
商標出願したら「3条違反」で拒絶された…これって何?
識別力がないって、どういう意味?
普通の言葉や説明的な名前は、やっぱり登録できないの?
こうした疑問に、弁理士がわかりやすく解説します。
商標出願でよく出てくる拒絶理由の一つが、
商標法3条
です。
特許庁の審査基準では、商標法3条1項各号が識別力の観点から登録できない商標を定めており、普通名称、慣用商標、品質表示、ありふれた氏名・名称、極めて簡単でありふれた標章などが列挙されています。
簡単に言うと、
「その商標が、自分の商品・サービスを他人のものと区別する目印として機能していないなら、原則として登録できない」
というルールです。
この記事では、
商標法3条の基本
↓
1号〜6号それぞれの意味と具体例(審査基準より)
↓
3条2項(使用による識別力)の考え方と証拠
↓
実務上の対応
の順に解説します。
関連ページ
拒絶理由通知とは?
商標法4条1項11号とは?
商標の無料相談はこちら
- 典型例:普通名称、慣用商標、品質・産地表示、ありふれた氏名、簡単すぎる標章
- 理由:誰でも使うべき表示を一人に独占させるべきではないから
- 例外:使用の結果、識別力を獲得した場合は3条2項で登録できることがある
「いい名前」でも、商標法上は登録しにくいことがあります。重要なのは"ブランドとして識別力があるか"です。

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商標法3条とは?識別力が必要な理由

商標法3条は、商標登録の基本要件として「自他商品・役務識別力」が必要であることを定めています。
商標とは、事業者が自己の取り扱う商品・サービスを他人のものと区別するために使うマークです。そのため、特許庁の案内でも、「自己と他人の商品・役務を区別することができないもの」は登録できないと明記されています。
識別力がない商標がなぜ登録できないのか、制度趣旨を押さえると理解しやすくなります。
なぜ識別力のない商標は登録できないのか
たとえば「商品の産地や品質をそのまま説明する言葉」「ありふれた名称」「一般的な表示」を一人に独占させてしまうと、他の事業者が困ります。
- リンゴに「APPLE」
- 甘い菓子に「SWEET」
- 京都の菓子に「京都菓子」
- 指定商品「アルミニウム」に「アルミ」
このような表示を一人に独占させるのは不適切です。「みんなが使うべき言葉は、原則として誰でも使えるままにしておく」というのが商標法3条の役割です。
なお、本条各号に該当するか否かの判断時期は査定時です(拒絶査定不服審判請求がなされた場合は審決時)。
この記事でわかること
- 商標法3条とは何か
- 1号〜6号それぞれの意味と具体例
- 3条2項(使用による識別力)の考え方
- 3条2項が認められるための証拠とハードル
- 拒絶されたときの対応方法
商標法3条1項 各号の内容と具体例

