
ベトナムに商標登録したい。手続きの流れは?
費用はいくらかかる?審査にどれくらいかかる?
日本語の商標は登録できるの?
こうした疑問に、弁理士がまとめて解説します。
ベトナムは近年、日本企業の進出が急増している重要な市場です。
しかし、ベトナムには日本語のみの商標は原則登録できない・冒認出願が多いなど、他のアジア諸国と異なる独特の注意点があります。
この記事では、ベトナム商標登録の手続きの流れ/審査期間/費用の目安/日本語商標の注意点をわかりやすく解説します。
結論(先に要点)
- 管轄機関:NOIP(ベトナム国家知的財産庁)に出願します。
- 審査期間:出願から登録まで通常約1年半〜2年程度かかります。
- 存続期間:出願日から10年(更新可)。
- 日本語のみの商標は原則登録不可:英語または図形と組み合わせて出願する必要があります。
- マドプロ出願可能:ベトナムはマドリッド協定議定書加盟国のため、マドプロ出願も利用できます。
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この記事の構成
- 1. ベトナムの商標登録制度とは
- 2. 出願手続きの流れ(審査フロー)
- 3. 各審査段階の詳細
- 4. 費用の目安
- 5. 日本語商標の注意点(最重要)
- 6. 直接出願とマドプロ出願の比較
- 7. 失敗しないための注意点
- 8. よくある質問(FAQ)
1. ベトナムの商標登録制度とは
ベトナムの商標登録は、NOIP(National Office of Intellectual Property of Vietnam:ベトナム国家知的財産庁)に出願して取得します。
商標権の存続期間は出願日から10年間で、更新すれば継続して権利を維持できます(日本は登録日から10年である点が異なります)。
ベトナムは先願主義を採用しており、先に出願した者が権利を取得します。
近年、ベトナムに進出する日本企業が増えるにつれ、進出前に第三者が日本企業のブランド名を先取りする冒認出願のトラブルも増えています。事業進出前の早めの出願が重要です。
日本との主な違い
| 項目 | ベトナム(NOIP) | 日本(JPO) |
| 存続期間の起算日 | 出願日から10年 | 登録日から10年 |
| 審査期間の目安 | 約1年半〜2年 | 約8〜12ヶ月 |
| 日本語商標 | 原則登録不可(英語や図形との組み合わせが必要) | 登録可能 |
| 出願言語 | ベトナム語 | 日本語 |
| 外国人の直接出願 | 原則不可(現地代理人が必要) | 可能 |
| 登録後の使用義務 | あり(5年以上不使用で取消リスク) | 使用義務なし(不使用取消審判はあり) |
2. 出願手続きの流れ(審査フロー)
ベトナムの商標登録手続きは、以下の流れで進みます。
直接出願(NOIPへの個別出願)の場合のフローです。
- 事前調査:先行商標の有無をベトナムのデータベースで確認
- 出願書類の作成・提出:現地代理人を通じてNOIPに提出
- 方式審査:書類の形式的な不備を審査(約1〜2ヶ月)
- 出願公開:方式審査通過後、受理通知日から2ヶ月以内に官報に公開
- 実体審査:類似商標の有無・識別力などの審査(出願公開日から約9ヶ月)
- 登録許可通知・登録料の納付:審査通過後、登録料を納付
- 登録証の発行・産業財産広報に公告
出願から登録まで、拒絶理由がなかった場合でも通常約1年半〜2年程度かかります。
拒絶理由通知が発行された場合は、さらに時間がかかることがあります。
3. 各審査段階の詳細
① 方式審査(Form Examination)
出願書類の形式的な不備がないかを審査します。
不備がある場合、出願人に対し2ヶ月の応答期間が与えられます(請求により2ヶ月の延長可)。
方式審査を通過すると、受理通知日から2ヶ月以内に官報に公開されます。
② 実体審査(Substantive Examination)
出願公開後、識別力の有無・先行商標との類否・登録要件を満たしているかを審査します。
実体審査の期間は出願公開日から約9ヶ月です。
