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商標の使用の意思とは?指定商品・役務の範囲と証明方法を弁理士が解説

悩んでいる方

商標出願したら「使用の意思がない」と拒絶された…これって何?
指定商品・役務を広く取りすぎるとダメなの?
使用の意思はどうやって証明すればいいの?

こうした疑問に、弁理士がわかりやすく解説します。

商標出願では、指定した商品・役務に商標を「実際に使っている」か「使う意思がある」ことが必要です。これは商標法3条1項柱書が定める基本要件で、
「自己の業務に係る商品又は役務について使用する商標」
でなければ登録できません。

ただし、指定する商品・役務の範囲が広すぎる場合や、特定の状況では、特許庁から「使用の意思があるかについて合理的な疑義がある」として拒絶理由が通知されることがあります。

この記事では、

使用の意思とは何か

拒絶理由になる主な2つのパターン

必要な証明書類と対応方法

証明書類が不要になる場合・補正で解消する方法

の順に、特許庁の審査便覧(41.100.03)をもとに解説します。

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結論:商標は「自己の業務に係る商品・役務について使用するもの」でなければ登録できません。

  • 次の2パターンで「使用の意思に疑義あり」として拒絶理由になりやすい
  • ① 小売等役務(第35類)で類似しない複数の役務を指定した場合
  • ② 1区分内で23以上の類似群にわたる商品・役務を指定した場合
  • 拒絶理由への対応は「証明書類の提出」または「指定商品・役務の削除補正」
記事の信頼性

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「商標の使用の意思」とは?制度の趣旨

商標法3条1項柱書は、商標登録を受けるための大前提として、「自己の業務に係る商品又は役務について使用する商標」であることを要求しています。

なぜこの要件があるのかというと、実際に使う意思もないのに広い範囲の商品・役務について商標を独占してしまうと、本当に使いたい他の事業者が登録できなくなるためです。特許庁の審査便覧では、使用の意思に「合理的な疑義がある場合」は、この柱書要件を満たさないと判断すると定めています。

ただし、個別の商標をどの商品・役務に使うかを願書の記載だけで判断することは現実的に困難です。そのため、実務では「指定商品・役務に係る自己の業務の確認」を通じて使用の意思を確認するという運用がとられています。

「合理的な疑義がある」と判断される2つのパターン

特許庁の審査便覧(41.100.03)では、次の2つのパターンで使用の意思に合理的疑義があるとして拒絶理由の通知が行われます。

パターン①:小売等役務(第35類)の指定が広すぎる場合

小売等役務とは、第35類の「○○の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」という役務です。このパターンには次の3つのケースがあります。

ケース 内容
①-a
個人が総合小売等役務を指定
「衣料品、飲食料品及び生活用品に係る各種商品を一括して取り扱う小売又は卸売の業務」(総合小売等役務)を個人(自然人)が指定した場合。百貨店・総合スーパー等が提供するような役務を個人が行っているとは通常考え難いため
①-b
法人が総合小売等役務を指定(業務確認できない場合)
法人が総合小売等役務を指定した場合であっても、職権調査によって出願人が総合小売等役務を行っているとは認められない場合
①-c
類似しない複数の小売等役務を指定
類似の関係にない複数の小売等役務(異なる類似群コード:35K01〜35K99)を指定した場合。同一事業者が複数の業態にわたる小売等役務を行うことは一般的とは考え難いため

小売等役務の類似群カウントの注意点(審査便覧より)

  • 小売等役務では、取扱商品の類似群(括弧書き)はカウントしない(例:「自動車の小売」の「35K04(12A05)」は、類似群の数は1つとして扱う)
  • 同じ類似群コードを持つ役務が複数ある場合、相互に類似するものは重複カウントしない
  • 同じ「35K99(その他)」コードを持つ役務が複数ある場合でも、相互に類似しないものは重複カウントする

パターン②:1区分内で23以上の類似群を指定した場合

小売等役務以外の商品・役務全般について、1区分内で23以上の類似群コードにわたる商品または役務を指定している場合、使用の意思に疑義があるとして確認が行われます。

類似群の合計 判断
22以下 ✅ 柱書要件を満たす(確認不要)
23以上 ❌ 使用の意思に疑義あり → 確認が必要

ただし、類似商品・役務審査基準において23以上の類似群が付与されている商品・役務を指定している場合で、その商品・役務が属する区分において付与されている類似群数を超えない範囲での指定であれば、この限りではありません。

類似群のカウントルール(パターン②)は次のとおりです。

  • 同じ類似群コードは重複カウントしない(例:同じコード「06A01」の商品が2つあっても1つ)
  • 「その他の類似群コード」(例:40H99等)が複数ある場合、相互に類似するものは重複カウントしない。相互に類似しないものは重複カウントする
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拒絶理由が来たときの対応①:証明書類の提出

拒絶理由通知が来た場合、意見書とともに証明書類を提出することで対応できます。出願人は類似群ごとに、指定商品・役務に係る業務を行っているか又は行う予定があることを明らかにする必要があります。

A. すでに業務を行っている場合の証明書類

証明書類の種類 内容
カタログ・チラシ等の印刷物 取扱商品が記載されたもの
店舗の写真 店舗及び取扱商品が分かる店内の写真
取引書類 注文伝票、納品書、請求書、領収書等
新聞・雑誌・インターネット記事 業務内容・取扱商品が紹介されているもの
売上資料
(総合小売等役務の場合)
衣料品・飲食料品・生活用品の各範疇がいずれも総売上高の10〜70%程度であることを示す資料

