
海外進出を考えているけど、外国での商標登録って費用が高そう…。
補助金や支援制度はないの?
海外で自社の商標を勝手に登録されたらどうすればいい?
こうした疑問に、弁理士がまとめて解説します。
海外でビジネスを展開する中小企業にとって、現地での商標登録は「後回し」にしてはいけない最重要課題のひとつです。
特に中国や東南アジアでは、日本企業が現地進出する前に第三者が先に商標を登録してしまう「冒認出願」のリスクが深刻です。
しかし、外国商標の出願には費用も手間もかかります。
そこで知っておいてほしいのが、特許庁が中小企業向けに整備している「海外知財支援制度」です。
外国出願費用の補助・冒認商標への対抗支援・訴訟リスクへの保険まで、使える制度が複数あります。
この記事のポイント
- 外国商標出願費用の1/2が補助される「海外出願支援事業」
- 冒認商標を取り消すための費用を2/3補助する制度
- 模倣品被害・警告状が届いた場合の対抗費用支援
- 海外知財訴訟費用保険への加入補助
- 各制度の対象要件・上限額・申請窓口をまとめて解説
外国商標出願・支援制度の活用についてはお気軽にご相談ください。
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- 関西の特許事務所と大手法律事務所と大手企業知財部で合計10年ほどの知財実務を積んできました。
- 特許サポート件数1,000件以上、商標申請代行件数2,000件以上の弁理士です。
- 京都で特許事務所BrandAgentを開業しています。
- ブログ歴3年以上でブログを書くことが趣味です。
- 月間PV数最高11万超のブログを運営したこともあります。
- 初心者の方でもわかりやすいように記事を書くことが得意です。
この記事の構成
- 1. なぜ外国商標登録が必要なのか
- 2. 外国出願費用を半額にする「海外出願支援事業」
- 3. 冒認商標への対抗支援「冒認商標無効・取消係争支援」
- 4. 模倣品被害・警告状への対応「侵害対策支援」
- 5. 訴訟リスクに備える「海外知財訴訟費用保険」
- 6. INPIT外国出願補助金との使い分け
- 7. 京都の中小企業が使える申請窓口
- 8. よくある質問(FAQ)
1. なぜ外国商標登録が必要なのか
商標権は「国ごとに独立した権利」です。
日本で商標登録をしていても、海外では一切効力を持ちません。
海外で事業を展開する場合、その国ごとに商標登録をしなければ、自社のブランドを法的に守ることができません。
仮に現地で模倣品が出回っても、商標権がなければ法的に差止めを請求することが難しくなります。
特に注意が必要な「冒認出願」とは
中国や東南アジアなどでは、日本企業が現地進出する前に第三者が先に同じ商標を登録してしまう「冒認出願(抜け駆け出願)」が頻発しています。
これが起きると、正規の権利者であるはずの日本企業が自社のブランド名を使えなくなったり、逆に高額なライセンス料を要求されるケースもあります。
対策の基本は「現地で事業を開始する前に、または日本での出願と同時に外国出願を行うこと」です。
とはいえ、外国出願には翻訳費用・現地代理人費用・出願手数料など多くのコストがかかります。
そこで活用したいのが、特許庁の支援制度です。
2. 外国出願費用を半額にする「海外出願支援事業」
特許庁が実施する「海外出願支援事業」は、外国での商標出願にかかる費用の1/2を補助してくれる制度です。
都道府県等中小企業支援センターを通じて申請します(令和7年度)。
海外出願支援事業の概要(商標)
| 補助率 | 外国出願に要する費用総額の1/2 |
| 上限額(商標1案件) | 60万円(通常商標) 30万円(冒認対策商標) |
| 1企業あたりの上限 | 300万円 |
| 対象経費 | ①外国特許庁への出願手数料 ②国内・現地代理人費用 ③翻訳費用 |
対象となるのはどんな企業?