審査中、拒絶理由が見つかった場合は出願人に通知され、3ヶ月以内に意見書・補正書で応答できます(請求により3ヶ月の延長可)。
③ 第三者意見の提出
ベトナムの特徴的な制度として、出願の公開日から登録証付与の決定が出るまでの間、第三者がNOIPに対して登録の許可または拒絶に関する意見を提出する権利があります(ベトナム知的財産法第112条)。
日本の異議申立制度とは異なり、登録前に意見が提出される可能性がある点に注意が必要です。
④ 登録許可通知・登録料納付
審査官が登録を認めると判断した場合、登録許可通知が発行されます。
出願人は通知から3ヶ月以内に登録料等を納付することで商標権が発生します。
なお、登録料納付の際にディスクレーム(権利不要求)が求められる場合があります。その場合、同意するか意見書で反論するかを選択できます。
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4. 費用の目安
ベトナム商標登録の費用は、①NOIPへの公的手数料(官庁費用)と②代理人費用(現地代理人+日本の弁理士)に分かれます。
NOIP公的手数料(官庁費用・参考)
| 手続きの種類 | 費用(VND) |
| 出願手数料(1出願) | VND 150,000 |
| 申請書発行手数料(1申請) | VND 120,000 |
| 実体審査・商標検索手数料(1商品・役務グループ) | VND 180,000 |
| 実体審査・商標検索(7グループ目以降、1グループあたり) | VND 30,000 |
| 正式審査手数料(1商品・役務グループ) | VND 550,000 |
| 正式審査(7グループ目以降、1グループあたり) | VND 120,000 |
※VND(ベトナムドン)。1VND≒約0.006円として計算。為替レートにより変動します。
出典:NOIP公式 Trademark Examination Procedure
代理人費用の目安(日本の弁理士事務所経由の場合)
| 費用の種類 | 目安金額(円) | 内容 |
| 事前調査費用 | 20,000〜50,000円程度 | 類似商標の有無を調査・報告 |
| 出願代理費用(1区分) | 40,000〜80,000円程度 | 書類作成・現地代理人連携・庁費用込み |
| 登録時費用(1区分) | 20,000〜40,000円程度 | 登録料納付・手続き代行 |
| 合計目安(調査〜登録まで・1区分) | 約8万円〜17万円程度 | 事務所・区分数により変動 |
※代理費用に統一した基準はなく、各代理人が自由に設定できます。上記はあくまで目安です。
5. 日本語商標の注意点(最重要)
ベトナムで出願する際、日本語(漢字・カタカナ・ひらがな)のみで構成された商標は、原則として登録できません。
これはベトナムで常用されていない言語の文字は、一般的なベトナム消費者が理解できないため識別力がないと判断されるためです(ベトナム知的財産法第74条2項a)。
日本語商標の取り扱いまとめ
- 日本語のみの商標:ほぼ確実に識別力なしとして拒絶理由通知が発行される
- 対策①:英語(ローマ字)表記と日本語を組み合わせて出願する
- 対策②:特徴的な図形マークと日本語を組み合わせて出願する
- 外国語(英語等)の商標:ベトナム語への翻訳・音訳の表記が必要
- 使用時の注意:登録された商標(英語+日本語等の組み合わせ)をそのまま使用する必要がある
例えば「山田食品」という日本語商標であれば、「YAMADA FOODS 山田食品」のように英語表記を付加した形で出願することが実務上の対策となります。
この場合、ベトナムでの審査は主に英語部分を基準に行われます。
出願前に、付加する英語表記が適切かどうかを専門家に確認しておくことを強くおすすめします。
6. 直接出願とマドプロ出願の比較
ベトナムへの商標出願には、①NOIPへの直接出願と②マドリッド協定議定書(マドプロ)を利用した国際出願の2つの方法があります。
| 項目 | 直接出願(NOIP) | マドプロ出願 |
| 手続きの窓口 | 現地代理人経由でNOIPに直接提出 | 日本の特許庁→WIPOを経由 |
