中国商標

中国における商標登録の手続きとポイントを弁理士が解説

悩んでいる方

中国で登録されている商標の調べ方を知りたいなあ。

あと中国で出願する場合に失敗したくないから注意点や申請から費用まで教えてほしい。

費用は安くおさえたい。

こうした疑問に答えます。

中国市場でビジネスを行う企業にとって、商標登録は非常に重要な要素です。

しかし、中国の商標登録制度は日本とは異なり、手続きやポイントについて知らないとトラブルが生じることもあります。

ここでは、中国における商標登録の手続きとポイントについて解説します。

 

本内容は、わかりづらい中国の商標登録出願制度のポイントを簡単に理解することができます。

記事の信頼性

  • 関西の特許事務所と大手法律事務所と大手企業知財部で合計10年ほどの知財実務を積んできました。
  • 特許サポート件数1,000件以上、商標申請代行件数2,000件以上の弁理士です。
  • 京都で特許事務所BrandAgentを開業しています。
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  • 初心者の方でもわかりやすいように記事を書くことが得意です。

本記事の構成

1.中国の商標登録制度とは?

2.中国の商標登録に必要な書類とは?

3.中国の商標登録の手続きの流れは?

4.中国の商標登録にかかる費用とは?

5.中国の商標登録後の対応とは?

中国の商標登録制度とは?

中国の商標登録制度は、商標法に基づいて行われています。

中国の商標登録制度は、中国で商標登録された商標が優先的に保護される「先登録主義」を採用しています。

商標登録をするには、まず商標の種類(文字商標、図形商標、組合せ商標、三次元商標など)を決定します。

次に、中国国家知識産権局に商標登録申請を行い、審査を受ける必要があります。

商標登録申請には、申請書類の提出、審査請求費用の支払いなどが必要となります。

商標登録の有効期限は10年間で、有効期限が切れた場合は更新を行う必要があります。

また、商標の権利を侵害された場合は、知識産権局に対して商標の無効を申請することができます。

以上のように、中国の商標登録制度は、商標の種類や登録手続き、有効期限や無効申請などのポイントがあります。

企業が中国市場でビジネスを展開する場合には、商標登録について十分に理解し、正しく手続きを行うことが重要です。

 

中国の商標登録に必要な書類とは?

中国商標登録出願をする場合、中国弁理士に依頼することがほとんどです。

書類の準備については、日本の商標出願の場合と大きく異なることに注意してください。

必要な書類は以下のとおりです。

  • 出願人の中国語と英語表記による住所・氏名(名称)
  • 商標に使用する商品・サービスとその区分
  • 商標
  • 委任状
  • 登記簿謄本(個人の場合はパスポートなど)
  • 優先権証明書(優先権を主張する場合)

中国商標出願では、④委任状と⑤登記簿謄本が必要であることに注意してください。

また、中国では、必ずしも特定の商品・サービスの区分が、日本と同様であるとは限らないことに注意してください。

また、日本の商標制度のように、標準文字制度は中国にはないことも注意してください。

中国の商標登録の手続きの流れは?

中国商標の登録出願のステップは以下のとおりです。

  • ①商標調査
  • ②書類の準備
  • ③中国代理人へ出願依頼
  • ④審査
  • ⑤出願公告(3か月)
  • ⑥登録

日本の商標出願制度と異なる点をまとめると以下のとおりです。

 日本の商標出願との相違点

 ①日本のように拒絶理由通知が通知されることなく拒絶査定が通知される点

 ②実体審査により拒絶理由がなくても登録査定にならず、異議申し立て期間(広告期間)がある点

 ③登録時に日本のように登録納付料は不要である点

では各ステップ①~⑥について解説していきます。

①出願

中国の商標登録出願は、日本と同様に、登録したい商標と、商標に使用する商品・サービス(役務)名とその区分を指定します。

注意すべき点は、中国では、必ずしも特定の商品・サービスの区分が、日本と同様であるとは限らない点と標準文字制度が存在しない点です。

また、ひらがな・カタカナの商標を登録する場合はロゴ商標としてあつかわれることに注意してください。

ひらがな・カタカナの商標を中国語(簡体字)で表現することも検討する必要があります。

中国のパクリ問題に対抗するために、商標が英語で表記されていても、中国語で表現した商標も登録することを検討した方がよいです。

②方式審査

方式審査では、出願書類に形式的な不備がないかどうか審査されます。

審査が通れば、「受理通知書」が発行され、審査に通らなければ商標局は出願人に補正を行うように通知します。

補正は、通知を受領してから30日以内にする必要があることに注意してください。

また、補正は複数回行うことは原則認められず、審査官の要求に従わない場合は出願の不受理が決定されてしまうことにも注意してください。

③実体審査

実体審査では、先願商標と同一・類似であるかといった類否判断など、日本と同様の不登録理由があるかどうか審査されます。

実体審査での日本との大きな相違点は、日本では、不登録理由があった場合、拒絶理由が通知され、意見書・補正書を提出する応答の機会が与えられるのに対し、中国では応答の機会が与えられることなく、拒絶査定が通知される点です。