B. まだ業務を行っていない(使用の意思がある)場合の証明書類

出願後3〜4年以内(登録後3年に相当する時期まで)に商標の使用を開始する意思がある場合は「使用の意思あり」と判断されます。この場合は次の2種類の書類が必要です。

書類 内容
使用を開始する意思を明記した文書 「第○○類『○○』の事業予定があり、令和○○年○○月頃から商標の使用を開始する予定である」旨を記載した書面(事業担当責任者が作成)
業務の準備状況を示す書類(事業予定) 「令和○年○月 工場(店舗)の建設(着工・借用)等の予定」「令和○年○月 生産(販売)開始予定」等を記載した書面

なお、準備状況を示す書類は商標法72条1項の規定により閲覧が可能であるため、不要な部分をマスキングすることも認められています。

拒絶理由が来たときの対応②:指定商品・役務を削除する補正

証明書類の提出の代わりに、疑義がある指定商品・役務の一部を削除する手続補正書を提出することでも対応できます。

拒絶のパターン 補正による解消方法
1区分内で23以上の類似群を指定(パターン②) 商品・役務の一部を削除して類似群の合計を22以下にする
複数の類似しない小売等役務を指定(パターン①-c) 役務の一部を削除して小売等役務を1種類にする

削除補正により「合理的疑義がある場合」に該当しなくなれば、柱書要件を満たすものとして取り扱われます。

証明書類の提出を省略できる場合

同一出願人が先にした他の出願において証明書類を提出している場合、意見書にその出願番号と書類名等を記載するだけで、証明書類の提出を省略できます。

これは同一の指定商品・役務だけでなく、同一類似群内の他の指定商品・役務について業務が証明されていた場合も同様です。

また、後の出願の願書に最初から出願番号と書類名等を記載してきた場合も同様に省略できます。

過去の出願件数が多すぎる場合も疑義の対象になる


パターン①②に該当しない場合でも、以下の両方に該当するときは柱書違反と判断されます(この場合、使用の意思に関する証明書を提出しても合理的疑義は解消しません)。

  • 過去の出願件数が概ね年間1,000件以上と、自己の業務に使用する商標としては到底想定し得ない多数の出願を行っている
  • ウェブサイト・報道等から使用の意思が確認できない(例:もっぱら商標の売買や使用許諾を行っていることが認められる等)

実務上のポイント:指定商品・役務の設計が重要

この制度を踏まえると、出願前に次の点を確認しておくことが重要です。

出願前に確認すべきポイント

  • 第35類で小売等役務を指定する場合:類似しない小売等役務を複数指定していないか確認する(類似群コード35K01〜35K99のうち、異なる類似群コードにまたがる役務を複数指定すると拒絶理由になりやすい)
  • 1区分内での指定が広い場合:類似群コードの合計が23以上にならないよう設計する。「とりあえず全部指定」は拒絶理由の原因になる
  • 使用実績がある場合:カタログ・取引書類・写真等を事前に準備しておくとスムーズ
  • これから事業を始める場合:3〜4年以内に使用開始できる具体的な計画を準備しておく
  • 過去に同様の証明書類を提出している場合:出願番号を控えておけば、後の出願で省略できる

よくある質問(FAQ)

Q. 「使用の意思」とは何ですか?
A. 出願した商標を、指定した商品・役務について自己の業務で実際に使う意思のことです。商標法3条1項柱書の要件で、これがなければ原則として登録できません。

Q. 小売等役務を複数指定してはいけないのですか?
A. 類似の関係にある小売等役務(同一類似群コード)であれば複数指定できます。類似しない小売等役務(異なる類似群コード)を複数指定すると使用の意思に疑義があるとして拒絶理由が通知されます。

Q. 1区分で何個まで商品・役務を指定できますか?
A. 類似群コードの合計が22以下であれば、商品・役務の数に関係なく柱書要件を満たします。23以上になると使用の意思の確認が必要になります。

Q. まだ事業を始めていなくても商標登録できますか?
A. できます。ただし、拒絶理由が通知された場合は「出願後3〜4年以内に使用を開始する意思がある」ことを示す書面と事業予定の準備状況を示す書類の提出が必要です。

Q. 拒絶理由が来たらどうすればいいですか?
A. ①業務の証明書類(カタログ・取引書類・写真等)または使用の意思を示す書類を提出するか、②疑義のある指定商品・役務を削除する補正を行うかで対応します。

まとめ

商標の使用の意思(商標法3条1項柱書)について解説しました。

まとめ

  • 商標は「自己の業務に係る商品・役務について使用するもの」でなければ登録できない(商標法3条1項柱書)
  • 小売等役務(第35類)で類似しない複数の役務を指定すると使用の意思に疑義ありとして拒絶理由になる
  • 1区分内で類似群コードが23以上になると同様に疑義ありとして確認が必要
  • 拒絶理由への対応は「業務の証明書類または使用の意思を示す書類の提出」か「指定商品・役務の削除補正」
  • 使用の意思を示す書類は、出願後3〜4年以内に使用を開始する意思があることと、事業予定の準備状況を示すことが必要
  • 同一出願人が先の出願で証明書類を提出している場合は出願番号の記載で省略可能
  • 年間概ね1,000件以上の大量出願かつ使用実態がない場合は証明書類を提出しても疑義が解消しない場合がある

指定商品・役務の設計や拒絶理由への対応でお困りの場合は、お気軽にご相談ください。

商標登録をお考えの方は、お気軽にご相談ください。

特許事務所BrandAgent
弁理士 叶野徹

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  • この記事を書いた人

叶野徹

京都の特許事務所BrandAgentを運営している弁理士です。関西の特許事務所→大手法律事務所→大手企業知財部→BrandAgentを設立。特許1,000件以上、商標2,000件以上をこれまでにサポートしています。趣味は温泉・サウナです。

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