欧州出願

EU商標(EUTM)の更新手続きと費用|期限・猶予期間・部分更新を弁理士が解説

悩んでいる方

EU商標(EUTM)の更新はどうやるの?
更新期限はいつ?費用はいくらかかる?
期限を過ぎたらどうなる?猶予期間はある?

こうした疑問に、弁理士がまとめて解説します。

EU商標(EUTM)は10年ごとに更新手続きが必要です。
更新を忘れると商標権が消滅し、EU加盟27カ国すべてでの保護を一度に失うことになります。
この記事では、EU商標の更新手続きの流れ/期限/費用/猶予期間/他国との違いをわかりやすく解説します。

結論(先に要点)

  • 更新期限は出願日から10年:満了日前6ヶ月から申請・支払いができます。
  • EUIPOから6ヶ月前にリマインド通知が届く:他国にない便利な制度です。
  • 猶予期間は6ヶ月(25%割増):期限後6ヶ月以内は25%の割増料金で更新可能です。
  • 更新料は出願料と同額:1区分€850(電子)・2区分目€50・3区分目以降€150/区分です。
  • 部分更新が可能:一部の指定商品・役務のみを更新することもできます。
  • マドプロ経由の登録はWIPOで更新:EUIPOではなくWIPOへの更新が必要です。

更新期限が近い方・期限を過ぎてしまった方は、早めにご相談ください。

記事の信頼性

  • 関西の特許事務所と大手法律事務所と大手企業知財部で合計10年ほどの知財実務を積んできました。
  • 特許サポート件数1,000件以上、商標申請代行件数2,000件以上の弁理士です。
  • 京都で特許事務所BrandAgentを開業しています。
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  • 初心者の方でもわかりやすいように記事を書くことが得意です。

この記事の構成

  • 1. EU商標の更新制度とは
  • 2. 更新手続きの流れ
  • 3. 更新に必要なもの
  • 4. 更新費用(EUIPO公式料金表)
  • 5. 期限を過ぎた場合の対応
  • 6. 更新しなかった場合の選択肢(転換制度)
  • 7. マドプロ経由の登録の更新
  • 8. 日本・中国・韓国・台湾との比較
  • 9. よくある注意点
  • 10. よくある質問(FAQ)

1. EU商標の更新制度とは

EU商標(EUTM)の存続期間は、出願日から10年間です。
継続して商標権を維持するには、10年ごとに更新申請と更新料の支払いが必要です。
更新回数に制限はなく、手続きを繰り返すことで半永久的に商標権を維持できます。

重要な点として、更新に使用実績の証明は不要です。
ただし、登録後5年以上EU域内で商標を使用していない場合は、第三者から取消申請(Revocation)を受けるリスクがあります。

2. 更新手続きの流れ

EU商標の更新手続きは以下のステップで進みます。

  1. EUIPOからのリマインド受領:満了日の約6ヶ月前にEUIPOから書面で通知が届く
  2. 更新情報の確認:登録番号・区分・指定商品役務・費用を確認する
  3. 代理人への依頼:日本の弁理士事務所または欧州の代理人に更新を依頼する
  4. オンラインで更新申請・支払い:EUIPOのオンラインフォームから申請・料金を支払う
  5. 更新確認書の受領:EUIPOから更新確認書が発行される(実際の満了日の数日後)

EU域外(日本など)に居住する出願人は、EUIPOと直接やりとりすることも可能ですが、EU商標の実務に精通した代理人に依頼することを強くおすすめします。
日本の弁理士事務所を通じれば、欧州代理人との連絡も含めてまとめてサポートしてもらえます。

更新の申請期限について

更新申請と更新料の支払いは、満了日前6ヶ月から、満了日が属する月の末日までに行う必要があります。
例えば満了日が2030年4月16日の場合、申請期限は2030年4月30日(その月の末日)です。

また、更新の効力は元の存続期間の満了日の翌日から10年間となります。
更新を猶予期間中に行った場合も、延長期間は満了日の翌日から計算されます。

3. 更新に必要なもの

  • EUTM登録番号
  • 更新する区分・指定商品役務の確認(部分更新の場合は更新する範囲を指定)
  • 更新料(ユーロでの支払い)

アメリカのSection 8のような使用証明書の提出は不要です。
書類は非常にシンプルで、EUIPOのオンラインシステムから申請できます。

EU商標の更新を検討されている方は、弁理士への相談をおすすめします。
BrandAgentではEU商標の更新サポートも行っています。
👉 特許事務所BrandAgent 公式サイトはこちら

