
立体商標って何?普通の商標と何が違うの?
商品の形やボトルの形を商標登録できるって本当?
立体商標として登録できる形・できない形はどう決まるの?
こうした疑問に弁理士が解説します。
「商標」というと、文字やロゴのイメージを持つ方が多いと思います。
しかし実は、
商品の形状や包装の立体的な形も、商標として登録できる
ことをご存じでしょうか。
これが「立体商標」制度です。
立体商標は、1997年(平成9年)の商標法改正で日本に導入されました。それ以前は平面商標しか保護されていなかったのですが、立体的な形状にも独自のブランド価値があるとして、国際的な流れに合わせる形で制度が整備されました。
この記事では、
立体商標の基本 → 登録できる形・できない形 → 注意点と実務上のポイント
の順に整理します。
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結論:立体商標とは、商品・包装・広告物などの「立体的な形状」を商標として登録する制度です。
- キャラクター人形・ボトルの形・店舗の外観なども対象になり得る
- ただし「その商品らしい普通の形」は登録できない
- 機能上どうしても必要な形(不可欠な形状)は、使用による識別力を獲得しても登録不可
- 文字・図形と組み合わせた立体商標も登録可能
この記事でわかること
- 立体商標の定義と制度の背景
- 立体商標として登録できるもの・できないもの
- 識別力の考え方(使用による取得も含む)
- 出願時の手続きのポイント
- 特許権・意匠権との関係

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立体商標とは?制度導入の背景

立体商標とは、立体的形状、またはそれと文字・図形・記号・色彩との結合からなる商標のことです(商標法第2条第1項)。
日本では従来、平面商標(文字・図形・記号・色彩の結合など)のみが商標登録の対象でした。しかし、立体的な形状にもブランドとしての識別機能があると認識されるようになり、以下の理由から1997年(平成9年)の商標法改正で立体商標制度が導入されました。
立体商標制度が導入された理由
- 立体形状を平面図形に置き換えて商標登録する事例がすでに多数存在していた
- 不正競争防止法のもとでも、商品の形状を「商品表示」として保護する裁判例が多数あった
- 米国・英国・フランス・ドイツ・カナダ・ベネルクスなど多くの国がすでに立体商標を登録対象としており、国際的な制度調和が求められた
立体商標の対象範囲

立体商標として対象となる形状には、以下のものが含まれます。
- 商品そのものの形状(例:独特な形の菓子、フィギュア)
- 商品の包装の形状(例:特徴的なボトルや缶の形)
- 役務の提供の用に供する物の形状(例:サービスで使う器具・道具の形)
- 広告自体の形状(例:店頭の立体的な広告物・看板)
なお、「広告」には広告塔や店頭人形等が含まれます。一方、商品・役務を扱う実際の店舗の建築物は、その建築物全体が立体的識別標識(一種の広告塔)と認識されるような場合を除き、「広告」には含まれないとされています。
また、不動産は商標法上の「商品」に含まれないという従来の解釈はそのまま維持されています。
立体商標の登録要件:識別力が鍵

立体商標が登録されるためには、識別力があることが必要です。
ここが立体商標で最も重要なポイントです。
登録できない立体商標①:「その商品の普通の形」
需要者が「その指定商品またはその包装の形状そのものの範囲を出ないと認識する形状のみからなる立体商標」は登録できません(商標法第3条第1項第3号)。
たとえば、
- 自動車メーカーが「自動車らしい形」だけで商標登録しようとしても、それは指定商品「自動車」の普通の形状とみなされ、登録は認められません。
- 洋酒メーカーが「普通のボトル形状」で出願しても、同様に登録できません。
この基準については厳格な運用が求められています。需要者がその立体的形状について「この商品はある特定の会社のものだ」と認識できるような、際立った特徴が必要です。
登録できない立体商標②:機能上不可欠な形状
「商品または商品の包装の機能を確保するために不可欠な立体的形状のみからなる商標」は、たとえ使用によって識別力を獲得した場合でも、登録できません(商標法第4条第1項第18号)。
具体例としては、
- 丸くせざるをえない自動車のタイヤ
- 球の形にせざるをえない野球用ボール
といった、その商品と同種の商品を製造・販売するために必ず採らざるを得ない形状が該当します。
なぜこの規定が設けられたのか?商標権は更新を繰り返すことで半永久的に保有できる権利です。もし機能上不可欠な形状を商標登録できるとしてしまうと、その商品自体・包装自体の生産・販売を事実上半永久的に独占させ、自由競争を制限するおそれがあるためです。
使用によって識別力を獲得した場合は登録できる

最初は「普通の形状」として識別力がない立体商標であっても、
長期間使用した結果、需要者の間でその形が特定の出所を表すと認識されるようになった場合
は、商標法第3条第2項の規定により登録が認められます。
これを「使用による識別力の取得」といいます。
ただし、上述の「機能上不可欠な形状」については、使用によって識別力を獲得しても登録は認められません(商標法第4条第1項第18号)。この例外は覚えておく必要があります。
また、識別力のない立体的形状に識別力のある文字・図形・記号等が付されている商標であっても、全体として識別力が認められれば、立体商標として登録が可能です。ただしその場合、登録後の第26条(商標権の効力が及ばない範囲)の規定により、立体形状部分のみの識別力の問題は対応されることになります。
立体商標の出願手続きのポイント

