こうした疑問に答えます。
特許請求項は、発明内容を明確にし、特許の範囲を制限するために非常に重要な役割を果たします。
しかし、その書き方には一定のルールや注意点があり、正確な表現が求められます。
本記事では、弁理士が特許請求項の意義や書き方、注意点について解説します。
・本記事の信頼性
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・本記事の構成
1.特許請求項とは何か?
2.請求項の書き方は?
3.請求項に含めるべき情報とは?
4.請求項の種類と使い方は?
5.特許請求項の例は?
6.特許請求項における誤りは書き換えられる?
7.最後に:正確な特許請求項の作成に向けたポイント
特許請求項とは何か?
請求項には、発明に関する技術的な特徴や構成要素が含まれます。
特許庁は、請求項を特許の範囲を定めるものとし、請求項に記載された発明内容に限って特許を付与することになります。
したがって、請求項は特許出願書において非常に重要な部分です。
請求項は、発明の範囲を明確に定義し、他者の技術との差異を明確にすることが求められます。
特許請求項を正確に作成することは、特許の有効性や実用性に大きく関わってきます。
請求項の書き方について
まず、請求項は、発明の範囲を定義するために、構成要素を記載する必要があります。
(具体例:キャスター付きの椅子)
座部と、背もたれ部と、複数の脚部とを備えた椅子であって、
前記各脚部の下側に取り付けられたキャスターを含む、椅子。
こちらの例では、構成要素は、座部、背もたれ部、脚部、キャスターとなります。
請求項は、上記のように、通常は、「前提部分」と「特徴部分」に分かれています。
上の例で椅子にキャスターをつけることが新しい発明であったとします。
この場合、「~であって、」の部分は、従来の技術であることを明確にする部分であり(前提部分)、
「~を含む、」の部分が発明の特徴部分であることを明確にする部分です(特徴部分)
このように、請求項は、前提部分と特徴部分に分けて記載することが多いです。
請求項に含めるべき情報とは?
1.従来の技術と差別化できる技術的特徴を1つ記載すること
2.技術的特徴は、基本的には構成要素(部材)を記載すること
3.構成要素で表現することが難しい場合は、機能的な表現で記載すること
上述したとおり、請求項は、発明の範囲を定義する文章のことです。
このため、請求項は具体的に書きすぎると、発明の範囲が小さくなるというデメリットがあります。
一方で、あまりにも広い範囲で書きすぎると、従来の技術も含まれるおそれがあり、特許がとれないというデメリットがあります。
そこで、なるべく広い範囲で特許がとれるように、請求項には、従来の技術と差別化できる技術的特徴を1つだけ書くことがポイントです。
この技術的特徴としては、構成要素(部材)で特定することが好ましいですが、部材で特定することが困難な場合があったり、また、部材で特定すると範囲が狭くなるおそれがあったりします。
こういう場合は、機能的な表現で記載することも考えられます。
例えば、上のキャスター付きの椅子の例では、キャスターという部材を特定しています。
これを機能的な表現で書き換えた場合は、以下のようになります。
(具体例:キャスター付きの椅子)
座部と、背もたれ部と、複数の脚部とを備えた椅子であって、
前記各脚部の下側に取り付けられており、前方、後方、左右への移動が可能な球体を含む、椅子。
このように機能的に表現した場合は、特定の部材で表現した場合よりも、範囲が広くなる場合があります。
このため、機能的に表現したほうが好ましいように思われますが、範囲が不明確であると審査官から指摘されるデメリットもあります。
そこで好ましくはまず、メインの請求項には特徴部分を機能的に表現していき、サブの請求項にはその機能的な表現にあてはまる構成要素(部材)を特定していくことが多いです。
請求項の種類と使い方
請求項の種類には、「独立請求項」と「従属請求項」があります。
以下の具体例を交えて解説します。
(具体例:消しゴムつき鉛筆。鉛筆に消しゴムを取り付けたことが発明。)
【請求項1】 鉛筆本体と、その一端に消しゴム部分を取り付けた消しゴムと、を含む鉛筆。
(効果:鉛筆と消しゴムが1つになっているため、収納が容易、など)
【請求項2】前記消しゴム部分が、前記鉛筆本体の一端に着脱可能に取り付けられた状態である請求項1に記載の消しゴムつき鉛筆。
(効果:消しゴムが消費されても新しい消しゴムに交換できるので、長期的に使用でき、経済的など)
【請求項3】前記鉛筆本体の一端には、前記消しゴムと嵌合可能な穴部分を含む請求項2に記載の消しゴムつき鉛筆。
(効果:消しゴムの取り付けが容易など)
この例では、請求項1が独立請求項であり、請求項2と請求項3が従属請求項です。
請求項2では請求項1の構成要素に加えて、あらたな特徴(消しゴム部分と鉛筆との関係)を付加しています。
このように新しい構成を付加することを外的付加といいます。
一方で、請求項3では、請求項1の構成要素である鉛筆本体について、さらに具体的に構造的特徴(消しゴム部分と嵌合可能な穴部分を備えていること)を特定しています。
このように、すでに特定した構成要素をさらに具体化することを内的付加といいます。
このように、請求項は、独立請求項と従属請求項を組み合わせて表現することが多いです。
なぜこのような記載をするかというと、審査によっては請求項1が認められなくても、請求項2に従来の技術と異なる特徴的部分があり、
従属請求項の範囲には、特許が認められる場合があるためです。
(審査官は請求項すべてについて、特許性があるか審査をします。)
従属請求項についても、それぞれ従来の技術と差別化できる技術的特徴を1つずつ記載していくことが重要です。
特許請求項の例は?
