化学特許の取り方を教えてほしい。
こうした疑問に答えます。
特許とは、発明や製品の独占的な権利を保護するための法的な権利です。
しかし、特許を取得するには、厳しい審査が必要であり、多くの注意点があります。
本記事では、化学特許の取得方法や注意点について解説します!
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本記事の構成
- 化学特許とは何か?
- 化学特許の取得方法は?
- 特許取得に必要な条件とは?
- 特許出願に必要な書類とは?
- 特許審査の流れとは?
- 特許出願の注意点とは?
- 化学特許を取得するためのポイントとは?
- 化学特許を活用する方法とは?
- 化学特許を侵害しないための注意点とは?
- まとめ:化学特許の取得方法と注意点について
化学特許とは何か?
化学特許とは、化学分野において発明された新しい技術や製品について、発明者に独占的な権利を与えることで、その発明や製品を保護するための法的な権利のことを指します。
化学特許は、化学分野に限定されるものではありませんが、化学分野においては、新しい化合物の発明や、化学反応の新しい方法の発明などが特許対象となります。
化学特許を取得することで、発明者は、その技術や製品を独占的に使用することができます。
結果として、他者による模倣や不正競争から守られます。
また、化学特許を持つことは、企業や研究機関にとって、競争優位性を維持するためにも重要な要素となっています。
化学特許の種類としては、新しい化学物質の発明、組成物の発明、化学物質の製造方法の発明、用途に関する発明などがあります。
新しい化学物質の発明
化学特許には新しい化学物質の発明があげられます。
新しい化学物質は、例えば以下のように特定します。
【請求項1】
下記式(1)で表されるフルオレン化合物。
(式中、Z1a、Z1bは多環式C16-18アレーン環、…を示す。)
引用:特開2022-168461号広報(一部筆者が記載を省略。)
新しい化学物資は、通常、上のように構造式を用いて特定します。
ただし、構造式で特定することが難しい場合はパラメータを用いて特定することもできます。
新しい化学物質は、必ずしも何らかの用途がある必要はありません。
新しいものであれば特許をとることができます。
化学物質の発明のポイント
- 通常、構造式を用いて特定する。
- 必ずしも用途は必要がない。
新しい組成物の発明
新しい組成物の発明とは、例えば、以下のようなものがあげられます。
【請求項1】
樹脂と、カーボンナノチューブと、下記式(1)
【化1】
[式中、R1は…を示し、
X1aおよびX1bはそれぞれ独立して下記式(X1)
【化2】
(式中、R4およびR5は、…を示す。]
で表される化合物とを含む樹脂組成物。
引用:特開2022-57221号広報(一部筆者が記載を省略。)
組成物では、上述のように、樹脂、カーボンナノチューブ、式(1)で表される化学物質といった成分が特定されています。
組成物の発明では、さらにそれぞれの成分について質量(割合)も特定したり、用途を特定したりすることもあります。
組成物の発明では、何らかの用途がある必要があります。
組成物の発明のポイント
- 組成物では、複数の化学物質の成分を特定する。
- さらに、必要に応じて、各成分の割合、用途なども特定する。
- 何らかの用途がある必要がある。
新しい化学物質の製造方法の発明
新しい化学物質の製造方法とは、例えば、以下のようなものがあげられます。
【請求項1】
下記式(2)で表される化合物をエーテル化剤でエーテル化するエーテル化工程を含む、下記式(1)で表されるビスナフトエ酸誘導体の製造方法。
【化1】
(式中、…を示す)
引用:特開2022-159218号広報(一部筆者が記載を省略。)
新しい化学物質の製造方法は、「既知」の化学物質であっても、製造方法が新しいものであれば特許をとることが可能です。
つまり、化学物質Aがあって、化学物質Aはすでに知られているものであったとしても、従来は化学物質AはXというルートでしか製造方法がなかったとします。
これに対し、新たにYというルートで化学物質Aを製造できた場合は、このYという製造方法の特許をとることができます。
製造方法の発明のポイント
- 製造方法の発明は、化学物質の製造方法を特定する。
- 製造方法が新しければ、製造される化学物質が既知であってもよい。
用途に関する発明
用途に関する発明とは、「ある物の未知の属性を発見し、この属性により、その物が新たな用途への使用に適することを見いだしたことに基づく発明」と規定されています。
参考:特許庁審査基準第III部 第2章 第4節 特定の表現を有する請求項等についての取り扱い
ここでいう「ある物」とは、化学物質や、組成物があてはまります。
例えば、化学物質Aがすでに知られている場合、化学物質Aについて特許をとることができません。
しかし、これまでに化学物質AはXという用途しか見出されていなかったとします。
今回発明者は、化学物質Aに新たな属性を発見し、その属性によりYという用途への使用が見出されたとします。
この場合、化学物質Aを用途Yに使用することについて特許をとることができます。
より具体的には以下の例があります。
「特定の4級アンモニウム塩を含有する船底防汚用組成物」
・特定の4級アンモニウム塩を含有すると、「船底への貝類の付着を防止できる」という「属性」を発見した。
・この属性により、「船底防汚」という「用途」への使用が見出された。
この場合、特定の4級アンモニウム塩を含有する組成物は、すでに知られていたとしても新たな用途が見出されているため、
「船底防汚」用に使用することについて特許をとることができます。
用途発明のポイント
すでに知られている物であっても、新たな用途が見出された場合はその物の用途について特許をとることができる。
化学特許の取り方は?