特許庁の審査基準(商標審査基準)をもとに、1号〜6号の内容と代表的な例を整理します。
1号:普通名称(商標法3条1項1号)
その商品・役務の「普通名称」を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標です。
「普通名称」とは、取引業界においてその商品・役務の一般的名称であると認識されるに至っているもので、略称・俗称も含まれます。また、「普通に用いられる方法」とは、書体や全体の構成等が特殊な態様でないものをいいます。
| 指定商品・役務 | 登録できない例 |
|---|---|
| アルミニウム | 「アルミニウム」「アルミ」 |
2号:慣用商標(商標法3条1項2号)
同業者間において一般的に使用されるに至った結果、自己の商品・役務と他人のものとを識別できなくなった商標です。
| 指定商品・役務 | 登録できない例 |
|---|---|
| 清酒 | 「正宗」 |
| 自動車の部品・附属品 | 「純正」「純正部品」 |
| 宿泊施設の提供 | 「観光ホテル」 |
| 婚礼の執行(色彩のみ) | 「赤色及び白色の組合せ」 |
3号:産地・品質等の表示(商標法3条1項3号)
実務で最も多く問題になる号です。商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状、生産・使用の方法・時期などを普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標です。
特許庁が示す主な例:
| 種類 | 指定商品・役務 | 登録できない例 |
|---|---|---|
| 産地・販売地 | 菓子 | 「東京」 |
| 品質 | シャツ | 「特別仕立」 |
| 品質(内容) | 書籍 | 「商標法」「小説集」 |
| 役務の提供場所 | 飲食物の提供 | 「東京銀座」 |
| 役務の質 | 医業 | 「外科」 |
審査基準では、商標が「コクナール」「スグレータ」「うまーい」のように長音符号を用いて表示されている場合でも、長音符号を除いて考察して品質等の表示と認められるときは、原則として本号に該当すると判断されます。また、商品が「通常有する色彩」のみからなる商標も本号に該当します(例:商品「木炭」に「黒色」)。
4号:ありふれた氏又は名称(商標法3条1項4号)
同種の氏・名称が多数存在するような「ありふれた氏又は名称」を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標です。
| 登録できない例 | 補足 |
|---|---|
| 山田、スズキ、WATANABE | ありふれた氏 |
| 田中屋、佐藤商店 | ありふれた氏+「屋」「商店」等 |
| 東京工業株式会社 | 地理的名称+業種名+会社種類名 |
審査基準では、著名な地理的名称(「日本」「東京」「フランス」等)、ありふれた氏、業種名(「工業」「製薬」「運輸」等)などを結合したものに、商号や屋号に慣用的に付される文字(「商店」「堂」「商会」等)や会社種類名(「株式会社」「有限会社」等)を結合したものも、原則として「ありふれた名称」に該当すると判断されます。
5号:極めて簡単でありふれた標章(商標法3条1項5号)
構成が極めて簡単で、かつ一般的に使用されている標章のみからなる商標です。
| 種類 | 該当する例 | 該当しない例 |
|---|---|---|
| 数字 | 数字は原則として該当 | — |
| ローマ字 | 1字または2字からなるもの、「A2」「AB2」等 | 2字を「&」で連結したもの、モノグラム表示 |
| 仮名文字 | 1字、ローマ字1字の音を表示したもの | ローマ字2字の音を表示したもの(原則) |
| 図形 | 1本の直線・波線、△・□・○・◇等の輪郭 | 特殊な態様で表されたもの |
| 立体的形状 | 球・立方体・円柱・三角柱等 | — |
| 音商標 | 単音やこれに準ずる極めて短い音 | — |
6号:その他、需要者が何人かの業務に係るものと認識できない商標(商標法3条1項6号)
1号〜5号に当てはまらなくても、識別力がない商標を包括的に規定する号です。審査基準では以下が6号に該当すると明示されています。
6号に該当する主な例(審査基準より)
- 宣伝広告・キャッチフレーズ:商品・役務の宣伝広告や企業理念・経営方針等を普通に表示したものとしてのみ認識させる標章(例:商品の特性や優位性を記述するもの、一般的に使用される語句からなるもの)
- 単位等の表示:「メートル」「グラム」「Net」「Gross」等の数量表示として認識される標章
- 元号:元号として認識されるにすぎない場合(例:会社の創立時期・商品の製造時期等として一般的に用いられる元号)
- 地理的名称:事業者の設立地・事業所所在地、指定商品の仕向け地等を表す国内外の地理的名称として認識される場合
- 地模様:模様的に連続反復する図形等により構成される、単なる地模様として認識される場合
- 店舗・事業所の形状:立体商標について、指定商品・役務を取り扱う店舗等の形状にすぎないと認識される場合(移動販売車両・観光車両・旅客機・客船の形状を含む)
- 店名として多数使用:指定役務において店名として多数使用されていることが明らかな場合(例:飲食業での「さくら」「愛」「ひまわり」、カフェでの「オリーブ」「フレンド」)
- 色彩のみからなる商標:3条1項2号・3号以外は原則として6号に該当
- 識別力のない音商標:自然音を認識させる音、楽曲としてのみ認識される音、役務の提供にあたり通常発する音(例:「焼き肉の提供」での「ジューという肉の焼ける音」)等
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3条と4条1項11号の違い

ここはよく混同されるポイントです。
| 条文 | 問題になること | イメージ |
|---|---|---|
| 商標法3条 | その名前自体に識別力があるか | 「ブランドの目印として弱い」 |
| 商標法4条1項11号 | 識別力はあるとして、先行登録商標とぶつかるか | 「先に似た商標がある」 |
3条は「名前そのものの問題」、4条11号は「先行商標との関係の問題」と理解すると整理しやすいです。
3条2項:使用による識別力の獲得

ここが重要な例外です。
商標法3条2項では、3条1項3号〜5号に該当する商標であっても、「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるもの」については登録を受けることができると定めています。
特許庁が示す登録事例としては、指定商品「メロン」について「夕張メロン」が挙げられています。
3条2項が認められるための要件(審査基準より)
「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるもの」とは、何人かの出所表示として、その商品・役務の需要者の間で全国的に認識されているものをいいます。
| 考慮事由 | 具体的な内容 |
|---|---|
| ① 出願商標の構成・態様 | 出願商標と使用商標の同一性 |
| ② 使用状況 | 使用態様、使用数量(生産数・販売数等)、使用期間、使用地域 |
| ③ 広告宣伝 | 広告の方法、期間、地域、規模 |
| ④ 第三者の使用状況 | 出願人以外による同一・類似標章の使用の有無・状況 |
| ⑤ 取引の実情 | 商品・役務の性質その他の取引の実情 |
| ⑥ アンケート | 需要者の商標認識度を調査したアンケートの結果 |
商標の同一性について(重要)
審査基準では、出願商標と使用商標が外観において異なる場合は、出願商標を使用しているとは認めないとしています。同一性が認められない例として次のものが明示されています。
3条2項:使用商標の同一性が認められない場合
- 出願商標が草書体の漢字で、使用商標が楷書体・行書体の漢字
- 出願商標が平仮名で、使用商標が片仮名・漢字・ローマ字
- 出願商標がアラビア数字で、使用商標が漢数字
- 出願商標が平面商標で、使用商標が立体商標
つまり、出願商標と「実際に使っている商標の形」が一致していることが前提です。
証拠方法(審査基準より)
3条2項を主張する際には、以下のような証拠の提出が必要です。
- 商標の実際の使用状況を写した写真・動画等
- 取引書類(注文伝票、納品書、請求書、領収書等)
- 出願人による広告物(新聞・雑誌・カタログ・テレビCM等)及びその実績が分かる証拠物
- 出願人以外の者による紹介記事(一般紙・業界紙・雑誌・インターネット記事等)
- 需要者を対象とした認識度調査(アンケート)の結果報告書
拒絶されたときの対応方法