(具体例:消しゴムつき鉛筆。鉛筆に消しゴムを取り付けたことが発明。)
【請求項1】 鉛筆本体と、その一端に消しゴム部分を取り付けた消しゴムと、を含む鉛筆。
(効果:鉛筆と消しゴムが1つになっているため、収納が容易、など)
【請求項2】前記消しゴム部分が、前記鉛筆本体の一端に着脱可能に取り付けられた状態である請求項1に記載の消しゴムつき鉛筆。
(効果:消しゴムが消費されても新しい消しゴムに交換できるので、長期的に使用でき、経済的など)
【請求項3】前記鉛筆本体の一端には、前記消しゴムと嵌合可能な穴部分を含む請求項2に記載の消しゴムつき鉛筆。
(効果:消しゴムの取り付けが容易など)
上の請求項1では、鉛筆の構成要素である、「鉛筆本体」と「消しゴム」とを含むことを明確にしています。
このように、構成要素を列挙するタイプは構成要素列挙型と呼ばれており、慣用されている書き方です。
注意点は、それぞれの構成要素の関係性がわかるように書くことであり、この例では、鉛筆と消しゴムの位置関係が特定されています。
上の例では、消しゴムつき鉛筆が新しい発明であると仮定していますが、
消しゴムつき鉛筆はすでに知られているものであり、請求項3に特徴部分があると仮定します。
この場合は、以下のように表現します。
【請求項1】 鉛筆本体と、その一端に消しゴム部分を取り付けた消しゴムと、を含む鉛筆であって、前記鉛筆本体の一端には、前記消しゴムと嵌合可能な穴部分を含む請求項2に記載の消しゴムつき鉛筆。
このように、「~であって、」という前提部分には従来の技術を特定して、「~を含む」という部分には発明の特徴部分を特定します。
これは「ジェプソン型」クレームと呼ばれるものであり、審査官に発明の特徴部分が明確に伝わるという点で慣用されている表現です。
ただし、この表現をする際には、前提部分には決して特徴部分を含めないように注意しましょう。
また、こちらの上の例では鉛筆のみの発明ですが、請求項には、部品と完成品をまとめることもできます。
(具体例)
【請求項1】 発光ダイオードを備える光源
【請求項2】 前記発光ダイオードは、前記発光ダイオードの発熱を放散する放熱材を備えている請求項1記載の光源
【請求項3】 前記発光ダイオードは、色温度を調節可能な調節機能を備えている請求項1記載の光源
【請求項4】 請求項1~3のいずれか一項に記載の光源と、前記光源の明るさを検知する検知センサーと、を備える照明装置。
この例では光源(部品)と照明装置(完成品)をまとめています。
特許請求項における誤りは書き換えられる?
誰が見ても明らかな誤記は、修正可能です。
(例えば、誤字など)
この場合、手続補正書に修正して提出します。
しかしながら、修正すると発明の範囲を広げるような誤記は修正できないため注意が必要です。
例えば、請求項で特定した構成要素を上位概念化する場合、発明の範囲が広がりますのでこのような修正はできません。
このような修正は新規事項の追加といわれます。
では、せっかく申請したのに修正したい場合はどうするのかというと優先権出願をすることがよく行われます。
優先権出願とは、先の出願に後から新規事項の追加をして出願することを言います。
最後に:正確な特許請求項の作成に向けたポイント
このため、特許請求項は正確に作成することをこころがけましょう。
特に表現はわかりやすくすることで範囲を明確にできます。
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初回は無料で相談可能ですのでぜひご相談いただければと思います。
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