| 審査期間の目安 | 約1年半〜2年 | 国際登録まで約6ヶ月+NOIP審査(1年6ヶ月以内に結果通知) |
| 指定商品の柔軟性 | 高い(現地に合わせた記載が可能) | 基礎出願の範囲内に限定 |
| 複数国への出願 | 各国に個別に出願が必要 | 1手続きで複数国に出願可能 |
| 向いているケース | ベトナムのみに出願する場合 | ベトナムを含む複数国に同時出願する場合 |
マドプロ出願の場合、日本の特許庁に書類を提出してから約6ヶ月で国際登録され、その後NOIPでの審査が行われます。
審査結果は、遅くとも国際登録の出願から1年6ヶ月までに通知されます。
特許事務所BrandAgentでは、これまで2,000件以上の商標出願をサポートしています。ベトナム商標の出願方針や費用見積もりもお気軽にご相談ください。
7. 失敗しないための注意点
ベトナム商標出願で失敗しやすいポイント
- 日本語のみで出願しない:ほぼ確実に拒絶。英語または図形との組み合わせが必須
- 事前調査を念入りに行う:ベトナムは類似商標による拒絶が多い(拒絶理由の約76%が類似商標)。出願前調査が重要
- 1区分内の商品・役務数に注意:1区分内で6グループを超えると追加費用が発生する
- 登録後は5年以内に使用を開始する:正当な理由なく継続して5年以上使用しないと不使用取消のリスクがある
- 登録商標をそのまま使用する:英語+日本語の組み合わせで登録した場合、使用時もその形のまま使用することが必要
- 早めの出願を心がける:冒認出願リスクがあるため、ベトナム進出前または進出と同時に出願する
- 信頼できる現地代理人を選ぶ:ベトナムは法改正や運用変更が頻繁なため、実績ある代理人の選定が重要
8. よくある質問(FAQ)
- Q. ベトナムの商標審査はどれくらいかかりますか?
- 出願から登録まで通常約1年半〜2年程度かかります。拒絶理由通知への対応が必要な場合はさらに期間が延びることがあります。日本(約8〜12ヶ月)と比べて審査期間は長めです。
- Q. 日本語の商標名でベトナムに登録できますか?
- 日本語(ひらがな・カタカナ・漢字)のみの商標は、ベトナムで識別力がないとして原則登録できません。英語表記(ローマ字)または特徴的な図形と組み合わせて出願することが必要です。
- Q. マドプロ出願とNOIP直接出願のどちらがいいですか?
- ベトナムのみに出願する場合は直接出願が一般的です。ベトナムを含む複数の国・地域に同時に出願する場合はマドプロが効率的です。状況に応じて弁理士に相談することをおすすめします。
- Q. ベトナムの商標権の存続期間は何年ですか?
- 出願日から10年間です(日本は登録日から10年である点が異なります)。更新は満了日の6ヶ月前から可能で、満了後6ヶ月以内であれば追加料金で更新できます。
- Q. 現地での冒認出願を防ぐにはどうすればいいですか?
- ベトナムへの進出前、または日本での出願と同時期にベトナムへの商標出願を行うことが最善策です。すでに冒認出願されている場合は、異議申立・無効審判請求などの対抗手段があります。特許庁の「冒認商標無効・取消係争支援事業」(費用の2/3補助・上限500万円)も活用できます。
「日本語商標をどう組み合わせればいい?」「どちらの出願方法が適切?」「費用の見積もりが知りたい」など、状況に合わせてアドバイスします。
まずはお気軽にご相談ください。
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まとめ
ベトナム商標登録は、出願から登録まで約1年半〜2年と時間がかかるため、ビジネス開始前の早めの出願が重要です。
最大の注意点は日本語のみの商標は原則登録不可という点で、英語表記や図形との組み合わせが必要です。
また、1区分内の商品・役務が6グループを超えると追加費用が発生し、登録後5年以上不使用だと取消リスクがある点も他のアジア諸国と異なる特徴です。
冒認出願リスクへの備えと、信頼できる現地代理人の選定が成功のカギです。早めに弁理士にご相談ください。