4. 更新費用(EUIPO公式料金表)

EU商標の更新料は出願料と同じ料金体系です。
電子申請が推奨されており、紙申請より安価です。

EUIPO(欧州連合知的財産庁)EUTM更新料金表

手続きの種類 費用(EUR) 目安金額・円換算※ 備考
個人商標 更新料・第1区分(電子申請) €850 約136,000円 出願料と同額。電子申請を推奨
個人商標 更新料・第1区分(紙申請) €1,000 約160,000円 紙申請は割高
第2区分の追加更新料(電子) €50 約8,000円 2区分目のみ
第3区分以降の追加更新料(1区分あたり・電子) €150 約24,000円 3区分目・4区分目・…各区分に適用
猶予期間内の更新(25%割増) 通常料金×1.25 満了後6ヶ月以内に限り申請可能

※円換算は1EUR=約160円として計算(為替レートにより変動します)。最新レートをご確認ください。
出典:EUIPO公式 Trade Mark Fees

区分数別の更新料合計(電子申請・個人商標)

区分数 期限内(EUR) 猶予期間(25%割増・EUR) 期限内目安(円)
1区分 €850 €1,062.50 約136,000円
2区分 €900 €1,125 約144,000円
3区分 €1,050 €1,312.50 約168,000円
4区分 €1,200 €1,500 約192,000円

代理人費用の目安(日本の弁理士事務所経由の場合)

費用の種類 目安金額(円) 内容
更新代理費用(1区分) 30,000〜80,000円程度 書類確認・申請・庁費用込み
合計目安(1区分・期限内) 約17万円〜22万円程度 事務所・区分数により変動

※代理費用に統一した基準はなく、各代理人が自由に設定できます。上記はあくまで目安です。

特許事務所BrandAgentでは、これまで2,000件以上の商標出願をサポートしています。EU商標の更新管理もお気軽にご相談ください。

5. 期限を過ぎた場合の対応

満了日を過ぎても、その後6ヶ月以内であれば25%の割増料金を支払うことで更新できます(猶予期間)。
この猶予期間は満了日の翌日から自動的に開始され、別途の申請は不要です。

猶予期間を過ぎると商標権は消滅します。
EUIPOは消滅後約2週間で登録簿に「失効」と記録し、その後正式に登録から削除します。
消滅した商標権を復活させることは原則できません。再取得には改めて出願が必要です。

期限と対応のまとめ

タイミング 対応 料金(1区分・電子)
満了日前6ヶ月〜満了日の末日 通常の更新申請(推奨) €850
満了日翌日〜6ヶ月以内(猶予期間) 25%割増での更新申請 €1,062.50
猶予期間の6ヶ月超 商標権消滅(復活不可)

6. 更新しなかった場合の選択肢(転換制度)

EUTMを更新しない場合でも、特定のEU加盟国のみでブランドを守りたい場合は「転換(Conversion)」申請ができます。
転換申請とは、EUTMを各EU加盟国の国内商標出願に切り替える手続きです。
この申請は猶予期間終了後3ヶ月以内に行う必要があります。

転換申請のメリットは、EUTMの出願日(または優先権日)を各国商標に引き継げることです。
ビジネスを続ける国が絞られてきた場合など、コスト削減のために活用できる選択肢です。

7. マドプロ経由の登録の更新

マドリッド制度(マドプロ)経由でEUを指定した国際登録の場合、更新はEUIPOではなくWIPO(世界知的財産機関)に対して行います
EUIPOはWIPOから更新の通知を受け取るだけで、直接は関与しません。

マドプロ経由の登録をお持ちの場合は、更新手続きの方法が異なるため、代理人に早めに確認することをおすすめします。

8. 日本・中国・韓国・台湾との比較

項目 EU(EUIPO) 日本 中国 韓国 台湾
存続期間 10年 10年 10年 10年 10年
更新申請期間 満了6ヶ月前〜末日 満了6ヶ月前〜満了日 満了12ヶ月前〜満了日 満了1年前〜満了日 満了6ヶ月前〜満了日
猶予期間 6ヶ月(25%割増) 6ヶ月(割増) 6ヶ月(割増) 6ヶ月(割増) 6ヶ月(倍額)
更新料(1区分・電子) €850
(約136,000円)
約43,800円 CNY 500
(約10,000円)
KRW 300,000
(約30,000円)
NTD 4,000
(約18,000円)
リマインド通知 あり(6ヶ月前) なし なし なし なし
部分更新 可能 可能 不可 不可 不可
使用実績の証明 不要 不要 不要 不要 不要

