
商標権って、商標登録と何が違うの?
商標権を取ると、どこまで守れるの?
権利はいつ発生して、何年続くの?
こうした疑問に、弁理士がわかりやすく解説します。
「商標登録」という言葉はよく知られていますが、実際に事業を守るうえで重要なのは、その結果として発生する
「商標権」
です。
商標権とは、商品やサービスに付けるマークやネーミングを財産として守るための知的財産権です。言い換えると、ブランド名やロゴを単に「登録した」だけでなく、
その登録に基づいて守れる法的なポジション
が商標権です。
ただし、商標権は「何でも全部守れる強い権利」というわけではありません。商標権は、マークと、そのマークを使用する商品・サービスの組合せで一つの権利となっています。つまり、
どのマークを、どの商品・役務について登録したか
で権利の範囲が決まります。
この記事では、
商標権の基本 → いつ発生するか → 何ができるか → 存続期間と更新 → 侵害との関係
の順に、初めての方にもわかりやすく整理します。
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- 発生時期:出願時ではなく、設定登録によって発生
- 権利範囲:マーク+指定商品・指定役務の組合せで決まる
- 存続期間:設定登録の日から10年。更新で何度でも延長可能
- 効力の範囲:同一の商標・商品だけでなく、類似する範囲にも及ぶ
「名前を使っている」だけでなく、「登録して商標権を持っている」ことに大きな意味があります。

- 関西の特許事務所と大手法律事務所と大手企業知財部で合計10年ほどの知財実務を積んできました。
- 特許サポート件数1,000件以上、商標申請代行件数2,000件以上の弁理士です。
- 京都で特許事務所BrandAgentを開業しています。
- ブログ歴3年以上でブログを書くことが趣味です。
- 月間PV数最高11万超のブログを運営したこともあります。
- 初心者の方でもわかりやすいように記事を書くことが得意です。
商標権とは?まず「商標」の意味から

商標権を理解するには、まず「商標」とは何かを押さえておく必要があります。
商標とは、事業者が、自己(自社)の取り扱う商品・サービスを他人(他社)のものと区別するために使用するマーク(識別標識)です。
ブランド名、サービス名、商品名、ロゴマークなど、私たちが日常的に目にするものが商標に当たります。事業者が営業努力によって商品やサービスに対する消費者の信用を積み重ねることにより、商標に「信頼がおける」「安心して買える」といったブランドイメージがついていきます。商標は、「もの言わぬセールスマン」と表現されることもあり、商品やサービスの顔として重要な役割を担っています。
商標には、文字、図形、記号、立体的形状やこれらを組み合わせたものなどのタイプがあります。また、平成27年4月から、動き商標、ホログラム商標、色彩のみからなる商標、音商標及び位置商標についても、商標登録ができるようになりました。
そして、このような商品やサービスに付ける「マーク」や「ネーミング」を財産として守るのが「商標権」という知的財産権です。
商標権の効力の範囲
商標権とは、商品又はサービスについて使用する商標に対して与えられる独占排他権で、その効力は同一の商標・指定商品等だけでなく、類似する範囲にも及びます。
これは重要なポイントです。「まったく同じ商標でなければセーフ」ではなく、類似する範囲についても商標権が及ぶことを意味します。
商標登録と商標権の違い

この2つは似ていますが、意味は少し異なります。
- 商標登録:特許庁に出願し、審査を経て登録される手続そのもの
- 商標権:その登録の結果として発生する権利
つまり、「商標登録した」=「商標権を取得した」という関係ですが、意味としては「手続」と「権利」で区別して理解すると整理しやすいです。
なお、商標登録を受けないまま商標を使用している場合、先に他社が同じような商標の登録を受けていれば、その他社の商標権の侵害にあたる可能性があります。また、商標を先に使用していたとしても、その商標が、自社の商品やサービスを表すものとして需要者に広く知られているといった事情がなければ、商標権の侵害にあたる可能性がありますので注意が必要です。
先に使っていれば守られる、とは必ずしもいえない点が、日本の商標制度の重要なポイントです。
商標権はいつ発生するのか