- 中小企業者等(みなし大企業を除く)
- 応募時点で日本国特許庁に商標出願済みであること
- 採択後、指定する期限までに国内出願を基礎に外国出願する予定の案件(商標は優先権を必ずしも要しません)
- 外国で権利が成立した場合に当該権利を活用した事業展開を計画している、または冒認出願対策の意思を有していること
補助を受けるメリット
例えば中国・韓国・台湾・EU・アメリカの5カ国・地域に商標出願する場合、代理人費用や翻訳費を含めると100万円以上かかることも珍しくありません。
この制度を活用すれば、自己負担を実質半額程度に抑えながら複数国への出願が可能になります。
申請の流れ
- 各都道府県等中小企業支援センターに問い合わせ・申請
- 採択通知を受け取る
- 指定期限内に外国出願を実施
- 領収書・証明書類を提出して補助金を受け取る
公募は2025年4月以降、順次開始予定です。
※令和7年度は東京都・長崎県・大分県・沖縄県では実施していません。
3. 冒認商標への対抗支援「冒認商標無効・取消係争支援」
「海外で自社の商標をすでに第三者に登録されてしまっていた」という場合に使えるのが、「冒認商標無効・取消係争支援事業」です。
ジェトロ(日本貿易振興機構)が実施しており、現地での異議申立・無効審判請求などにかかる費用の2/3を補助します。
冒認商標無効・取消係争支援の概要
| 補助率 | 2/3 |
| 上限額 | 500万円 |
| 対象となる費用 | 異議申立・無効審判請求など、抜け駆け商標を取り消すための費用 |
| 応募受付期限 | 2025年10月31日まで(予算がなくなり次第終了) |
対象要件
- 中小企業者等(みなし大企業を除く)
- 取り消そうとする抜け駆け商標と同一または類似の商標権を日本で保有していること
こんな場合に使える
「中国に進出しようとしたら、自社ブランド名がすでに現地企業に登録されていた」
「韓国の取引先が自社ロゴと似た商標を登録していた」
といったケースで、現地での法的手続きにかかる費用の大部分を補助してもらえます。
お問い合わせ先:(独)日本貿易振興機構(ジェトロ)知的資産部 知的財産課 TEL:03-3582-5198
4. 模倣品被害・警告状への対応「侵害対策支援」
①模倣品対策支援
海外で模倣品被害を受けた中小企業に対して、海外侵害調査・警告状の作成・行政摘発の実施等にかかる費用の2/3を補助します。
模倣品対策支援の概要
| 補助率 | 2/3 |
| 上限額 | 400万円 |
| 対象要件 |
|
②防衛型侵害対策支援
外国企業から「警告状が届いた」「訴訟を起こされた」など、海外の知財係争に巻き込まれた中小企業が取る対抗措置にかかる費用の2/3を補助します。
防衛型侵害対策支援の概要
| 補助率 | 2/3 |
| 上限額 | 500万円 |
| 対象要件 |
|
模倣品対策支援・防衛型侵害対策支援・冒認商標無効取消係争支援の応募受付はいずれも2025年10月31日まで(予算がなくなり次第終了)です。
お問い合わせ先:(独)日本貿易振興機構(ジェトロ)知的資産部 知的財産課 TEL:03-3582-5198
5. 訴訟リスクに備える「海外知財訴訟費用保険」
「万が一、海外で知財訴訟に巻き込まれたときの備え」として活用できるのが「海外知財訴訟費用保険」です。
特許庁が中小企業団体に補助金を交付し、中小企業が保険加入する際の掛け金の一部を助成します。
海外知財訴訟費用保険の概要
| 補助率 | 掛け金の1/2(2年目以降の更新は1/3) |
| 公募開始 | 2025年7月1日始期分より開始 |
| 対象 | 日本商工会議所・全国商工会連合会・全国中小企業団体中央会の会員中小企業 |
| 保険の内容 | 海外で知的財産権に関する損害賠償請求等の訴訟を受けた場合の弁護士費用などを補償 |
「海外で万が一のトラブルに備えたい」という企業には、出願前から保険加入を検討しておくことをおすすめします。
お問い合わせ先:
①日本商工会議所 総務部 TEL:03-3283-7832
②全国商工会連合会 企業支援部 TEL:03-6206-6264
③全国中小企業団体中央会 特命担当(保険) TEL:03-3523-4904
6. INPIT外国出願補助金との使い分け
