必要:一部でも証拠がない商品・役務がある場合は、その商品・役務を削除する補正を先に行うことが必要
- 条件に合わせて指定商品・役務を絞りすぎるリスク:早期審査の条件に合わせようとして必要以上に指定商品・役務を限定すると、登録後に守りたい範囲をカバーできなくなることがある
よくある質問(FAQ)
- Q. 早期審査は誰でも使えますか?
- 出願商標をすでに使用している(または使用準備を相当程度進めている)ことが全対象に共通の基本条件です。「急ぎたい」というだけでは通りません。対象1〜3のいずれかに該当し、かつ証拠書類で使用事実を客観的に示せる場合に利用できます。
- Q. 早期審査の特許庁費用はかかりますか?
- 申出自体は無料です。弁理士に依頼する場合は代理人手数料が別途かかります。
- Q. 出願前でも申請できますか?
- 早期審査の申出は出願の日以降いつでもできます。出願前の申出はできません。出願と同時、または出願後速やかに提出することを推奨します。
- Q. 一度却下されたら再申出できますか?
- 対象外となった場合でも、その後要件を満たす状態になった場合は改めて申出を行うことで早期審査の対象となり得ます。先に提出した事情説明書の内容・証拠書類を援用することも可能です。
- Q. ウェブサイトで使用している証拠はURLだけでいいですか?
- URLの記載だけではNGです。URL変更やページ削除で後から確認できなくなるおそれがあるため、必ずウェブサイトの画面の写しも提出してください。
- Q. 対象3の「基準等表示」かどうかはどこで確認できますか?
- 特許庁が提供する「商品・役務サポートツール」(https://tmfast.jpo.go.jp/tmsupport/top.html)で確認できます。類似商品・役務審査基準(基マーク)またはニース分類(Nマーク)がついている商品・役務が対象3の要件を満たします(TマークやMマークは審査では問題ないですが対象3には該当しません)。
「どの対象に該当するか」「証拠書類は何が必要か」「事情説明書の書き方が不安」など、状況に合わせてアドバイスします。
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まとめ

- 早期審査の基本条件:「出願商標をすでに使用している(または使用準備中)」であること。これが全対象に共通
- 対象は3パターン:対象1(一部使用+緊急性)・対象2(全商品に使用)・対象3(一部使用+基準表示)
- 申出は無料、審査結果まで平均約1〜2ヶ月(通常の6.9ヶ月より大幅短縮)
- 証拠書類は「商標・商品役務・使用者」の3点セットで客観的に準備することが必要
- 失敗を防ぐポイント:条件を満たさない申請をしない・指定商品・役務を絞りすぎない・商標の同一性に注意
不安がある場合は、申請前に弁理士に相談して最適なルートを選ぶのが安全です。