中国商標

中国商標と日本商標の違い|先願主義・区分・拒絶の4つの差を弁理士が解説

悩んでいる方
日本で商標登録の経験があるから、中国も同じようなものだろう…。そう思っていると、思わぬところでつまずきます。中国商標は、日本商標と「似ているようで決定的に違う」制度です。どこがどう違うのか、両方を扱う弁理士がわかりやすく解説します。

「日本で商標を取ったことがあるから、中国もだいたい同じ流れでしょう?」――中国商標のご相談で、よくいただく言葉です。確かに、中国も日本と同じニース国際分類を使い、出願→審査→登録という大きな流れも似ています。

しかし、細部には日本の感覚のままだと足をすくわれる「決定的な違い」がいくつもあります。この記事では、中国商標と日本商標の主な違いを、出願実務に効いてくるポイントを中心に整理します。違いを知ることが、中国でブランドを守る第一歩です。

この記事の結論

中国商標と日本商標の主な違いは、(1)中国は「先願主義」が日本以上にシビアで先取りが横行、(2)同じ区分でも「サブクラス」が違えば別物扱い、(3)拒絶理由通知がなくいきなり拒絶査定が出る、(4)外国企業は現地代理人が必須、の4点です。「日本と同じ感覚」で進めると権利に穴が開いたり、対応が間に合わなかったりするため、中国の制度に合わせた設計が欠かせません。

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結論:「似ている」けれど「決定的に違う」4つのポイント

中国商標と日本商標は、制度の枠組みこそ似ていますが、実務上は次のような違いがあります。まずは全体像を表で確認しましょう。

項目 日本 中国
基本原則 先願主義 先願主義(先取りがより深刻)
区分の扱い 類似群コードで判断 サブクラスが違えば原則別物
拒絶時の通知 拒絶理由通知→意見・補正の機会あり いきなり拒絶査定(応答は15日以内)
出願人の制限 本人でも出願可能 外国企業は現地代理人が必須
文字の扱い 日本語が文字として機能 カナ等は「図形」扱い/中国語名が重要

それぞれ、なぜ重要なのかを見ていきます。

違い1:「先願主義」が日本以上にシビア

日本も中国も「先に出願した者が権利を得る」先願主義です。ここは共通しています。しかし中国では、この原則を悪用した第三者による先取り(冒認出願)が横行しているという現実があります。

日本でも他人の商標の先取りは起こり得ますが、中国は商標出願件数が世界最多で、有効な登録件数は数千万件規模に達しています。その中には、他社ブランドを狙って先回り出願し、後で高く売りつけようとする出願も少なくありません。日本で知名度が上がったブランドが、中国進出前にすでに先取りされていた、というケースは枚挙にいとまがありません。

つまり、同じ先願主義でも、「うっかり出願が遅れた」ときのリスクの大きさが日本とはまるで違います。日本での登録は中国には及ばないため、中国でビジネスをするなら、中国でも早めに出願しておくことが不可欠です。

違い2:同じ区分でも「サブクラス」が違えば別物

中国も日本と同じニース国際分類(第1〜45類)を使います。そのため「日本で第25類を取ったから、中国でも第25類を指定すれば同じ」と考えがちですが、ここに大きな落とし穴があります。

中国では、各区分の中がさらに細かい「サブクラス(類似群)」に分かれており、同じ区分内でもサブクラスが違えば、原則として別の商品として扱われます。たとえば衣類を指定しても、サブクラスが異なる帽子や靴下は守られず、他人が同じ商標を別サブクラスで登録できてしまう、ということが起こります。

日本の類似群コードとも体系が異なるため、日本の感覚で商品を指定すると、肝心の商品で保護の穴が開くことがあります。この違いは中国商標で最もつまずきやすいポイントの一つです。サブクラスの詳しい解説は別記事でも扱っていますので、あわせてご覧ください。

違い3:拒絶理由通知がなく、いきなり拒絶査定が出る

手続き面で、特に注意したいのがこの違いです。日本では、審査で問題が見つかると、まず「拒絶理由通知」が届き、意見書や補正で反論・修正する機会が与えられます。いきなり拒絶が確定するわけではありません。

ところが中国では、原則としてこの事前通知がなく、問題があるといきなり「拒絶査定」が出ます。そして、これに不服がある場合の対応(拒絶査定不服審判の請求)は、査定の受領から15日以内という非常に短い期限で、延長も認められません。日本の「まず通知が来てから考えればいい」という感覚でいると、気づいたときには対応期限を過ぎていた、という事態になりかねません。