3条で拒絶理由通知が来た場合、主な対応は次の3つです。
① 意見書で反論する
「説明的ではない」「全体として識別力がある」「需要者が普通の説明とは理解しない」などの主張をします。たとえば、商標が指定商品・役務の宣伝広告としてのみならず「造語等としても認識できる」場合は6号に該当しないと判断されます(審査基準より)。
② 3条2項を主張する
使用の結果、識別力を獲得したことを証拠で示します。「使用期間・地域・数量・広告規模」「出願商標と使用商標の同一性」「需要者の認識」の3点が揃っている必要があり、ハードルは高めです。
③ 商標自体を見直す
最も現実的な対応です。より識別力のある名称・デザインに修正することで、拒絶理由を解消できます。初期段階であれば、説明的な名前にこだわるより、識別力のある名前に変更することが合理的なケースも多くあります。
3条リスクが下がる名前の選び方

実務上は、次のような発想が有効です。
識別力を高めるための名前の選び方
- 商品の特徴・品質・産地をそのまま表す言葉を避ける
- ありふれた説明語・一般的な語句を単独で使わない
- 造語・独自性のある組み合わせを考える
- 地名+商品名のような直球表現を避ける
- キャッチフレーズや宣伝文句だけを商標にしない
- 単独ではなくデザインと組み合わせることで識別力を高める
「説明」ではなく「ブランド名」になっているかが判断のポイントです。
よくある質問(FAQ)
Q. 商標法3条とは何ですか?
A. 識別力がない商標は原則として登録できない、という基本ルールを定めた条文です。普通名称、慣用商標、産地・品質表示、ありふれた氏名、簡単すぎる標章などが登録できない商標として列挙されています。
Q. 3条で拒絶されやすいのはどんな商標ですか?
A. 商品の内容・品質・産地をそのまま説明する名前、ありふれた名称、数字1〜2字やローマ字1〜2字のみ、地名+商品名のような直球表現、キャッチフレーズや宣伝文句などです。
Q. 説明的な名前でも登録できることはありますか?
A. あります。使用の結果、需要者の間で全国的に識別力を獲得したと認められる場合は、3条2項で登録できることがあります(ただしハードルは高く、相当な使用実績・証拠が必要です)。
Q. 3条2項を主張するにはどんな証拠が必要ですか?
A. 使用期間・地域・数量、広告宣伝の実績、取引書類、需要者向けアンケート等の証拠が必要です。また、出願商標と実際の使用商標が同一であることが大前提です。書体違い・平仮名と片仮名の違いなどで同一性が否定されることもあります。
Q. 3条と4条1項11号の違いは何ですか?
A. 3条は「識別力があるか(名前そのものの問題)」、4条1項11号は「識別力はあるとして先行登録商標とぶつかるか(先行商標との関係の問題)」です。まったく別の問題です。
まとめ
商標法3条について解説しました。
まとめ
- 商標法3条は「識別力がない商標は原則登録できない」という基本ルール。判断時期は査定時
- 1号:普通名称(「アルミ」等)、2号:慣用商標(「正宗」等)、3号:産地・品質等の表示(実務で最多)、4号:ありふれた氏・名称(「山田」等)、5号:極めて簡単でありふれた標章(数字・ローマ字1〜2字等)、6号:その他識別力のないもの(キャッチフレーズ・元号・地模様等)
- 3条2項の例外あり:使用の結果、需要者の間で全国的に識別力を獲得したと認められれば登録できる(証拠・ハードルは高め)
- 3条2項を主張するには出願商標と使用商標の同一性が大前提。書体や文字種の違いで同一性が否定される場合あり
- 拒絶への対応は「意見書で反論」「3条2項の主張」「商標自体の見直し」の3つ
名前が説明的すぎるかもしれない、3条で拒絶されそうか不安、という場合はお気軽にご相談ください。登録可能性の見立てや、別案を含めた出願方針を整理します。