立体商標を出願する際には、通常の商標出願と異なる点があります。
①「立体商標である旨」を願書に明記する
商標登録を受けようとする商標が立体商標である場合には、その旨を願書に記載しなければなりません(商標法第5条第2項)。
なぜこの規定が必要なのか。立体商標の場合でも、願書上は平面(斜視図等)で表現されます。そのため、斜視図だけでは平面商標として出願しているのか、立体商標として出願しているのか判断がつかない場合があります。出願人の意思を確認するために、願書への明記が義務付けられています。
②商標見本は複数方向から表示する
立体商標は、二方向以上の図面または写真によって記載します。必要に応じて立体的な構成等を説明する書面(説明書)を添付することもできます。
立体商標の出願時チェックポイント
- 願書に「立体商標」と明記すること
- 商標見本は複数方向(二方向以上)の図面・写真で表示すること
- 必要に応じて構成を説明する書面(説明書)を添付すること
- 指定商品・役務の形状として普通に使われていないかを事前に確認すること
BrandAgentでは、これまで2,000件以上の商標出願をサポートしています。立体商標の出願についても、識別力の判断や記載方法を含めてご案内できます。
特許権・意匠権との関係
立体商標を登録・使用する際には、他の知的財産権との関係にも注意が必要です。
意匠権・特許権との抵触
商標権者・専用使用権者・通常使用権者は、登録商標の使用がその商標登録出願前の他人の特許権・実用新案権・意匠権と抵触するときは、その抵触する部分についての態様による使用ができません(商標法第29条)。
立体商標制度の導入に伴い、商標権と特許権・実用新案権との抵触が生じ得ることが想定されるようになったため、これらの知的財産権も抵触関係の対象として追加されています。
特許権の存続期間満了後の商標使用
商標登録出願の日前または同日の特許出願に係る特許権が商標権と抵触する場合、その特許権の存続期間が満了したときは、原特許権者は原特許権の範囲内において商標の使用をする権利を有します(商標法第33条の2)。
これは、特許出願が先または同日である場合、特許権者は商標権者から制約を受けずに自己の特許発明を実施できますが、特許権が満了した後も商標権が有効であるとその後一切実施できなくなるため、不合理が生じることへの対応として設けられた規定です。
ただし、この権利が認められるのは、原特許権の範囲内かつ不正競争を目的としない場合に限られます。
他の知的財産権との関係まとめ
- 登録商標の使用が他人の特許権・意匠権と抵触する場合、その態様での使用は制限される
- 商標権と特許権が抵触する場合、特許出願が先なら特許権者は商標権者の制約を受けない
- 特許権の存続期間が満了した後も、原特許権者は一定の範囲で商標を使用する権利を持つ
- ただし不正競争の目的である場合には認められない
よくある質問(FAQ)
- Q. 商品の形を立体商標として登録できますか?
A. 可能です。ただし、その商品の普通の形状とみなされる場合は識別力がないとして登録できません。長期間使用して消費者に認知された場合は、使用による識別力の取得が認められることがあります。 - Q. ボトルや容器の形状は立体商標になりますか?
A. 「包装の形状」も立体商標の対象です。洋酒のボトル形状が代表的な例として挙げられています。ただし、普通のボトル形状では識別力がないと判断される可能性が高いため、特徴的な形状であることが重要です。 - Q. 文字・ロゴと組み合わせた立体商標は登録できますか?
A. できます。識別力のない立体形状であっても、識別力のある文字・図形等と組み合わせることで、全体として識別力があると認められれば登録が可能です。 - Q. 立体商標の出願で注意すべき点は何ですか?
A. 願書に「立体商標」と明記すること、商標見本を複数方向から記載することが必要です。また、指定商品の普通の形状でないことや、機能上不可欠な形状でないことを確認しておくことが重要です。 - Q. 立体商標と意匠権・特許権を併用できますか?
A. 立体的な形状については、意匠権・特許権と立体商標の双方で保護を検討することが可能です。ただし、それぞれの権利が抵触する場合の調整規定があるため、専門家に相談のうえ戦略的に組み合わせることをおすすめします。
まとめ

この記事のポイント
- 立体商標は商品・包装・広告物等の「立体的な形状」を保護する商標で、1997年の商標法改正で導入
- 「その商品の普通の形状」は識別力がなく登録できない。識別力の判断は厳格
- 機能上不可欠な形状は、使用で識別力を獲得しても登録不可(自由競争保護のため)
- 長年の使用で消費者に浸透した形状は、使用による識別力の取得で登録できる場合がある
- 出願時は「立体商標」の明記と、複数方向からの商標見本の記載が必要
- 意匠権・特許権との抵触関係にも注意が必要
立体商標は、ブランドの「形」を守る強力な手段です。一方で、識別力の判断が難しく、登録できるかどうかの見極めには専門的な知識が必要です。自社の商品形状・パッケージ・キャラクターなどの保護をお考えの方は、お気軽にご相談ください。