中国商標

中国で商標を先取りされたらどうなる?取り戻す方法と費用を弁理士が解説

悩んでいる方
中国に進出しようとしたら、自社のブランドがすでに他人に商標登録されていた…。「先に取り戻せばいい」と思っていませんか?実はそれ、想像以上に大変なんです。中国で商標を先取りされたら何が起きるのか、弁理士がわかりやすく解説します。

中国でのビジネスを考えている事業者の方から、「自社の商標が中国で勝手に登録されていた」というご相談を数多くいただきます。これは「冒認出願(ぼうにんしゅつがん)」と呼ばれる、第三者によるブランドの先取り行為です。

厄介なのは、一度先取りされてしまうと、取り戻すのに数年がかりの争いと多額の費用がかかり、しかも必ず取り戻せるとは限らないという点です。この記事では、中国で商標を先取りされると具体的に何が起きるのか、なぜ取り戻すのが難しいのか、そして被害を防ぐにはどうすればいいのかを、実例を交えて解説します。

この記事の結論

中国で商標を先取りされると、(1)自社製品を中国で売れなくなる、(2)逆に「侵害者」として訴えられる、(3)取り戻すのに数年と高額な費用がかかる、という深刻な事態に陥ります。しかも、取り戻せる保証はありません。唯一にして最善の対策は、被害に遭う前に自社で中国の商標を取得しておくこと。これに尽きます。

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結論:中国で商標を先取りされると「自社ブランドが他人のもの」になる

中国で商標を先取りされると、具体的には次のような事態が起こります。

起こること 内容
自社製品を販売できない 自社ブランド名なのに、中国国内で商品を販売・宣伝できなくなる。
「侵害者」として訴えられる 先取りした相手から、逆に商標権侵害で警告・提訴されるおそれがある。
商品が差し止め・撤去される 展示会への出品や店頭販売が止められ、税関で輸出入を差し止められることも。
高額での買い取りを迫られる 商標を「返してほしければ買え」と、法外な金額を要求されるケースがある。

つまり、自分が育ててきたブランドであるにもかかわらず、中国では「他人の商標」として扱われ、自社が排除される立場に立たされてしまうのです。これが冒認出願の最も恐ろしい点です。

なぜ先取りが起きるのか――中国の「先願主義」

そもそも、なぜ他人が自社のブランドを勝手に登録できてしまうのでしょうか。その理由は、中国が「先願主義」を採用しているからです。

先願主義とは、「先に使っていた人」ではなく「先に出願した人」が原則として権利を得る制度です。日本で何十年使ってきた有名ブランドであっても、中国で先に第三者が出願・登録してしまえば、その商標は中国ではその第三者のものになります。商標権は国ごとに独立しているため、日本での登録は中国には及びません。

中国では商標局に支払う庁費用が低額であることもあり、他社ブランドや人気キャラクターを狙って先回り出願し、不当な利益を得ようとする者が後を絶ちません。日本での知名度が上がったブランドほど、狙われやすいという現実があります。

先取りされやすいケース

・日本で人気が出てきたブランド・商品名
・展示会やSNSで中国の事業者の目に触れたブランド
・OEM委託先や取引先にブランド名を伝えた後
・「まだ中国進出していないから大丈夫」と出願を後回しにしているブランド

実例:あの有名キャラクターも先取りされていた

冒認出願は、決して中小企業だけの問題ではありません。誰もが知る有名コンテンツでさえ被害に遭っています。

その代表例が、人気漫画「クレヨンしんちゃん」をめぐる事件です。出版元の双葉社が中国でキャラクター商品を販売したところ、すでに中国企業が「蝋筆小新(クレヨンしんちゃんの中国語表記)」を商標登録していたため、本家であるはずの双葉社の商品が「侵害品」として扱われ、撤去される事態となりました。双葉社は登録の無効を求めて争いましたが、登録から5年が経過していたこと(除斥期間)などが壁となり、商標の取り消しは認められず、最終的に決着まで提訴から実に8年もの歳月を要しました。

本家のブランドが「偽物扱い」され、自社製品を売れなくなる――。この事件は、中国における先取り問題の深刻さと、取り戻すことの難しさを象徴しています。資金力のある大企業でさえこうなのですから、中小企業や個人事業主にとって被害の重さは計り知れません。

取り戻すのが難しい理由――先取りされた後の対抗手段

では、先取りされてしまった場合、取り戻す手段はあるのでしょうか。法的な手段としては、主に次の4つがあります。

手段 内容と難しさ
異議申立 出願公告から3か月以内が期限。気づいた時には過ぎていることが多い。
無効宣告請求 登録後に無効を請求。原則として登録から5年の除斥期間があり、悪意の立証も必要。
不使用取消請求 相手が3年間使っていなければ取消可能。だが相手が使用していると使えない。
交渉による買い取り 最も確実だが、相手の言い値になりがちで高額化しやすい。

一見すると手段は揃っているように見えます。しかし実務上は、どれも高いハードルがあります。異議申立には短い期限があり、無効宣告請求では「相手が著名商標を悪意で先取りした」ことや「不正な手段で登録した」ことの立証が求められ、これがなかなか難しいのです。不使用取消請求も、相手が形だけでも使用していれば成立しません。