1.発明の確立
2.特許調査
3.特許出願書の作成
4.特許出願
5.審査
6.特許の取得
まず、発明をするために、何らかの技術的な問題を解決するための新しいアイデアが必要です。
そのアイデアが発明として認められるためには、他の技術者がすでに知っていることとは異なり、非自明であることが必要です。
次に、自分のアイデアが既に特許化されていないか、または他の人がすでに研究を行っているかどうかを調べます。
この調査は、特許庁のデータベース(IPDL)を使用することができます。
次に、特許を取得するためには、特許出願書を作成する必要があります。
特許出願書には、発明の詳細な説明、図面、クレームと呼ばれる発明の範囲などが含まれます。
次に、特許出願書を特許庁に提出します。
出願費用がかかるため、事前に予算を立てておく必要があります。
出願費用はこちらの記事で解説しています。
-
特許申請の費用を弁理士が解説
続きを見る
次に、特許庁は、特許出願書を審査し、発明が特許として認められるかどうかを決定します。
審査期間は数か月から数年にわたることがあります。
最後に、審査が通過すれば、特許が取得されます。
特許が取得された後は、維持費用を支払うことで、期限まで独占的な権利を保有することができます。
維持費用についてもこちらの記事で解説しています。
-
特許申請の費用を弁理士が解説
続きを見る
以上が、化学特許の取得方法の一般的な手順です。
特許取得に必要な条件とは?
1.新規性があること
2.進歩性があること
3.産業上の利用可能性があること
4.発明が第3者でも実施できるように記載されていること
まず、発明が世界で初めてであることが必要です。
すでに公知の技術や知識、または既に出願された特許と同じものではないことが求められます。
ただし、これだけではだめです。
発明が自明ではなく、一般的な技術水準から逸脱していることが求められます。
つまり、一般的に予想されない技術的な進歩であることが必要です。
また、発明が産業分野において利用可能であることが必要です。
発明が商業的な利益を生む可能性があることが求められます。
さらに、発明が第3者であっても実施できるように記載されていることも必要です。
以上が、特許取得に必要な一般的な条件です。
このような条件を特許請求の範囲(クレーム)と明細書に記載しておくことが重要です。
なかなか専門的であり難しいため通常は弁理士がサポートします。
特許事務所BrandAgentでも化学に強い弁理士がしっかりサポートしますのでぜひご相談ください。
特許出願に必要な書類とは?
- 願書
- 特許請求の範囲
- 特許明細書
- 図面
- 要約書
願書
特許の願書とは、特許申請人が特許庁に対して特許権の取得を希望する旨を申し出る書類です。
特許の願書は、特許庁が定めた書式に従って正確に作成する必要があります。
特許の願書には、以下のような情報が記載されます。
・申請人の情報 申請人の名前、住所、国籍などが記載されます。
・申請日 特許申請の日付が記載されます。
特許請求の範囲
特許請求の範囲とは、特許出願者が特許の保護を求める範囲を定めた書類です。
発明品や製品の独自性を示すポイントとなります。
特許請求の範囲は、特許権の範囲を定めるために非常に重要な役割を担っています。
特許明細書
特許明細書とは、発明に関する技術的な詳細情報を記載する書類です。
特許明細書には、以下のような情報が記載されます。
・発明がどのような技術的背景をもっているのか記載されます。つまり、既存の技術に対する発明品の改良点や新しい技術的アプローチが説明されます。
・発明品の作り方や使用方法が記載されます。
・必要に応じて、後述する図面を引用しながら発明品の特徴を記載します。
図面
特許の図面は、発明品の外観や構造を図示したものです。
必ずしも必須ではありませんが、構造物の特許では、必須といえる書類です。
図面によって、発明品や製品の構造や機能がより具体的に説明されます。
要約書
要約書は発明の特徴を200字程度でまとめた書類です。
以上が、特許申請に必要な書類の種類と役割になります。
申請に際しては、書類の提出期限や注意点なども確認しておくことが重要です。
特許審査の流れとは?