拒絶査定が通知されると、商標を登録するためには、拒絶査定の通知から15日以内に不服審判を請求する必要があることに注意してください。

通知から15日以内とシビアですし、応答機会も与えられないことから、あらかじめしっかりと先願調査をしておくことをおすすめします。

また、実体審査の結果では、指定した区分のうち一部の区分のみ認められない場合、一部拒絶査定が通知されます。

この場合も、不服であると不服審判を請求する必要がありますが、承服する場合は後述する出願公告を経てのこりの区分について商標登録が認められます。

④出願公告

日本では、実体審査の結果、不登録理由がないと認められると登録査定が通知されますが、中国では登録査定の前に、出願公告がされます。

出願公告の期間は3か月でして、この間は第3者から登録の異議を申し立てる期間になります。

出願公告は日本にはない制度ですので注意してください。

⑤登録公告

出願公告の3か月間に異議申し立てがない場合、異議申し立てが成立しない場合には、商標登録証が交付されます。

日本では、登録査定のあとに登録料を納付する必要がありますが、中国では登録納付料は不要であることに注意してください。

⑥更新

日本と同様、中国でも商標登録の存続期間(10年間)が満了すると更新することできます。

更新料は1区分あたり約7,840円でして、日本と比べるととても格安です。

中国と日本の商標出願から登録までの流れの対比

以上のとおり、中国と日本の商標出願から登録までの流れを対比すると、3つの大きな相違点があることに注意してください。

 日本の商標出願との相違点

 ①日本のように拒絶理由通知が通知されることなく拒絶査定が通知される点

 ②実体審査により拒絶理由がなくても登録査定にならず、異議申し立て期間(広告期間)がある点

 ③登録時に日本のように登録納付料は不要である点

特に重要なのが①でして、中国商標出願の場合は、確実に商標登録できるようにしっかりと調査をしておくことをおすすめです。

日本のように意見書・補正書を提出する機会がないため、登録査定の可能性も低くなります。

また、中国の商標制度では公告期間(異議申し立て期間)がありますので、日本と比べると長くかかります。

日本の場合、1年かかりますが、中国ではさらに15~18か月ほどかかることを目安にしておくことをおすすめします。

中国の商標登録のための検索・調べ方・調査方法

中国で商標出願をする場合、確実に商標登録できるために、まずは商標と同一または類似の商標がすでに中国で登録されているかどうかを確認しましょう。

確認するために、まず中国商標局のサイトにアクセスして調べます。

 国家知識産権局商標局 中国商标网」(日本語「中国商標網」)のウェブサイト(http://sbj.cnipa.gov.cn/

中国語ですが、以下の記事の手順に従ってやればそれほど難しくはありません。

以下に解説していきます。

①中国商標登録の検索に中国商標局(通称「中国商標網」)のデータベースを利用しよう!

中国商標登録を無料で検索したり調査するツールとして、中国商標局のデータベース(「中国商標網」)を利用することがおすすめです。

 中国商標網は日本でいうと、特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)に相当します。

もしJ-PlatPatを使って商標の検索・調査をした経験があるなら中国商標網を使った検索もそれほど難しくないでしょう。

ただし、知らないと失敗しやすい相違点もありますので以下に解説していきます。

②中国商標網を使った中国商標登録の検索・調べ方

中国商標網のデータベースを使うとき、以下の3~4つの項目を入力すればOKです。

とても簡単ですので、以下にくわしく見てみます。

国際分類

中国商標網のデータベースを使うとき、以下の3~4つの項目を入力すればOKです。

とても簡単ですので、以下にくわしく見てみます。

類似群

中国にも日本と同じく類似群コードがあります。

日本における類似群コードとは、各商品名・役務(サービス)名に付けられた、数字とアルファベットの組み合わせからなる5桁のコードを言います(参考:日本における「類似群コード」について

 類似群コードは、商品・役務(サービス)の類似性を判断する指標となります。

(先願商標と類似の商標でも、指定商品・役務が非類似であれば商標登録できることに注意してください。)