結局、確実に取り戻すには交渉による買い取りに頼らざるを得ないことも多く、その場合は相手の言い値で高額な金銭を支払うことになりがちです。いずれの手段を取るにせよ、中国の現地代理人を通じた専門的な対応が必須で、年単位の時間と相応の費用がかかります。「取り戻せばいい」という考えが、いかに甘いかがお分かりいただけるはずです。

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実務上の注意点――BrandAgentの経験から

当事務所がこれまで中国商標案件に携わってきた中で、特にお伝えしたい実務上のポイントをまとめます。

第一に、「中国進出が決まってから出願する」では遅いということです。進出を検討し始めた段階、あるいは商品が日本で話題になり始めた段階で、すでに先取りリスクは高まっています。出願のタイミングは「早すぎる」ということがありません。

第二に、漢字(簡体字)での商標も併せて検討すべきという点です。中国の消費者は、アルファベットや日本語のブランド名を独自の中国語名で呼ぶことが少なくありません。その中国語名を第三者に先取りされると、せっかくアルファベットの商標を押さえても、実質的に市場で別名が出回ってしまいます。英語表記だけでなく、中国語表記の商標も視野に入れることが重要です。

第三に、区分の選び方が日本と異なる点です。中国では商品・サービスの区分(類似群)の考え方が日本と必ずしも一致せず、押さえるべき区分を見誤ると、肝心の分野で保護が及ばないことがあります。さらに、外国企業は中国に直接出願できず、必ず現地代理人を通す必要があり、委任状や登記簿謄本など日本とは異なる書類も求められます。こうした実務は、日本の制度の感覚だけで進めると思わぬ抜け漏れが生じます。

事前に中国で商標登録しておくメリット

・第三者による先取り(冒認出願)を未然に防げる
・万が一模倣品が出ても、行政摘発・訴訟・ECサイトのリンク削除で対抗できる
・「数年がかりで取り戻す」高額なコストとリスクを回避できる
・安心して中国市場での販売・宣伝・OEM委託を進められる

よくある質問(FAQ)

Q. まだ中国に進出していなくても、商標を取っておくべきですか?
A. はい、強くおすすめします。むしろ進出前こそ危険です。日本で知名度が上がった段階で先取りされるケースが多く、「進出してから」では手遅れになりがちです。

Q. 日本で商標登録しているので、中国でも保護されますよね?
A. いいえ、保護されません。商標権は国ごとに独立しており、日本での登録は中国には及びません。中国で保護を受けるには、改めて中国で商標登録する必要があります。

Q. 先取りされてしまいました。もう打つ手はないのでしょうか?
A. 異議申立・無効宣告請求・不使用取消請求・交渉といった手段はあります。ただし期限や立証のハードルが高く、ケースごとに勝算が大きく異なります。まずは早急に現状を専門家にご相談ください。対応が早いほど取り得る選択肢が増えます。

Q. 中国の商標は自分で出願できますか?
A. 外国企業・個人は中国に直接出願できず、必ず中国の現地代理人を通す必要があります。書類の準備や区分の選定も日本とは異なるため、専門家を通じた対応が現実的です。

Q. 中国語の商標も取った方がいいですか?
A. はい。中国の消費者が使う中国語名を第三者に押さえられるリスクがあるため、英語表記とあわせて中国語(簡体字)の商標もご検討されることをおすすめします。

まとめ:先取りされる前に、中国で商標を押さえる

中国で商標を先取りされると、自社ブランドが他人のものになり、販売停止・侵害提訴・高額な買い取り要求といった深刻な事態に陥ります。取り戻す手段はあるものの、期限や立証のハードルが高く、数年がかりの争いと多額の費用を覚悟しなければなりません。あの「クレヨンしんちゃん」でさえ8年を要したのです。

だからこそ、最善の策は「先取りされる前に、自社で中国の商標を取得しておくこと」です。中国の出願は先願主義・現地代理人の必須化・区分の違いなど、日本とは勝手が大きく異なり、自力で進めるのは簡単ではありません。だからこそ、経験のある専門家と組むことが、確実なブランド保護への近道になります。

特許事務所BrandAgentは、中国の現地代理人と連携し、中国での商標出願・冒認対策を数多くサポートしてまいりました。「中国進出を考えているが商標が不安」「すでに先取りされているかもしれない」といったお悩みがあれば、お早めにご相談ください。これまで累計4,000件超、2,000件以上の商標出願をサポートしてきた実績をもとに、御社の状況に合わせた最適な対応をご提案します。中国商標出願をご検討中の方は、BrandAgentまでお気軽にご相談ください。

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  • この記事を書いた人

叶野徹

弁理士 叶野徹 京都を拠点とする「BrandAgent特許事務所」代表。 これまで累計4,000件以上の商標案件に携わってきた商標・特許の専門家。 プロスポーツチーム『滋賀レイラックFC』様の公式マスコット(うーまくん)の商標登録を担当するなど、複雑なキャラクターIPやAmazonブランド申請のためのロゴの権利保護において高い実績を持つ。 最新のAI技術と豊富な実務経験を掛け合わせ、京都・滋賀をはじめ全国の経営者様のブランドを最短ルートで守る盾となります。

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