EU商標はアジア各国と比べて更新料が高めですが、EU27カ国を一括して維持できる点を考えると、各国別に更新するよりもコストパフォーマンスは高いです。
また、EUIPOだけが6ヶ月前にリマインド通知を送付する・部分更新が可能という独自の制度を持っています。

9. よくある注意点

  • リマインドが届かない場合もある:EUIPOはリマインドを送付しますが、登録している住所・連絡先が古い場合は届かないことがある。代理人の連絡先を最新の状態に保つことが重要
  • 猶予期間の料金は25%割増:台湾(倍額)や他国(固定額追加)と異なり、EUIPOは通常料金に25%上乗せされる
  • 部分更新を活用できる:使用していない指定商品・役務は更新時に削除することでコストを抑えられる。ただし一度削除した商品・役務は復元できない
  • 5年以上不使用は取消リスクあり:更新できても登録後5年以上EU域内で使用していない場合、第三者から取消申請を受けるリスクがある
  • マドプロ経由の更新はWIPOへ:EUIPOに直接更新を申請しないよう注意。WIPOへの手続きを忘れずに
  • イギリスは別途管理が必要:Brexit移行で自動付与されたUK商標は、別途UKIPOで更新管理が必要

10. よくある質問(FAQ)

Q. EU商標の更新はいつから申請できますか?
満了日の6ヶ月前から申請できます。EUIPOは満了日の約6ヶ月前に書面でリマインドを送付します。ただし、リマインドが届かない場合もあるため、自社でも期限管理を行うことをおすすめします。
Q. EU商標の更新に使用証明は必要ですか?
不要です。アメリカのSection 8のような使用証明の提出義務はありません。ただし、登録後5年以上EU域内で使用していない場合は、第三者から取消申請を受けるリスクがあります。
Q. 更新時に指定商品・役務を変更できますか?
指定商品・役務を削除(縮小)することはできますが、拡大することはできません。使用していない指定商品を削除して更新料を節約することも可能です(部分更新)。ただし削除した商品・役務は復元できません。
Q. 更新期限を過ぎてしまいました。どうすればいいですか?
満了日の翌日から6ヶ月以内であれば、通常料金に25%を上乗せした料金で更新できます。まずすぐに弁理士に相談してください。6ヶ月を過ぎると商標権が消滅し、復活はできません。
Q. マドプロ経由でEUを指定した商標の更新方法は?
マドプロ経由の国際登録の更新はEUIPOではなく、WIPOに対して行います。WIPOへの更新申請を忘れると、EU域内での保護も失われます。早めに代理人に確認してください。
Q. EU商標を更新しない場合、EU各国での権利を維持できますか?
はい、転換(Conversion)制度を利用することで、猶予期間終了後3ヶ月以内に特定のEU加盟国の国内商標出願に切り替えられます。EUTMの出願日(優先権日)も引き継がれます。ただし、各国への転換費用が別途かかります。
EU商標の更新について相談したい方へ
「更新期限はいつ?」「費用の見積もりが知りたい」「期限を過ぎてしまった」「部分更新の検討をしたい」など、どんな状況でもまずはご相談ください。
状況を確認のうえ、最適な対応をご提案します。

まとめ
EU商標の更新は、満了日前6ヶ月〜満了日の末日まで申請可能・猶予期間は6ヶ月(25%割増)です。
更新料は電子申請で1区分€850・2区分目€50・3区分目以降€150/区分と、出願料と同額です。
代理人費用を合わせると1区分あたり17万〜22万円程度が目安です。
EUIPOは満了6ヶ月前にリマインドを送付し、部分更新も可能という、他国にない便利な制度があります。
マドプロ経由の登録はWIPOで更新する点、5年以上不使用の取消リスクにも注意しながら、早めの管理・対応をおすすめします。


商標登録・更新をお考えの方は、お気軽にご相談ください。

特許事務所BrandAgent
弁理士 叶野徹

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  • この記事を書いた人

叶野徹

京都の特許事務所BrandAgentを運営している弁理士です。関西の特許事務所→大手法律事務所→大手企業知財部→BrandAgentを設立。特許1,000件以上、商標2,000件以上をこれまでにサポートしています。趣味は温泉・サウナです。

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