ここは誤解が多いポイントです。商標権は、出願した時点ではまだ発生しません。
日本弁理士会の説明によると、手続の流れは以下のとおりです。
- 商標登録出願(願書の提出)
- 方式審査(書類の形式チェック)
- 実体審査(登録要件を満たしているかの審査)
- 登録査定(審査通過)
- 登録料の納付
- 設定登録 → 商標権が発生
- 商標公報の発行
審査の結果、登録査定となった場合は、その後、一定期間内に登録料を納付すると、商標登録原簿に設定の登録がなされ、商標権が発生します。
したがって、「出願中=もう完全に守られている」と考えるのは危険です。出願から設定登録まで、通常数ヶ月〜1年程度かかります。登録前後で法的な位置づけはかなり異なります。
また、わが国では、同一又は類似の商標の出願があった場合、その商標を先に使用していたか否かにかかわらず、先に出願した者に登録を認める先願主義という考え方を採用しています。つまり、使っているだけでなく、早めに出願することが重要です。
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商標権で何が守られるのか

商標権を持っていると、具体的に何ができるのでしょうか。特許庁の説明をもとに整理します。
商標登録がなされると、権利者は、指定商品又は指定役務について登録商標を独占的に使用できるようになります。また、第三者が指定商品又は指定役務と同一の商品又は役務に自己の登録商標と類似する商標を使用することや、第三者が指定商品又は指定役務と類似する商品又は役務に自己の登録商標と同一又は類似の商標を使用することを排除することができます。
簡単にまとめると、次のとおりです。
商標権を持っているとできること
- 指定商品・指定役務について登録商標を独占的に使用できる
- 他人が同一・類似の商標を、同一・類似の商品・サービスに使うことを排除できる
- 侵害者に対して差し止め請求・損害賠償請求ができる
- 商標権は日本全国に効力が及ぶ(外国には及ばない)
また、商標権は譲渡やライセンス(使用権の付与)の対象にもなります。つまり、商標権は単なる防御手段だけでなく、事業資産としての意味もあります。
指定商品・指定役務が重要な理由

商標権は、「何に使う商標か」が非常に重要です。これが「指定商品」「指定役務」です。
商標法では、サービスのことを「役務(えきむ)」といい、指定した商品を「指定商品」、指定した役務を「指定役務」といいます。この指定商品・指定役務によって、権利の範囲が決まります。
たとえば、同じブランド名でも、
- アパレルに使うのか
- 飲食店のサービスに使うのか
- アプリ・ソフトウェアに使うのか
で権利の内容は変わります。
指定商品・指定役務を記載する際には、あわせて「区分」も記載する必要があります。「区分」とは、商品・役務を一定の基準によってカテゴリー分けしたもので、第1類~第45類まであります。
区分と料金の関係(目安)
出願料:3,400円+(8,600円×区分数)、登録料:32,900円×区分数(書面出願の場合は別途電子化手数料が必要)
例:2区分の場合
出願料:3,400円+(8,600円×2)=20,600円
登録料:32,900円×2=65,800円
だからこそ、商標出願では「名前」だけでなく、どの区分・どの指定商品役務で取るかの設計が非常に重要です。守りたいビジネスの範囲をしっかり把握してから出願することが大切です。
審査で登録できない商標とは?

出願した商標が必ず登録されるわけではありません。特許庁の審査では、主に以下のケースで登録できないと判断されます。
登録できない商標の主な例(特許庁)
- 識別力がない商標:単に商品の産地、販売地、品質のみを表示する商標(例:商品「野菜」に「北海道」の文字)
- 公益に反する商標:国旗と同一又は類似の商標や公序良俗を害するおそれがある商標、商品・役務の内容について誤認を生じるおそれがある商標
- 他人の商標と紛らわしい商標:他人の登録商標と同一又は類似の商標であって、商標を使用する商品・役務が同一又は類似であるもの
他人の商標と紛らわしいかどうかは、商標同士の類否と、商品・役務同士の類否の両方をみて判断します。商標の類否判断にあたっては、基本的に商標の外観(見た目)、称呼(呼び方)、観念(意味合い)のそれぞれの要素を総合的に判断します。
商標権の存続期間と更新