- 1.審査請求の提出
- 2.審査官による審査
- 3.審査結果の通知
- 4.拒絶理由が通知された場合、申請人は補正書と意見書を提出します。
特許審査には、申請書の提出から特許登録までに数年以上の時間がかかる場合があります。
特許審査の期間は、審査請求のタイミングや、特許庁の状況によって異なりますが、通常は申請してから2~4年程度とされています。
もし期間を早めたいのであれば審査請求を早めに済ませるだけでなく、早期審査の請求をすることをおすすめします。
早期審査を請求すれば通常申請から3か月~半年ほどで審査結果が通知されます。
参考:「特許出願の早期審査・早期審理について」
以上が、特許審査の流れと期間についての基本的な説明です。
特許審査には、専門的な知識が必要であるため、特許事務所や弁理士に相談することをおすすめします。
特許出願の注意点とは?
1.先行技術をしっかりと確認する事
2.特許請求の範囲は明確に!
3.発明の秘密保持
4.特許出願のコスト
まず、特許出願前に、同様の技術や発明がすでに存在していないかを確認することが重要です。
これは、特許出願が却下される原因となり、無駄な出願費用がかかることを避けるためです。
続いて、特許請求の範囲は明確に記載しましょう。
特許請求の範囲はクレームともよばれ、特許の範囲を定めるものであり、他者からの模倣を防ぐために重要な要素です。
クレームの設定は、発明の詳細な説明とともに慎重に行う必要があります。
次に、特許出願前に、発明の秘密を厳守することが重要です。
発明が公開されてから特許出願すると公知という理由で原則特許をとることができませんので注意しましょう。
最後に、特許出願には、一定の費用がかかります。
予算を立て、必要な場合は専門家に相談することが重要です。
特許事務所に依頼する場合段階的に費用を請求される場合があります。
しっかりと見積もりを依頼しましょう。
化学特許を取得するためのポイントとは?
化学特許を取るためには、以下の2つのポイントをおさえておくことが重要です。
ポイント
- 発明に進歩性があること
- 発明に再現性があること
※ 特許法では厳密には「進歩性」「再現性」という言葉はありませんが、ここではわかりやすいようにするためにこれらの言葉を使用しています。
発明の進歩性とは、世の中に知られている技術などに基づいて容易に発明をすることができないことを言います。
発明の再現性とは、発明者以外であっても、発明を実施することができることを言います。例えば、化学物質の発明の場合は、発明者以外のその分野の技術者であっても、その化学物質を作ることができることをいいます。
例えば、化学物質の発明の場合は、世の中に知られているいない新しい化学物質であれば特許をとることができます。
しかしながら、その化学物質が実際に作れるものでないと特許をとることができません。
また、組成物の発明の場合は、複数の材料を組み合わせることにより、性能が改善されたり、あるいは別の有用な性能を発見することができたりすれば特許をとることできます。
この場合は、性能が改善されることや、別の有用な性能を発見したりすることが、世の中に知られている技術から容易に導き出せないことが重要です。
また、組成物の発明の場合も、実際にその組成物が作れることが重要となります。
化学特許を活用する方法とは?
1.技術開発や商品開発の基盤として活用
2.ライセンス契約による活用
3.知的財産権の評価に活用
4.マーケティング・プロモーションに活用
5.企業間競争の武器として活用
まず、特許を取得することで、新しい技術や商品を開発するための基盤となることがあります。
また、他社の特許を活用することで、自社の技術開発や商品開発における課題を解決することができます。
次に、自社が保有する特許を他社にライセンス提供することで、収益を得ることができます。
また、他社の特許をライセンス契約により利用することで、自社の商品開発やビジネス展開を加速することができます。
次に、自社や他社が保有する特許の評価を行うことで、ビジネス上の戦略的な意思決定に役立てることができます。
特許の評価には、市場価値の分析や侵害リスクの評価などが含まれます。
次に、自社が保有する特許をマーケティングやプロモーションのツールとして活用することで、ブランドイメージの向上や、商品の差別化などを図ることができます。
最後に、化学特許は、企業間競争において有利な武器となることがあります。自社が保有する特許により、市場シェアを拡大し、競合他社との差別化を図ることができます。
以上が、化学特許を活用する方法の一般的な例です。
化学特許を侵害しないための注意点とは?
まず、自分が開発しようとしている技術が既存の特許によって保護されていないかを調べる必要があります。
特許庁の特許情報データベース(IPDL)では、既存の特許に関する情報を入手することができます。
また、特許侵害のリスクを避けるためには、自分の技術が新規性があることを確認する必要があります。
既存の特許と比較して、自分の技術が十分に異なるかどうかを慎重に検討する必要があります。
この場合、特許法や知的財産法に詳しい弁護士や特許事務所に相談することをおすすめします。
特許事務所BrandAgentでも対応可能ですのでぜひご相談いただければと思います。
化学特許のまとめ
以上のように、化学特許の取り方のコツを解説しました。
特許事務所BrandAgentでは、上にあげたコツを生かして、特許をサポートしています。
無料で相談可能ですのでぜひご相談いただければと思います。
詳しくは特許事務所BrandAgentの公式サイトを参考にしてみてください。