しかも、中国の商標審査は年々厳しくなっています。近年のデータでは、拒絶査定不服審判に持ち込まれた事件のうち、相当数が全部拒絶のまま維持されており、権利化のハードルは決して低くありません。だからこそ、最初の出願で拒絶されない設計が重要になります。

違い4:外国企業は現地代理人が必須/中国語名も重要

日本では、出願人本人が特許庁に直接出願することもできます。しかし中国では、外国企業・個人は中国の商標局に直接出願できず、必ず中国の現地代理機構(代理人)を通す必要があります。委任状や法人の登記関係書類など、日本とは異なる書類も求められます。

さらに見落とされがちなのが、商標の「表記」の扱いです。中国では、日本語のカタカナ・ひらがなは「文字」ではなく「図形」として扱われます。また、中国の消費者はアルファベットのブランド名を独自の中国語名(当て字や略称)で呼ぶことが多く、その中国語名を第三者に先取りされると、実質的に市場でブランドを乗っ取られた状態になります。英語表記だけでなく、中国語表記の商標もあわせて検討すべき、という点は日本にはない発想です。

「日本と同じ」と思って失敗しやすい点

・「日本で取ったから中国も大丈夫」→ 権利は国ごと。中国は別途出願が必要
・「第◯類で出願したから安心」→ サブクラスが違うと守れない
・「拒絶通知が来てから考える」→ 中国はいきなり拒絶査定、応答は15日以内
・「英語名だけで十分」→ 中国語名を別途取られるリスク

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実務上の注意点――BrandAgentの経験から

日本と中国の両方を扱う立場から、特にお伝えしたいのは「日本の成功体験がかえって油断を生む」という点です。日本で商標登録をスムーズに進めた経験がある方ほど、中国でも同じ感覚で進めてしまい、サブクラスの穴や15日の期限で足をすくわれることがあります。

中国商標は、制度の「形」は日本に似ていても、「中身」は別物と考えて取り組むのが安全です。特に、(1)出願のタイミングを遅らせない、(2)サブクラスを踏まえて区分・商品を設計する、(3)英語名と中国語名の両方を検討する、(4)拒絶時の短い期限に備える、という4点は、日本の感覚だけでは対応しきれません。現地の審査実務を知る専門家と組むことが、結果的に最短ルートになります。

よくある質問(FAQ)

Q. 日本で商標登録しているので、中国でも保護されますよね?
A. いいえ。商標権は国ごとに独立しており、日本の登録は中国には及びません。中国で保護を受けるには、改めて中国で出願・登録する必要があります。

Q. 中国も日本と同じ区分なら、同じ区分を指定すれば同じように守れますか?
A. 区分の番号は共通でも、中国は区分内が「サブクラス」に分かれており、サブクラスが違えば別商品扱いです。日本と同じ指定では穴が開くことがあるため、中国の体系に沿った設計が必要です。

Q. 中国でも拒絶理由通知が来てから対応すればいいですか?
A. いいえ。中国は原則として事前通知がなく、いきなり拒絶査定が出ます。不服がある場合の対応期限は15日以内で延長不可です。最初から拒絶されにくい出願をすることが重要です。

Q. 中国も自分で出願できますか?
A. 外国企業・個人は中国に直接出願できず、必ず現地代理人を通す必要があります。書類も日本と異なるため、専門家を通じた対応が現実的です。

Q. 英語のブランド名だけ登録すれば足りますか?
A. 不十分なことが多いです。中国の消費者が使う中国語名を第三者に取られるリスクがあるため、英語表記とあわせて中国語名の出願もご検討ください。

まとめ:違いを知れば、中国商標は怖くない

中国商標と日本商標は、枠組みは似ていても、先願主義のシビアさ・サブクラス・拒絶査定の即時性・代理人の必須化・中国語名の重要性といった点で決定的に異なります。「日本と同じ」という思い込みこそが、最大のリスクです。

逆に言えば、これらの違いをあらかじめ理解し、中国の制度に合わせて設計すれば、中国商標は決して攻略できないものではありません。大切なのは、日本の感覚を一度脇に置き、中国の実務を知る専門家と進めることです。

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  • この記事を書いた人

叶野徹

弁理士 叶野徹 京都を拠点とする「BrandAgent特許事務所」代表。 これまで累計4,000件以上の商標案件に携わってきた商標・特許の専門家。 プロスポーツチーム『滋賀レイラックFC』様の公式マスコット(うーまくん)の商標登録を担当するなど、複雑なキャラクターIPやAmazonブランド申請のためのロゴの権利保護において高い実績を持つ。 最新のAI技術と豊富な実務経験を掛け合わせ、京都・滋賀をはじめ全国の経営者様のブランドを最短ルートで守る盾となります。

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