特許庁の海外出願支援事業と似た制度として、INPIT(独立行政法人工業所有権情報・研修館)が実施する「外国出願補助金」があります。
両制度は使い分けが可能です。
| 特許庁 海外出願支援事業 | INPIT外国出願補助金 | |
| 補助率 | 1/2 | 1/2 |
| 商標の上限額 | 1案件60万円・1企業300万円 | 1案件60万円・1企業300万円 |
| 特徴 | 都道府県等支援センター経由 出願費用のみ対象 |
INPIT経由 中間応答・審査請求費用も対象 |
| 中間手続補助 | 対象外 | 対象(特許のみ・1手続50万円) |
商標については両制度の補助内容はほぼ同じですが、INPIT補助金は出願後の中間応答や審査請求費用にも使えることが特徴です(特許のみ)。
どちらを使うか迷った場合は、まず弁理士や各窓口に相談することをおすすめします。
お問い合わせ先:
INPIT 知財活用支援センター 助成事業担当 TEL:03-3581-1101(内線3855)
7. 京都の中小企業が使える申請窓口
海外出願支援事業の申請窓口は、各都道府県等中小企業支援センターです。
京都府内に本社・支社・事業所等がある事業者は、以下の機関から申請できます。
京都府の申請窓口(令和7年度)
(公財)京都産業21
住所:京都市下京区中堂寺南町134 京都府産業支援センター
TEL:075-315-9425
また、全国47都道府県にはINPIT知財総合支援窓口が設置されており、海外商標に関する無料相談が可能です。
専門家(弁理士・弁護士・ブランド専門家)との連携相談も行っています。
まずはお電話ください:☎ 0570-082100
特許事務所BrandAgentでは、これまで2,000件以上の商標出願をサポートしています。外国商標出願や支援制度の活用についてもお気軽にご相談ください。
8. よくある質問(FAQ)
- Q. 海外出願支援事業は商標にも使えますか?
- はい、使えます。商標1案件あたり上限60万円(費用の1/2)が補助されます。なお、冒認対策商標の場合は上限30万円です。
- Q. まだ外国出願していない場合でも申請できますか?
- はい。応募時点で日本国特許庁への出願が済んでいれば申請できます。採択後に外国出願を行う流れです。
- Q. 中国でブランド名が先に登録されていた場合、どうすればいいですか?
- 「冒認商標無効・取消係争支援事業」が活用できます。日本で同一・類似の商標を保有していれば、異議申立や無効審判請求にかかる費用の2/3(上限500万円)が補助されます。まずジェトロ(TEL:03-3582-5198)またはBrandAgentにご相談ください。
- Q. 外国企業から警告状が届きました。費用補助はありますか?
- 「防衛型侵害対策支援事業」が活用できます。対象国で権利を保有または実施権を得ていることが条件です。対抗措置にかかる費用の2/3(上限500万円)が補助されます。
- Q. 複数の国に商標出願したい場合、補助は受けられますか?
- はい。1企業あたりの上限は300万円で、複数国・複数案件への出願に補助を使えます。例えば中国・韓国・台湾に各1案件ずつ出願する場合、最大180万円(60万円×3)の補助を受けられます。
「どの国に出願すべきか」「どの支援制度が使えるか」「冒認出願への対応をどうするか」など、状況に合わせてアドバイスします。
まずはお気軽にご相談ください。
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まとめ
外国商標登録と関連支援制度のポイントをまとめます。
- 商標権は国ごとに独立しているため、海外進出先の国で別途登録が必要
- 中国・東南アジアでは「冒認出願」リスクがあり、進出前の早めの出願が重要
- 海外出願支援事業を使えば外国出願費用の1/2(商標1案件上限60万円)が補助される
- 冒認商標が発覚した場合は「冒認商標無効・取消係争支援」で費用の2/3(上限500万円)を補助
- 模倣品被害・警告状への対応も侵害対策支援で費用の2/3を補助(上限400〜500万円)
- 海外知財訴訟費用保険への加入補助(掛け金の1/2)で万が一のリスクにも備えられる
- 京都府内の企業は(公財)京都産業21(TEL:075-315-9425)が申請窓口