
EU商標(EUTM)って何?費用はいくらかかる?
27カ国まとめて1つの出願でカバーできるって本当?
更新料や注意点も教えてほしい。
こうした疑問に、弁理士がまとめて解説します。
EU商標(EUTM:European Union Trade Mark)は、1回の出願でEU加盟27カ国すべてをカバーできる非常にコストパフォーマンスの高い商標制度です。
ヨーロッパ市場でビジネスを展開する方にとって、EUTMは最も効率的なブランド保護手段のひとつです。
この記事では、EUIPO公式料金をもとに、EU商標の出願費用・更新費用・メリット・注意点をわかりやすく解説します。
結論(先に要点)
- 1出願でEU27カ国をカバー:各国に個別出願するより大幅にコスト削減できます。
- 出願料は1区分€850(電子出願):2区分目は€50追加、3区分目以降は€150/区分追加です。
- 更新料は10年ごとに1区分€850(電子):同じ料金体系で更新できます。
- イギリスは含まれない:Brexit後、UKへの保護はEUTMとは別途必要です。
- 登録後5年間は使用義務あり:5年以上使用しないと取消リスクがあります。
EU商標の出願方針や費用見積もりが不安な場合は、まずはご相談ください。

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- 特許サポート件数1,000件以上、商標申請代行件数2,000件以上の弁理士です。
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この記事の構成
- 1. EU商標(EUTM)とは
- 2. EU商標の公費(EUIPO公式料金表)
- 3. 出願費用の詳細
- 4. 更新費用
- 5. その他の手続き費用
- 6. 代理人費用の目安
- 7. EU商標のメリット
- 8. EU商標の注意点
- 9. よくある質問(FAQ)
1. EU商標(EUTM)とは
EU商標(EUTM)とは、EUIPO(欧州連合知的財産庁・スペイン・アリカンテ)に出願することで、EU加盟27カ国すべてで有効な商標権を1回の手続きで取得できる制度です。
存続期間は登録日から10年間で、更新すれば半永久的に維持できます。
以前は「共同体商標(CTM)」と呼ばれていましたが、2017年以降は「EU商標(EUTM)」に名称が変更されました。
なお、2020年1月のBrexit(英国EU離脱)以降、イギリスはEUTMの保護対象外です。英国での保護には別途UKIPO(英国知的財産庁)への出願が必要です。
EUTMの基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 管轄機関 | EUIPO(欧州連合知的財産庁・スペイン・アリカンテ) |
| 保護対象国 | EU加盟27カ国(イギリスを除く) |
| 存続期間 | 登録日から10年(更新回数に制限なし) |
| 審査期間の目安 | 約4〜6ヶ月(異議申立がない場合) |
| マドプロとの関係 | EUをWIPOのマドリッド制度で指定することも可能 |
| 使用義務 | 登録後5年以内にEU域内で使用開始が必要 |
| 出願言語 | EU公用語24言語のいずれか(第2言語も指定) |
2. EU商標の公費(EUIPO公式料金表)
EU商標の費用は、①EUIPOへの公的手数料と②代理人費用に分かれます。
EUIPOの料金は区分ごとの「従量制」です。1区分目と2区分目・3区分目以降で料金が異なります。
以下はEUIPO公式の最新料金です(通貨:ユーロ)。
3. 出願費用の詳細
EUIPO(欧州連合知的財産庁)個人商標 出願料金表
| 手続きの種類 | 費用(EUR) | 目安金額・円換算※ | 備考 |
|---|---|---|---|
| 個人商標 出願料・第1区分(電子出願) | €850 | 約136,000円 | オンライン出願の基本料金 |
| 個人商標 出願料・第1区分(紙出願) | €1,000 | 約160,000円 | 紙出願は割高。電子出願を推奨 |
| 第2区分の追加料金(電子出願) | €50 | 約8,000円 | 2区分目のみの追加料金 |
| 第3区分以降の追加料金(1区分あたり・電子出願) | €150 | 約24,000円 | 3区分目・4区分目・…各区分に適用 |
| 団体商標・証明商標 出願料(電子出願) | €1,500 | 約240,000円 | 通常の個人商標より高額 |
| 団体商標・証明商標 第2区分追加(電子) | €50 | 約8,000円 | 個人商標と同額 |
| 団体商標・証明商標 第3区分以降(1区分あたり) | €150 | 約24,000円 | 個人商標と同額 |
※円換算は1EUR=約160円として計算(為替レートにより変動します)。最新レートをご確認ください。
出典:EUIPO公式 Trade Mark Fees