商標権の存続期間は、設定登録の日から10年です。
そして、商標権は更新登録の申請により、10年ごとに何度でも更新が可能です。
商標は、事業者の営業活動によって蓄積された信用を保護することを目的としていますので、必要な場合には、存続期間の更新登録の申請によって10年の存続期間を何度でも更新することができます。
これは特許権(20年で終了・延長に限界あり)と大きく異なる商標権の特徴です。ブランドは使い続けることで価値が高まるため、適切に更新することで半永久的に保護し続けることができます。
更新の手続時期
更新登録申請は、存続期間満了の6ヶ月前から満了日までの間に行うことができます。この期間を過ぎた場合でも、満了後6ヶ月以内であれば割増手数料を納付することで更新できる場合があります。
更新に関する注意点
- 特許庁から更新期限を自動で通知してくれるわけではありません
- 更新期限の管理は自分でしっかり行う必要があります
- 弁理士に管理を委託しておくと安心です
商標権の役割(3つの機能)

商標には主に3つの機能があると説明されています。
| 機能 | 内容 | 事業者目線での意味 |
|---|---|---|
| 出所表示機能 | どの会社・ブランドの商品か分かる | 自社ブランドを他社と区別できる |
| 品質保証機能 | 同じブランドなら一定の品質が期待される | ブランドへの信頼の積み重ね |
| 広告機能 | ブランドの認知そのものが価値になる | マーケティング資産としての機能 |
つまり商標権は、単に「名前を守る権利」ではなく、ブランドに蓄積された信用そのものを守る仕組みです。
会社登記・ドメイン取得だけでは商標権にならない

これは非常によくある誤解です。
| 手続 | 守れるもの | 商標権との関係 |
|---|---|---|
| 会社登記 | 法人としての存在 | 商標権とは別の制度 |
| ドメイン取得 | ウェブ上のアドレス | 商標権とは別の制度 |
| 商標権 | ブランド名・ロゴを商品・サービスとの関係で保護 | 特許庁への登録が必要 |
会社名で登記していても、ドメインを持っていても、それだけでは商標権があることにはなりません。商標権は、特許庁への出願・登録によって初めて発生する権利です。
どんなタイミングで商標権を意識すべきか
商標権は、次のような場面で特に重要になります。
商標権を意識すべきタイミング
- 新ブランド立ち上げ前(ブランド名・ロゴを決める前に先行調査を)
- 新商品・新サービスの発表前
- EC展開・広告出稿の前(使用が広まるほどリスクも高まる)
- ライセンスや共同事業の前(商標権がなければライセンスできない)
- M&Aや事業譲渡の前後(ブランド資産の確認)
要するに、「その名前にお金をかける前」に商標権を意識するのが理想です。出願・審査・登録には時間がかかるため、早めに動くことが重要です。
よくある質問(FAQ)
Q. 商標権とは、一言でいうと何ですか?
A. 登録した商標を、指定した商品・サービスについて独占的に使いやすくするための権利です。同一だけでなく類似する範囲にも効力が及びます。
Q. 商標権はいつ発生しますか?
A. 出願時ではなく、審査通過後に登録料を納付し、設定登録がされた時点で発生します。
Q. 商標権は何年続きますか?
A. 設定登録の日から10年で、更新により何度でも延長できます。適切に更新すれば半永久的に保護できます。
Q. 商標権があれば、同じ名前は全部止められますか?
A. 権利範囲は、登録したマークと指定商品・指定役務によって決まります。一概に「全部止められる」とはいえません。商品・サービスの関係によっては、権利が及ばない場合もあります。
Q. 先に使っていれば守られますか?
A. 日本は先願主義を採用しており、先に使っていても先に登録した者が原則として保護されます。ただし、周知・著名な商標には一定の保護がある場合もあります。
Q. 商標権を外国でも使えますか?
A. 日本の商標権は日本国内にのみ効力が及びます。外国でも保護を受けるには、その国への出願・登録が必要です(マドプロ(国際商標出願)の活用も有効です)。
まとめ

商標権の基本について解説しました。
まとめ
- 商標権とは、マーク+指定商品・役務の組合せで成り立つ独占排他権。同一だけでなく類似する範囲にも効力が及ぶ
- 商標権は設定登録によって発生する(出願時点ではない)
- 日本は先願主義のため、先に使っていても先に登録した者が保護される
- 権利範囲は指定商品・指定役務によって決まるため、出願時の設計が重要
- 存続期間は設定登録から10年。更新で何度でも延長できる
- 会社登記・ドメイン取得は商標権とは別の制度
- ブランドにお金をかける前に商標権を意識するのが理想
ブランド名やロゴをどの範囲で守るべきか、どの区分で出願すべきかは、事業内容によって異なります。まずはお気軽にご相談ください。