 

ここで、日本と中国では類似群の制度は異なるものですので注意してください。

日本の類似群コードは数字とアルファベットの組み合わせからなる5桁のコードですが、中国の類似群は数字のみからなる3~4桁のコードです。

各商品・サービスの類似群は日中商標権情報センターの中国商標の分類表の分類コードに記載のとおりです。

なお、中国商標網を使った検索では、類似群の記入は任意であることにも注意してください。

査詢方式

査詢方式とは検索方式を言います。

検索方式は、以下の6つから選択できます。

  • 「汉字(漢字)」
  • 「拼音(ピンイン)」
  • 「英文(英語)」
  • 「数字」
  • 「字头(頭文字)」(半角2文字まで)
  • 「图形(図形)」

ここで、漢字を選択する場合、簡体字で入力する必要があることに注意してください。

簡体字やピンインへの変換は、Pinconvが便利でして、左のサイトからダウンロードできます。

使い方は後述します。

商標名称

商標名称は登録したい商標名を入力します。

査詢方式に「汉字(漢字)」を選択した場合

商標名を簡体字に変換して入力する。

(例)「無印良品」➤「无印良品」

②「拼音(ピンイン)」

商標名をピンインに変換して入力する。

(例)「無印良品」➤「wú yìn liáng pǐn」

③「英文(英語)」

商標名(英語・ローマ字)を入力する。

(例)「Panasonic」

「数字」

20文字までの数字を入力する。

「字头(頭文字)」(半角2文字まで)

半角2文字まで入力する。

「图形(図形)」

ウィーン分類(図形分類)に従って検索する。

中国商標登録の検索結果の見方

例えば、区分を第45類(知的財産権の権利化業務)、商標名に「BrandAgent」を指定して検索してみます。

あとは、「商標権が存在するかどうか」、検索結果で表示された商標が似ているかどうかを外観・称呼・観念の観点から比較検討して商標登録出願すべきかどうかを判断すればOKです。

③中国商標登録の検索・調査のための便利なツールを紹介

中国商標登録の検索・調査のために、商標を漢字(簡体字)に変換したり、ピンインに変換したりする必要があります。

簡体字についてはGoogle翻訳でもできますが、ピンインへの変換はGoogle翻訳ではできません。

そこで、漢字を簡体字やピンインへ簡単に変換するツール(無料)を紹介しておきます。

ツールはPinconvが便利でして、左のサイトからダウンロードできます。

あとは、①文字を入力して、②ピンイン・簡体字へ変換するために「P」「C」をクリックすればOKです。

とても簡単ですのでおすすめです。

また、中国商標登録検索・調査のツールとして「モズレン」を利用すれば簡単にできちゃいます。

中国商標網を利用する場合10回ほどの操作が必要なものが1回でできたりしてとても便利です。

ただし有料ですが月額1,200円程度で利用できるのでぶっちゃけお得です。

「モズレン」について筆者も利用させてもらい感想を書いていますのでこちらの記事を参考にいただければと思います。

 

中国商標登録にかかる費用とは?

特許事務所に依頼した場合、中国商標登録にかかる費用はどれくらいかかるものでしょうか。

 実は中国商標局への手数料はとても安いです。

項目 費用
商標出願(指定商品・サービスの数が10個以下) 300(CNY)(約4,600円)/1区分
追加手数料(指定商品・サービスの数が10を超える場合) 30(CNY)(約460円)/項目
更新申請 500(CNY)(約7,500円)/1区分