区分数別の出願料合計(電子出願・個人商標)
| 区分数 | 合計費用(EUR) | 目安(円) |
|---|---|---|
| 1区分 | €850 | 約136,000円 |
| 2区分 | €900(€850+€50) | 約144,000円 |
| 3区分 | €1,050(€900+€150) | 約168,000円 |
| 4区分 | €1,200(€1,050+€150) | 約192,000円 |
| 5区分 | €1,350(€1,200+€150) | 約216,000円 |
出願料の支払いについて
出願料は出願日から1ヶ月以内に支払う必要があります。
1ヶ月以内に支払わないと、仮出願日が失効します。
支払いはクレジットカード・銀行振込・EUIPO当座預金口座から行えます(ユーロのみ)。
BrandAgentではEU商標を含む外国商標の出願サポートを行っています。
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4. 更新費用
EUTMの存続期間は10年で、更新することで継続できます。
更新料は出願料と同じ料金体系です(1区分€850・2区分目€50・3区分目以降€150)。
更新期限は満了日前6ヶ月から満了日が属する月の末日までです。
EUIPO EUTM更新料金表(電子申請)
| 手続きの種類 | 費用(EUR) | 目安金額・円換算※ | 備考 |
|---|---|---|---|
| 個人商標 更新料・第1区分(電子申請) | €850 | 約136,000円 | 出願料と同額 |
| 個人商標 更新料・第1区分(紙申請) | €1,000 | 約160,000円 | 紙申請は割高 |
| 第2区分の追加更新料(電子) | €50 | 約8,000円 | 出願時と同額 |
| 第3区分以降の追加更新料(1区分あたり・電子) | €150 | 約24,000円 | 出願時と同額 |
| 猶予期間内の更新(期限後6ヶ月以内) | 追加料金あり | — | 通常更新料に加算 |
※円換算は1EUR=約160円として計算(為替レートにより変動します)。
出典:EUIPO公式 Trade Mark Fees
更新の期限と猶予期間
EUIPOは満了日の6ヶ月前に書面でリマインドを送付します(他国と異なる点です)。
更新申請は満了日の6ヶ月前から、満了日が属する月の末日までに行う必要があります。
その後さらに6ヶ月の猶予期間があり、追加料金を支払えば更新できます。
猶予期間を過ぎると商標権が消滅し、登録簿から削除されます。
なお、EUTMを更新せずに特定のEU加盟国のみで権利を維持したい場合は、猶予期間終了後3ヶ月以内に各国への「転換(Conversion)」申請ができます。
5. その他の手続き費用
EUIPO その他の手続き料金表
| 手続きの種類 | 費用(EUR) | 目安金額・円換算※ | 備考 |
|---|---|---|---|
| 異議申立(Opposition) | €320 | 約51,200円 | 公告後3ヶ月以内。約1件に5件が異議申立を受ける |
| 取消申請(Revocation) | €630 | 約100,800円 | 不使用取消・無効宣言の申請 |
| 無効宣言申請(Declaration of Invalidity) | €630 | 約100,800円 | 登録無効の申請 |
| 審判請求(Appeal) | €720 | 約115,200円 | 決定不服の審判請求 |
| 転換申請(Conversion) | €200 | 約32,000円 | EUTMを各国商標に転換する申請(1区分) |
※円換算は1EUR=約160円として計算(為替レートにより変動します)。
出典:EUIPO公式 Trade Mark Fees
6. 代理人費用の目安
日本からEUTMに出願する場合、日本の弁理士事務所を通じて手続きするのが一般的です。
EUの代理人は必須ではありませんが(EU域外の出願人も直接出願可能)、専門家の活用をおすすめします。
| 費用の種類 | 目安金額(円) | 内容 |
|---|---|---|
| 事前調査費用 | 30,000〜80,000円程度 | EU域内の類似商標を調査・報告 |
| 出願代理費用(1区分) | 50,000〜120,000円程度 | 書類作成・提出・庁費用込み |
| 合計目安(調査〜登録まで・1区分) | 約22万円〜34万円程度 | 事務所・区分数により変動 |
※代理費用に統一した基準はなく、各代理人が自由に設定できます。上記はあくまで目安です。
特許事務所BrandAgentでは、これまで2,000件以上の商標出願をサポートしています。EU商標の出願方針や費用見積もりもお気軽にご相談ください。
7. EU商標のメリット
① 1出願でEU27カ国を一括保護
EUTMの最大のメリットは、1回の出願・1つの登録・1つの更新でEU全27カ国をカバーできることです。
各国に個別に出願する場合と比べて、手続きの手間・費用・管理コストを大幅に削減できます。
② コストパフォーマンスが高い
仮に主要5カ国(ドイツ・フランス・イタリア・スペイン・オランダ)に個別出願した場合と比較すると、EUTMの方が大幅に費用を抑えられます。
2カ国以上のEU加盟国でビジネスを行う場合は、EUTMの方がコスト面で有利になることが多いです。
③ 新EU加盟国が自動的に対象に
将来EUに新加盟国が加わった場合、既存のEUTMは自動的にその国での保護対象になります。
追加費用なしで保護範囲が拡大するのもEUTMならではのメリットです。
④ マドプロと組み合わせて活用できる
マドリッド制度(マドプロ)でEUを指定することで、日本の出願を基礎に複数の国・地域への国際出願を一括で行うことも可能です。
欧州以外の国にも同時に出願したい場合は、マドプロの活用が効率的です。
⑤ 中小企業向けSMEファンドの補助がある
EUIPOは中小企業(SME)向けに「SMEファンド」という補助金制度を提供しています。
対象企業はEUTM出願料の最大75%を返金してもらえるため、費用負担を大幅に抑えられます(制度の開放期間・予算に限りあり)。
8. EU商標の注意点
① イギリスは保護対象外(Brexit)
2020年1月以降、イギリスはEUを離脱したため、EUTMはイギリスでは有効ではありません。
英国での商標保護が必要な場合は、UKIPO(英国知的財産庁)に別途出願が必要です。
② 登録後5年以内の使用開始が義務
EUTMは登録後5年以内にEU域内で実際に使用を開始する必要があります。
5年以上使用しない場合、第三者から取消申請を受けるリスクがあります。
「使用」はEU加盟国のうち少なくとも1カ国での実際の商業使用が必要です。
③ どの国でも拒絶理由があれば全体が拒絶される
EUTMは「単一の権利」です。EU加盟国のいずれかで登録できない理由がある場合(例:その国の言語で商品を説明する言葉になっている場合)、EU全体で拒絶される可能性があります。
この場合、各国への転換申請(Conversion)で対応する方法があります。
④ 異議申立の確率が比較的高い
EU商標出願の約5件に1件が異議申立を受けるとされています。
公告後3ヶ月間の異議申立期間があり、先行商標権者から申し立てられることがあります。
出願前の十分な調査と、異議申立への対応準備が重要です。
⑤ 出願言語に注意が必要
出願書類はEUの公用語24言語のいずれかで作成します。
また、EUIPOの手続き言語として第2言語(英語・フランス語・ドイツ語・スペイン語・イタリア語のいずれか)を必ず指定する必要があります。
英語で出願するのが最も一般的です。
9. よくある質問(FAQ)
- Q. EU商標の審査期間はどれくらいですか?
- 異議申立がない場合、出願から登録まで約4〜6ヶ月が目安です。異議申立が発生した場合は12〜18ヶ月以上かかることがあります。
- Q. 日本語の商標名でEUに登録できますか?
- はい、日本語(漢字・ひらがな・カタカナ)の商標もEUで登録できます。ただし、EU加盟国のいずれかの言語で商品・サービスを説明する語として認識されると拒絶されることがあります。事前調査が重要です。
- Q. イギリスでも保護するにはどうすればいいですか?
- Brexit以降、EUTMはイギリスには効力が及びません。英国での保護にはUKIPO(英国知的財産庁)への個別出願が必要です。なお、Brexit前に登録されたEUTMはUKに「複製商標」として自動移行されています。
- Q. EUTMとマドプロはどう使い分けるべきですか?
- EUのみに出願する場合はEUIPOへの直接出願が効率的です。EU以外の複数の国にも同時に出願したい場合はマドプロが有利になることがあります。状況に応じて弁理士に相談することをおすすめします。
- Q. 費用を抑えるコツはありますか?
- 必要な区分数を絞ること・電子出願を活用すること・EUIPOのSMEファンド補助金(中小企業向け)を利用することが有効です。SMEファンドは出願料の最大75%が返金される制度です(開放期間・予算に限りあり)。
「何区分で出願すればいい?」「費用の見積もりが知りたい」「イギリスにも保護が必要」など、状況に合わせてアドバイスします。
まずはお気軽にご相談ください。
まとめ
EU商標(EUTM)は1出願でEU加盟27カ国を一括保護できる、コストパフォーマンスの高い商標制度です。
出願料は電子出願で1区分€850・2区分目€50・3区分目以降€150/区分、更新料も同額です。
代理人費用を含めると1区分あたり22万〜34万円程度が目安です。
Brexit後のイギリス除外・登録後5年の使用義務・全体拒絶リスクなど、独特の注意点もあります。
ヨーロッパ市場でのブランド保護を検討している方は、早めに弁理士にご相談ください。