日本の場合、商標出願手数料は12,000円(区分が1増えるごとに+8,400円)でして、登録納付料は17,200円(分割納付の場合。)かかります。

一方、中国では商標出願手数料は約4,600円(区分が1増えるごとに+4,600円)でして、登録納付料は0円です。

つまり、中国では、日本と比較すると約23,800円ほど安く登録することができます。

ただし、中国弁理士に依頼することになるため、弁理士手数料がかかることに注意してください。

弁理士手数料は各特許事務所によってさまざまですが、中国代理人の手数料も含めるため高めの傾向にあります。

①中国商標登録出願の庁費用は約4,665円

中国商標登録出願の庁費用は約4,665円です(1区分あたり)。

庁費用と言うのは、中国商標局(日本で言う特許庁)に支払う手数料です。

日本商標登録出願の庁費用は12,000円ですから(1区分あたり)、中国商標登録出願の庁費用は相当安いことがわかると思います。

もしあなたが自分で中国商標登録出願をする場合は、出願料金はこの料金ですませることができますが、日本の代理人に申請する場合は、さらに費用が必要です。

日本の代理人に依頼すると、代理人と現地の弁理士が連携してあなたの商標の出願を代行してくれます。

この場合、代理人だけでなく、現地の弁理士への手数料もかかるため費用が日本の場合よりも高くなることに注意してください。

②中国商標登録出願が多区分の場合の費用と注意すべきこと

中国商標登録出願が多区分の場合、区分が1つ増えるごとに約4,665円の庁費用が発生します。

区分が1つ増えるごとに区分増加額が発生することは日本のケースと同じです。

区分とは、商標に使用する商品・役務(サービス)がどの類に属するかを表すものでして第1類~第45類まであります。

区分を2つ指定する場合は9,330円の庁費用が発生します。

日本の場合には区分が1つ増えるごとに8,600円の庁費用が発生しますので、日本と比べると区分増加額は安く抑えられます。

ただし、中国の出願庁費用には、日本と異なる制度があることに注意してください。

それは、1つの区分で指定できる商品(役務)の項目数が10を超えると、超えた項目1つに対し約466円の庁費用が発生することです。

例えば、1つの区分に指定商品の項目数を15個指定した場合は、約6,695円(4,665+466×5円)の庁費用が発生します。

このため、日本と同様に、指定商品の項目を多く書きすぎてしまうと思わぬ費用が発生してしまう場合があります。

 代理人と相談しながら指定商品・役務の項目数を整理することをおすすめします。

③中国商標登録出願の登録料納付は不要である

以上のとおり、中国商標登録出願の手数料は日本に比べると安くおさえることができます。

さらに、中国商標制度では、日本とは異なり、登録料納付が不要ですので登録後に費用が発生することはありません。

日本の場合、登録時に登録納付料として1区分あたり32,900円かかりますが、中国の場合では登録納付料は無料です。

このように、中国では、商標出願にかかる費用は安いため、年々商標出願の件数は増えています。

2019年度の中国への商標登録出願の件数は約783万件。(日本の商標登録出願の件数は約16万件ほどです)。

およそ1日で21,000件ほど出願されている計算です。

たった1日延びただけであなたの商標がすでに登録されてしまうリスクを負うことになります。

このため、中国商標登録はすぐに出願することをおすすめします。

④中国商標登録出願の費用の半額を特許庁に補助してもらうには?

最後に、費用を安くするコツとして、特許庁の補助事業を知っておくことが重要です。

特許庁が中小企業の方向けに商標登録出願の費用の半額を補助する事業を行っているので紹介しておきます。

>>外国出願に要する費用の半額を補助します

要件は以下のとおり。

①応募時にすでに日本国特許庁に商標出願済みであり、同内容の商標を中国出願する予定であること

②先行調査の結果、中国での登録可能性が否定されていないこと

③中国で権利が成立した場合などにおいて、「権利を活用した事業展開を計画している」または「中国における冒認出願(悪意のある第三者による先取り出願)対策の意思を有している」こと

④外国出願に必要な資金能力・資金計画を有していること

ただし、公募の時期が限定されていることにご注意ください(例年5~7月)

中国の商標登録後の対応とは?

中国の商標制度では、日本と同様、存続期間は10年間でして、期間が満了する12か月以内に更新の申請をする必要があります。

中国では、商標の登録納付料は無料ですが、更新するときに費用が発生することに注意してください。

とはいっても日本と比べると更新に必要な費用は安くすみます。

更新の費用は1区分あたり約7,840円かかります。

日本の場合、更新料は1区分あたり43,600円かかるので相当安いことがわかると思います。

なお、これまでは更新の費用は約15,000円ほどでしたが、2019年7月1日から減額になりました。

ただし、代理人に依頼する場合には更新手数料が発生することに注意してください。

 

7.中国商標登録制度のまとめ

以上、中国商標の登録出願について解説しました。

もしあなたが中国でビジネスを始めるのであれば、早いうちに商標出願をすることをおすすめします。

まずはあなたの商標がすでに中国で出願・登録されていないか調査をはじめましょう。

特許事務所BrandAgent®では現在、調査は無料でも引き受けていますのでお早めにどうぞ。

またご相談も受け付けています。

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    • この記事を書いた人

    叶野徹

    京都の特許事務所BrandAgentを運営している弁理士です。関西の特許事務所→大手法律事務所→大手企業知財部→BrandAgentを設立。特許1,000件以上、商標2,000件以上をこれまでにサポートしています。趣味は温泉・サウナです。

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